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第67話 再び現れた残党達

「ガルド及び五頭家連合艦隊。配置完了」

「目標強制ワープまで残り32秒」

「対象の出現箇所強制移動完了」

「五頭家スペースコロニー防衛艦隊BW隊第1から第4部隊まで出撃完了。戦闘機部隊も第1及び第2まで出撃完了」

「目標、出現確認!呼びかけに応答ありません!」

「目標、ミサイル及びビーム砲、実弾砲発射確認!?」

 惑星ガ・五防衛宇宙艦隊のオペレーター達は艦の中から自身の指揮官へ次々と新しい情報を報告している。

 その中で、不審船から攻撃された事をすぐに察知し、焦りの色を含みながら指揮官に報告をする。


「現在より不審船団は敵と認定する!こちらも攻撃を開始せよ!」

 指揮官は焦ることなく事態を把握し、適切に判断し命令を下す。

 だが、冷静沈着な彼にこの後直、焦らせる事態となってしまう。


「不審船数増大!」

「特殊能力人の波動をキャッチ!え、Aランクです!」


「なんだと!?」


 指揮官は目を見開きながら驚く。

 いくら辺境といえど、宇宙連邦と国境が隣接している場所である。

 更に宇宙連邦とは同盟を結んでいるため、こちらを襲ってきたとしても宇宙連邦が増援として出てくる可能性があるのだ。

 僅かな敵であれば威圧行動で済む話。これほど大規模な侵攻をしてくるなんて、どこの馬鹿だろうか…。


 だが、惑星ガ・五防衛宇宙艦隊司令官はそんな馬鹿なことをする奴らを知っていた。


「敵、照合完了。ヴァルカ残党軍です!」


「ヴァ、ヴァルカ残党軍…」


 主を失ってもなお、心の闇を集めるなどと訳がわからん理由で戦争を吹っかけて来るイカレ狂信者集団。

 ついにこの惑星の付近にも来てしまったのか…。

 しかし、そうだとしても目の前の敵の数には納得できなかった。

 敵の艦隊は千を超えている。


 奴らが明確に敵としているのは宇宙連邦であり地球人では無いはずだ。

 貴重な戦力をあんなに出してくるなど信じられなかった。

 こうなると考えられる可能性は一つ。地球人に恨みを持つとされるカトリーヌが関係ある可能性が高い。


「とにかく!ここを突破されるわけにはいかん!惑星司令本部へ至急報告しろ!」

 地球人所属の艦隊は初の単独大規模宇宙戦争を開始した。


----------------------------------------------------------


「<防衛宇宙艦隊から緊急連絡があった。戦況が芳しくない…>」

 と、通信で言ってくる輝明さん。

 外では戦闘機の部隊が次々と宇宙へ飛んで行っている。

「<まだ俺達へ攻撃命令は出ないんですかい?せっかく優秀な機体があるってのに無駄じゃないですか>」

 デルクロイが痺れを切らして輝明さんにそう迫った。

「デルクロイ。俺達はこの惑星の防衛部隊ではない。今は輝明さんの私兵団という形だ。輝明さんや幸輝君の側を離れるわけにはいかないだろう」

 俺がそう言うと、

「<ぐっ…ですが!>」

 デルクロイはそれでもなお何かを言おうとする。だが、

「<馬鹿者!これ以上隊長に迷惑をかけるな!隊長が今少しでも間違った事を言ったか?隊長だってこの映像を見せられて我慢しておられるのだぞ!>」

 と、グリゼアが怒鳴った。

 グリゼアが言う通り俺だって我慢している。

 可能であればすぐにでも戦場へ向かいたい。

 理由は俺に…いや、俺達が乗っているBW内から見ることができるヴァルカ残党軍のAランク能力者に遊ばれている惑星防衛隊の映像だ。


 モニターに映っている戦場には、二年前見た顔があった。


 精神汚染の元となる『闇の悪意』に感化される前の段階で、平気で人を殺していたあの女…。


 『小岸おぎし 愛理あいり』がモニターに映っていた。


 愛理は次々と味方のBWや戦闘機を破壊していく。その姿は2年前と全く変わっていない。どうやら今回カトリーヌはいないらしい。


「<よし!許可が下りた!全く、もうちょっと融通してくれたっていいのに。僕の部隊を傷つけちゃいけない宝物か何かだと勘違いしているのかなぁ、もう!>」

 と、怒りを含ませながら輝明さんが再び話かけてきた。

「<許可?まさか!>」

 レイーヌの驚きの声が聞こえた。

「<うん、バッチリ。スレード隊。いつでも戦場に向かっていいよ>」

「<<<<おぉぉ~>>>>」

 全員からそう声が漏れる。

 なんだ?行ってはいけない理由は立場的な話とプラス俺達がお客様扱いだったからか?

