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魔法学園ヤマダ~転生するなら魔法学園とかやりたいって言っただけなのに~  作者: 天野ハザマ
第三章

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108話:保健室の先生は頼れる大人じゃなきゃね

「保健室……来るの、初めてです」

「だろうな。知っているだろうが説明しておく……ダンジョンでの死は本当の死ではなく、此処に転送されてくるようになっている。だがペナルティは存在している」


 装備品以外のアイテムは全部ロストし、持っているイエンは半額になる。

 キアラもリリカも失くしたくないものは部屋に置いてある……たとえばキアラの場合はアイスフェニックスの風切羽などは部屋に大切に保管している。勿論死ぬような気は微塵もなかったが、今回はそれが役に立った形だろう。


「ふむ。その表情からすると本当に大事なものは持ち込んでいなかったんだな」

「えっと、押忍、部屋に保管してます」

「それでいい。優秀だな」

「私じゃなくて、優秀なのはキアラさんです」

「ああ、さっきから寝たふりをしている子か」


 サリバンの背中の後ろから「うっ」という声が聞こえてくるが……やがて観念したようにキアラが起き上がる。ちょっとふてくされたような、恥ずかしがっているような表情に、しかしサリバンは振り向かないままだ。


「此処に来る生徒たちは幾つかのパターンに分かれる。自分への怒り、死への恐れ、悲しみ……叫び出す子もいる。そういった生徒のケアが俺の役目なわけだが……君たちは大分優秀なようだ。ああ、俺がこんな一日に何度も優秀だなんてことを言うのは珍しいんだぞ?」

「……慰めてくださってるのですわよね」

「無責任なことは言わないさ。ダメな生徒にもっと頑張れと背中を押すのも役目だ。必要であれば抱きしめもするがね?」


 振り返ってキアラに悪戯っぽく笑うサリバンだが、今のキアラには愛想笑いしかできない。

 だって今回は、自分のミスだと思っているから。


「三階層は予想以上に難関でしたわ。不足だったのは私の対応力……他にも色々ありますが、原因は明白。リリカさんと互いを支え合わないといけませんのに……」

「三階層……グレイアームか。まあ、オークとは全く違うから難しいだろうな。奴等が得意とするのは三次元戦闘だ。力任せのオークに慣れてるとなあ」


 あまりにもアッサリと言うサリバンに、リリカもキアラも目を丸くしてしまう。まさか保健室の先生からそんな言葉が出てくるとは思わなかったのだ。サリバンもそれを察したのか、心外だとでも言うかのように肩をすくめてみせた。


「おいおい、俺は保健室の先生だぞ? モンスターの特徴くらい知ってるに決まってるだろう」

「で、では!」

「おっと、そこまでだ。何でも教わるのは良くない……知識を高めるなら、本も読まないとな」

「本……」

「まさか図書館のことですの?」

「そうだぞ? 優秀な教師が揃ってるから目がいかないかもしれないが、先人の知識が詰まった場所だ。行く価値はあるぞ?」

(まあ、先人っていうかコアが集めた知識の本なんだが……)


 チラリと視線を送れば、机の上で白猫コアが青春を吸う目で見ている……本当にどうしようもない猫である。有能で行動派で良識的だから許されてるところがある。

 ちなみに今の顔は「先人か……先猫っていうか今猫っていうか……」って顔である。最近、自認が猫になりつつある。


「本……そうですわね。モンスターの知識をもっと深めて……それに……」


 アイスフェニックスの風切羽。アレをそろそろ使うべき時なのかもしれない。キアラはそう思うし、リリカとしても自分をもっと高めていればと思うのだ。ヘンリエッタたちがアッサリ三階層を制圧していたように、リリカもそうできなければならないのだ。


「キアラさん! 私も頑張りますからね!」

「ええ! まずは三日! お互いにやるべきことをしっかりやりますわよ!」

「押忍!」


 ベッドから立ち上がったリリカとキアラはグッと握手を交わして。邪魔しないようにそっと脇に退いていたサリバンにリリカが頭を深々と下げる。


「サリバン先生もありがとうございました!」

「お礼を申し上げますわ。出来るだけ世話にならないようにもするつもりです」

「気にするな。これが俺の仕事だ。むしろ手間のかからない子たちで助かったよ」


 そんなジョーク混じりのサリバンの言葉にリリカもキアラも笑って。そのまま仲良く保健室の扉を開けて出ていくのをサリバンは見送って……手を振っているアウタールに溜息交じりの視線を向ける。


「お前もなあ……あのくらい情熱があるといいんだが……」

「医療魔法への情熱はありますよ? これは広く人々を救う素晴らしい魔法です。1つでも多く会得したいと強く願っています」

「まあ、それもまた青春ってやつか……」

「この学園の先生方はたまに青春とかって仰いますよね?」

「まあ、うん。気にするな」


 アウタールは首を傾げていたが、全部見ていた白猫コアは思う。


(うんうん。アウタールのそれも青春だよなあ。医療ドラマって感じだぜ……いいねえ、実にいい)


 青春は人の数だけ存在する。そして白猫コアは、その全てを愛しているのだ。


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