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11 薬草採集①




 澄み切った青空の下、洗濯をしていたアネッサとアリアンナ。空間魔法で汚れを消去できるアリアンナと風魔法で早く洗濯ものを乾かすことができるアネッサ。この二人にかかれば、5人分の洗濯なんて一瞬で片付く。


「アリー。今日もありがとう。お母さん助かっちゃった」

「いいよ~。その代わり今度、私をダンジョンに連れていってよ」


 マリとルイが来月ダンジョンに行くと聞き、興味が沸いたアリアンナ。もしかしたら、前世を思い出させるような便利グッズがあるかもしれない。そう思うと、転生して以来一番といっても過言ではないくらい、心が踊った。


「まぁ。アリーにはまだ早いわ。せめて洗礼の儀を受けた後じゃないとね」

「むぅ」


 が、アネッサは取り合わない。

 さもありなん。ダンジョンと切っても切り離せない存在、魔物。魔物がいる限り、まだ幼いアリアンナを連れていくことはできない。


 じゃあマリとルイは良いのかと言われると、マリは水魔法が、ルイは剣術があるため、少なくとも自衛はできるというのがアネッサの言い分だ。


 それと、魔物の強さと出現数というのはダンジョンによって異なり、今回2人を連れていくダンジョンは、もっとも危険が少ない薬草ダンジョンと決めていた。

 まぁ危険が少ないというのは、それすなわち旨味も少ないということであり、レオルやアネッサは既に卒業したダンジョンなのだが、双子にとってはそれくらいがちょうどいい。



「すねたって、駄目なものは駄目なんだからね」

「はぁぁい」


 前世の記憶がある分、年齢の割りに大人びているアリアンナ。我が子を危険にさらしたくないというアネッサの気持ちも理解できるため、ここはおとなしく引き下がった。




 洗濯を終え、家の中に戻ろうとする2人。その前をダッシュで駆け抜ける者がいた。ルイだ。


「お~い、ルイ~」

「いま行く~。あ、母さん。今からダンと遊んでくるよ」

「はいはい。ごはんまでには帰ってくるのよ」


 慣れた様子でルイに許可を出すアネッサ。友達のダン君が迎えにきて急いで準備しているルイに手を振ると、家の中に戻っていった。


 だがアリアンナは、なんとなくの違和感を覚えて、走って家の外に出るルイの背中を見つめた。


「なんか、普段と違う気がする。背が伸びたとか?」

 小首を傾げるアリアンナ。その疑問の答えは、いつの間にか隣にきていたマリが教えてくれた。


「ルイのやつ、楽しそうだね。装備着てるし、ダン君と訓練でもするのかな?」

「それだ!ルイ、装備全部身に着けてた!」

「そりゃあ着るよ。買ってもらったばかりなんだし」


 マリが言う通り、ただ新しい装備が嬉しいだけかもしれないが、何か目的があって着ている可能性もある。


「追いかけようよ」

 アリアンナは走り出した。


「え?ちょっとアリー?一人じゃ危ないよ。私も行くから待って~」

 突然走り出したアリアンナに驚き、慌てて後を追うマリ。


 そんなマリに申し訳なく思いつつもアリアンナは小さな手足を懸命に動かした。ルイを追いかけた方がいい。何故か、そんな気がしたのだ。





◆◇◆◇◆





「はぁはぁはぁはぁ」


 全速力で走り出したアリアンナだったが、ルイの元にたどり着く前に、体力の限界がきてしまった。

 肩で息をしながら、よろよろと歩く。


「もうアリーったら、無理しちゃだめだよ」


 そう言うマリの息は全く上がっていない。アリアンナの子守でついてきてくれただろうに、先に息切れしてしまって面目ないと思うアリアンナ。


「ごめんね。マリ」


 アリアンナのペースに併せて、ゆっくりと歩く二人。そんな二人が足を止めたのは、隣町へと続く街道に入ってすぐのところだった。

 


 目的のルイ達を見つけたのだ。

 ルイ達を追いかけてきたアリアンナだったが、ルイ達はアリアンナ達に向かって歩いているところだった。


 どうやら、もう村に帰るところだったようだ。



「あれ?マリとアリー?こんなところでどうしたんだ」 


 不思議そうに尋ねるルイは、アリアンナの身長より大きな一輪の花を抱えていた。お隣に居る男の子、恐らくダン君も、同じ花を抱えている。一体この花は何なのだろう?


「あぁ二人は、薬草を摘みにきていたんだね」


 何も知らないアリアンナと異なり、マリは合点がいった様子。


「薬草?これが?」


 アリアンナが想像する薬草は、前世で見たアニメや漫画に出てきた薬草だ。どれもこれも、片手程度の大きさで、こんな1メートルくらいありそうな薬草なんて、見たことがない。


「アリアンナちゃんは薬草見るの初めてなんだね。そうだよ、これが薬草、フラウアだよ。ポーションの材料になるらしくて、冒険者ギルドや錬金術店で買い取ってもらえるんだ」


「聞いて驚くなよ、アリー。この薬草一本が、銅貨1枚で売れるんだぜ」


 銅貨1枚。日本円で千円くらいだ。子どものおこづかいとしては充分だろう。

 さっきの直感は、このお小遣い稼ぎのチャンスを知らせていたのだろうか?


「いいなぁ。ねぇ、私も薬草摘んでみたい!」

「う~ん。そうだね。でもこの薬草、アリアンナちゃんより大きいよ。家まで持って帰れる?」


「大丈夫。私、収納上手だから」

「ん?」


 アリアンナは、ルイから薬草を借りると、空間魔法で収納した。




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