「<まぁ、転生者なんて貴重なサンプル失うわけにもいかないでしょうからね…>」

 おっと、グリゼア副隊長。自虐ネタはよしなさい。


「おっほん!では、スレード隊!出撃!」

「「「「「「「「<了解!>」」」」」」」」

 俺達は宇宙へと飛び立ち戦線へと参加をした。




 単独で大気圏からの突破ができる優秀な機体『雷牙』。

 まぁ、旧型機でも楽々突破できるし、戦闘機すらも単独で突破で来てしまう普通の地球人にとってみれば未来兵器達である。

 あれ?普通の地球人ってなんだっけ?


 スレード隊が宇宙空間へ到達した時には既に大規模に光り輝く戦闘の爆発や光線がスペースコロニー群エリアに広がっていた。


 それよりも何だか後ろから艦隊が追従してくる。あれ?惑星にまだこれだけの規模の艦隊が残っていたっけ?

 大小合わせて総数100隻程の艦隊である。

 艦隊は俺達の下から追いかけてきていた。


「<な、なんっスかこれは!>」

 トリットも気が付き驚きの声を上げる。

「<まだこれほどの艦隊が惑星内に残っていたのでしょうか?>」

 と、レイーヌも先程まで気配も見せなかった艦隊の存在を訝しむ。

「<輝明様の自己空間に収納されていた艦隊のようですね。相変わらずすごい量を収納されていますね…>」

 と、リズリーが教えてくれた。

「<この数を!?マジかよ…>」

 トリットはその言葉を聞きさらに驚愕する。

 銃器や戦闘車両を大量に収納できることは知っていたけど、艦隊を収納できるなんて聞いていないぞ…。


----------------------------------------------------------

 惑星ガ・五。五頭家管理地区防衛隊指令本部。指令室。

「宇宙連邦軍からの応援は?」

 輝明は指令基地の最高責任者である赤林大将へ質問をする。

「先程、あと1時間程で該当宙域へ到着するようです」

 赤林がそう言うと、輝明は苦い表情を見せる。

「私が出撃させた艦隊をもってしても、宇宙連邦が到着した頃には大部分の部隊に被害がありそうですね…」

 悔しそうにそう言った輝明。

「でしょうな…」

 そう言った赤林もそのことは痛いほど理解している。

 敵の艦隊は、数は多いが旧式。しかし、Aランクの特殊能力者が居る。攻撃能力は様々な妨害をしている為大したことはないが、問題は回復能力と持久力である。こればかりは宇宙連邦の技術でもどうしようもない。おそらく、じわじわと味方の艦隊は減らされ、宇宙連邦軍の援軍が到着するこ頃には3割の部隊がやられているだろう。

「いくらBWや戦闘機等の機体は宇宙連邦軍よりも性能が良くてもでも、軍艦は旧式です。数で圧倒されてしまいますね…」

 赤林も悔しそうにそう言った。


 だが、ここでこの場にふさわしくない人物が登場することによって事態が好転することになる。

「お父さん。お父さん」

「「!?」」

 突然指令室に子供の声が響く。赤林と輝明は驚き声がした方へと振り向く。

「お父さん。僕が持っている艦隊を出そうか?敵の強い奴がいる場所に」

 そこに居たのは輝明の息子、幸輝であった。幸輝は輝明のすぐ後ろに立っており、にんまりと笑みを浮かべていた。更にその後ろに、

「幸輝…邪魔になるぞ」

 と、女の子…魅香が幸輝の服を掴み外へ連れて行こうとしている。

 赤林はその子供達の存在に戸惑い、指令室に居た士官に目を配らせる。いくら自分の上司と言える輝明さんの息子といえ、ここに入るべきではないのでは?と考えたのだ。

 それでも有無を言わさず外につまみ出すわけにはいかないので、赤林は輝明に声を掛けようとしたが、

「そうか。その手があるよね。よく言ってくれたよ幸輝!」

 と、輝明はニヤリと笑みを浮かべ、輝明の頭を撫でながら言った。

 赤林は輝明のその顔を横目で見てゾワリと背筋が凍った。

 輝明はまるで悪魔の笑顔のように邪悪な笑みを浮かべて、息子の幸輝は冷ややかな笑みを浮かべていた。


----------------------------------------------------------



 追従してくる輝明さんが出してくれた艦隊は全て無人で動いているらしく、時折艦隊から出撃する機体達は当然無人である。

 宇宙連邦の艦隊を見てからだと見劣りする数であるが、惑星ガ・五防衛艦隊から見れば大規模な援軍だ。


 どれも宇宙連邦軍では旧式となり、処分ついでに貰ってきた艦隊である。全て無人である為、人が乗っている時よりも動きは悪いが、無いよりはマシなはずだ。


 戦場に着くと、俺は声を大にして命令をした。


「『スレード隊』攻撃を開始せよ!」

「「「「「「「「<了解!>」」」」」」」」



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