淡い恋の夢
サトが目覚めないままグランドバレー王国は、夜を迎えた。
淡い月光が王都をほのかに照らす。
王立学院小学校4年B組に通う少女ヴィアンは淡い夢の中にいた。
花が美しく咲き誇る庭園で、ヴィアンはひとりの少年と並んでベンチに座っていた。
密かに想いを寄せるクラスメート、リアム。
「ねぇ、リアムくん。私と、手をつないでくれない?」
恥ずかしそうに、けれどリアムの顔をまっすぐ見て、ヴィアンはお願いをした。
リアムは微笑んで、やさしくヴィアンの手を握った。
顔が真っ赤になって、体がぽかぽかしてくる。
しかしその時、目の前に山賊のような服を着た小柄なオークが現れた。
ズングリした体に青白く光る杖を持っている。
「甘酸っぱい初恋、えぇのぉ、ええのぉ。ワシにもそんな時期あったわ。その夢、食わしてもらうけぇの。」
すると、リアムの顔は暗く染まり、庭園の華やかな花は枯れ始めた。
「いや、私の夢を食べないで!」
次の日、ヴィアンは寝たまま覚めることがなかった。
小学校では、同じ症状で欠席する児童がもう1人増えた。
臨時の職員会議では先生たちは何とかならないか頭を悩ませたが、医師にも魔術師にも原因が分からないため対策の施しようがない。
だが1人、違和感を覚える子どもがいた。
ペテルである。
子どもの間でも噂話になっていた。
『クラスメートのサトと隣のクラスのヴィアンが寝たまま目を覚まさないってさ。』
その噂話を聞いたペテルは父が遺した日記で似た記述があったことを思い出した。
―この世界には、人の夢を食べることで自分の魔力を増やす魔道具・夢見の杖があり、夢を食われた者は夢に閉じ込められ、目を覚まさなくなる―




