1話:俺、魔法学園とかやりたいです!(痛恨のミス)
夏なので新連載です。
「まずはおつかれさまでした。貴方は世界での役目を終え、此処に辿り着きました。全体的な評価で言うのであれば、可もなく不可もなく。ふふ、人間らしい生き方だったのではないかと」
真っ白な空間と、そこにいるうっすらと光を纏った美し過ぎる女性。
この真っ白な空間の中でも存在感を放つ翼は「彼」、あるいは「彼女」に1つの存在を想起させた。
彼、あるいは彼女。そう呼ぶしかないのは、それが真っ白な光の球のような形をしているからだ。
強烈な自己があるわけではなく、誰かを積極的に傷つけようと思っていたわけでもない……概ね善良で無害な魂の形だ。
「あの……神様、ですよね? 俺、死んだ感じですか? で、ここって天国とか?」
「私を誰と、此処を何と呼ぶかはさておいて。貴方の場合は別の提案があって此処に呼び寄せました」
「別の……? あ、もしかして転生とかですか!」
「ええ、とはいえ魂は巡るもの。本来であれば何もせずとも貴方の魂は何処かに転生していたでしょう。ですが貴方には行ってほしい世界があります」
そう言うと推定女神の目の前に小さな惑星の模型のようなものが現れる。
海と大地、世界を巡る雲……地球と似ていながら明らかに大陸の構成などが異なる、そんな何かだ。
「アリエウス……貴方たち風に言うのであれば剣と魔法の世界。地球とは異なる力をもって繫栄した、そんな世界です。貴方には此処に転生してほしいのです。勿論、嫌であれば強制はしませんが」
「やります!」
元気一杯の返事は少々では済まないオタク気質のせいかどうか。とにかく彼には一切の迷いというものがなくて。推定女神はそんな彼に嬉しそうに微笑むのだ。
「剣と魔法の世界だなんて……! 俺、ほら、あるじゃないですか魔法学校とか魔法学園とか! あ、どっちも同じかハハハ! そういうのやってみたかったんです!」
「魔法学園を?」
「はい! 青春と成長と……アドベンチャー溢れてるじゃないですか! そういうのいいなあって、ずっと思ってたんです!」
魔法学園をやりたい。その言葉を推定女神は素直な感心と共に受け止めた。
なるほど、それは推定女神の悩みを解決する一手になるかもしれない希望でもあった。
もっと無難な形にすることを考えていたが……本人の希望がそうなのであれば、推定女神としても……いや、女神としても断る理由はない。
「いいでしょう。貴方のその願い、叶えましょう」
「え、やった! いいんですか⁉」
「はい。貴方の希望は私の願いとも合致します。この世界アリエウスは今、魔法技術の進化が独占化され、なおかつ停滞しています……何故だか分かりますか?」
「うーん……上に逆らえない権威主義と、利権の問題とか……?」
「その通りです。魔法技術を魔塔という形で秘匿し、権力と紐づける……個々の魔法そのものが権威となっている現状では、これ以上の進歩は生まれません」
「そこに俺を放り込んで刺激しようと……なんだかチートな感じがしますね!」
「チート……ふふ、そうかもしれませんね。貴方が魔法学園という形を提案してくれたから、私としても個人に与えるには少しばかり大きすぎる力を与えることができます」
「そんな褒められると照れますね! いや俺もね、大きな力には大きな責任が伴うっていうんですか? そういうのは常に心に秘めていきたいなって!」
素晴らしいことだ。何かからの受け売りであろうと、そうしようという心自体が頼もしい。
だからこそ、女神は1つの贈り物をしようと決めていた。
「通常、転生するにあたって前の名前などというものは消えてなくなるものです。たとえば貴方も転生にあたって、新しい名前に新しい家族……魂の流れに乗せて、そうした道を辿るはずでした」
「と、いいますと……」
「貴方の名前を一部、アリエウスに刻むとしましょう。善なる貴方が世界に刻む足跡が永遠に埋もれず知られゆくことを願って。これは私から貴方に贈る報酬でもあります」
嬉しい。彼はそう思った。自分の名前を世界に刻む。それは誰もが1度は思ったことだろう。
女神によってそれが為されるならば、それはまさに約束された栄光だ……!
「ありがとうございます女神様! 俺、全力でやってみせます!」
「期待しています。では……そろそろ旅立ちの時です。世界に魔法を広げる貴方の名前は……」
魔法学園ヤマダ!
「えっ?」
何それ、と言う暇もなく。彼の意識は暗転していった。
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