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小心者のオーク

――サト

――ヴィアン


サトは休む前日まで元気だったし、ヴィアンについてもB組の子たちに聞いたところ、前日まで特に変わった様子はなかったという。

ペテルはグランドバレー城に帰宅すると、母・フレイヤの私室に忍び込んだ。


父は小学生のころから、妖怪カウカとの最終決戦前日まで毎日日記をつけていたらしい。

母から昔、両親が『夢を食べる』魔獣の話を中学生の時に二人で追い払ったという話を聞いたことがあった。

目が覚めないことと夢を食べる魔獣の関係には確信が持てなかったが、何かある気がした。


「う~ん、父上と母上が中学生だったころはグルージャ歴何年だろう?しかも何年生のころかもわからないな……」

手当たり次第に日記帳を棚から出しては放り投げていくペテル。


「な~にをしているのかしら?ペテル?」

背後から優しいけれど、明らかに怒っている母の声がした。

「亡くなったあなたの父上の日記帳よ。読むのは構わないけど、もっと丁寧に扱ってちょうだい。」


「う……実は……今小学校で不思議なことが起きているんだ。」

ペテルは今小学校で起きている子どもの間の噂を話した。


「寝たまま目を覚まさない……ね。ドグがまた動き出したのね。」

フレイヤはため息をついた。

「ドグ?」

「やけに小心者のオークが昔いたのよ。名前はドグ。確かグランドバレーから追い出したのは中学1年のころね」

フレイヤはペテルが放り投げた日記帳を片付けつつ、1236年の日記帳を取り出した。


「『夢見の杖』?」

ペテルは腕を組みながらフレイヤに聞いた。


「そう。小心者のドグは、決して人に直接的な暴力は加えないわ。

その代わりに夢見の杖を使って子どもの夢を『食べる』ことで自分の魔力を高めるの。

オークなのに魔力を高めて何をしたかったのかは、結局わからなかったわ」

「それなら、早くドグを捕まえないと、次に犠牲者が出ちゃうよ!」

「そうね。あの頃は堂々と姿を現して夢を食べていたけれど、今はこそこそ隠れながら同じことをしているみたいね。高等魔法官に調査を指示するわ。」

「母上…僕、ドグと戦うよ!かつて母上と父上が戦った時のように!」ペテルは小さな拳を握り、力強く思いを告げる。

フレイヤはその思いを受け止め、

「もう9時を過ぎたわ。そろそろ寝る用意をしなさい。グランドバレー城は数多の魔法防御結界が張られているわ。少なくともあなたは襲われない。」

「…はい。おやすみなさい、母上。」


ペテルは、誰も襲われることが無いよう祈りながらベッドに入った。

しかしその祈りは、叶わなかった。

次の犠牲者はペテルの親友であった。

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