92話:コアは語りたい
その日の夜。コアルームでの緊急の職員会議が行われることになった。議題は当然、エピンたちによるミミック討伐成功の話である。
「と、いう感じでミミックをエピンたちが倒したわけだが……いやー、青春真っ盛りだったなあ」
「ふーむ。リリカくんたちが初見では倒せなかったミミックを……相性の問題こそあれど快挙ですなあ」
エダムが心の底から感心して頷いているが、実際リリカとキアラが初見でミミックを倒せなかったのは相性の問題であり、魔法拳の攻撃技について理解した今のリリカであれば再度会ったとしても倒せるのは確実だ。そこはどちらが優秀という問題ではない……というか、優秀さでいえばリリカとキアラのコンビは他の面々より上だろう。ただそれでもエピンたちが最初にミミックを打倒した。その事実がコアとしては「青春」なのである。
「……しかし、だ。今の話を聞く限り、イヴァンはそんなに活躍できてねえな」
「ほっほっほ。自分の生徒の評価が辛いのでは? 儂の見る限り、イヴァン君はエピン君の杖を作るという点で強いアシストをしている。これは彼が自分のやるべきことをしっかりやった結果と言えるのでは?」
「周囲がどう判断するかは別だろうよ、ダリアン校長。いつの世だって、聖剣を鍛えた鍛冶屋が賞賛されるのは遥か未来だ。折角装備を更新したなら、前衛として槍で突いてやるべきだったんだ」
コガンダとダリアン校長の評価はどちらも正しいだろう。前衛として場にいる以上手を出すべきだったというのもその通りだし、エピンの杖を作った時点で最高のアシストであるのも事実だ。どちらもイヴァンの今後を見据え考えた上の評価であるので、コアとしても頷くだけだ。
「ナルメクとケイトはどうだ? カリックスはすげえ頑張っただろ」
「高く評価する」
「もうひと声」
「教えたものをしっかりと活用した。何も問題はない」
「おう、それな。ケイトは?」
「ん~……ふふふ、カリックス君は収納魔法を見事死霊魔法と連動させてましたよね~。生活魔法って他の魔法と連動できるし、生活に使える程度に魔力消費も低い魔法なんですけど~、あの子は本能的にそれを理解できてますしね~。最初にこっちに来てくれてたら愛弟子と呼べたんですが~」
「それな。正直、生活魔法がどれだけ凄いかアピール不足があるのは重々承知なんだが……」
「だが、なんですか~?」
「……生活魔法を極めた子が無双して、そんなの知らなかった、すげーって称賛される青春が……見たい!」
こいつは本当にどうしようもねえな、という空気がその場を包むが……まあ、そういうのを体現したのがハリエットであって、今後生徒たちは生活魔法の本当の凄さを嫌でも思い知っていくだろう。
今コアが言った通りに「生活魔法」に分類された魔法は基本的に魔力消費が物凄く低い。上手く使えば戦闘魔法にも引けを取らない活躍だって可能なのだが……まあ、それはさておこう。
「ま、生活魔法もそうだけど調理魔法もだろ。な、カヤ先生」
「コアがいきなり『先輩』を創ったときは何事かと思ったけど……まあ、ね」
そう、調理魔法使いの先輩であるヒートンは調理魔法を学ぶ生徒たちに「調理魔法でも活躍の方法は色々ある」ということを教える為の「映える動き」をする役目がある。
カヤはその性格上質実剛健なので、どうしても地味な印象がある。それはしっかりとした大樹ではあるのだが、今の時代映えることも重要だ。そこは教師ではなく先輩のヒートンが適任というわけで、今調理魔法使い志望の生徒の中では、というかそれ以外でもヒートンは大人気だ。
神出鬼没というか何処にいるか分からないキリアンより食堂のアイドルたるヒートンが日常の象徴のような存在に見えるのもあるだろう。「カッコいい先輩がいる」という噂で今日は食堂が大混雑だったのだから。
「学園はまさに青春まっさかり! 生徒の未来も明るいとなれば……それをもっと明るくするのが俺達の定めだよな。どうする? ダンジョンにもっと短期的な目標とか追加してみる? 賞金首とかさー」
「どうせならば中期的な目標を作らせるのが良いのでは? 部活動とかもよろしいと思いますが」
「部活動か……そうだな。今こそ、そういうのは必要だよな!」
部活動。青春そのものなそれが今までなかったのは当然のように理由がある。
それは魔法というものに対する理解がまずは必要であり、部活よりも教育が先だったこと。
そして、もう一つは……『先輩』たちの用意である。生徒たちの傾向を見てから必要な『先輩』を用意する必要があったため、今学園内に居ない『先輩』はなんらかの用事で外に居ることになっている。
「まあ、調理部と魔法道具研究部は必要として……キリアンとクリスの扱いだよな。いっそダンジョン探索部とかにするか?」
「そういうのは新入生に作らせた方がいいんじゃないか? 俺は無所属でいい」
「私も無所属がよろしいのではないかと。ちょっと有名になり過ぎましたから」
「あー、まあ。それはなー」




