夢の檻
翌日、エゼが登校することはなかった。
サビーナ先生は淡々と、サトだけでなくエゼも体調不良による欠席とだけ告げた。
今度はエゼが犠牲になった。
「今度はエゼが……もう誰もドグの好きな通りにはさせない!」
ペテルは胸の奥に怒りを覚えた。
朝の会が終わり、ペテルはエマとジェラに話しかけた。
「なぁ、放課後にエゼの寮に行かないか?」
エマはうなづいた。
「サトもエゼも、普通じゃないと思う。昨日ソフィアと一緒にサトの家に行ったけど、
普通に寝ているようにしか見えなかったわ。」
ジェラは腕を組み「殿下、これはただの体調不良ではないですな……」と言った。
ペテルは、夢を食うオーク『ドグ』の話を二人に打ち明けた。
「つまり、何とかしてドグを見つけ出して、僕の母上と父上がしたように追い払う必要があるんだ。」
エマは嘆息をしながら、「お城の高等魔法官の人たちが解決方法を見つけるまで、できることがないだなんて……」
と落ち込む。
ジェラはペテルに「殿下、まずはエゼのムアグ留学生寮に行きましょう。なにか僕たちにも手がかりが見つかるかもしれない。」と提案した。
そこで一行は学校前とグランドバレー城前にあるラスク大通りを抜け、ラピト通りを歩いた。
見えてきたのはムアグ共和国の領事館と、その隣の敷地にあるムアグ留学生寮だ。
ムアグ留学生寮のドアをノックすると、寮母・ミリャが現れた。
ペテルたちは何度かエゼの部屋に遊びに来たことがあったので、ミリャとも顔見知りであった。
「これはこれは、王子様とジェラくん。今日は女の子も来たのね。初めまして。」
エマは慌てて「は、はじめまして」とあいさつした。
ペテルは3人を代表してミリャに事情を説明した。
「僕たち、エゼの様子を見に来たんです。先生は体調不良だっていうけど、絶対違うと思って……」
ミリャはしばらく考えたのち、ペテルたちにエゼの状態を話した。
「まるで目が覚めないんだよ。ときどき、うーん、うーん、と悪夢を見ているかのようにうなるのよ。」
ペテルはミリャに「エゼのことが心配なんです。寮に入れていただけませんか?」と頼み込むと、あっさりと了承してくれた。
エゼの部屋は2階の一番奥の部屋。
ムアグの貝殻で作られた飾りがつるされており、潮風がふわっと感じられるような気分になる。
ペテルは部屋のドアをノックし、エゼの部屋に入る。
エゼは何事もないように、寝相を悪くして寝ていた。
ミリャはエゼに布団をかけなおしてやり、ペテルたちに話しかけた。
「ずっとこんな感じよ。いつになったら目が覚めるんだか」
だが、その時、エゼの口から言葉が発せられた。
「高い……波が来れば……乗れない……なぜ……」
ペテルとジェラは思わず、「エゼ!エゼ!」とエゼの体を揺らした。
しかしエゼがその日、目覚めることはなかった。
3人は、ムアグ学生寮の中庭のベンチに座り込んでいた。
ペテルがまず口を開いた。
「必ず僕たちの手で、サト、ヴィアン、エゼを助けよう。高等魔法官の人たちが何か手を考えてくれているはずだ。」
うなずくジェラとエマ。
3人は、グランドバレー城に向かうことにした。
子どもたちを救う手段を探すために。




