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僕は切望する  作者: 沖ノ灯
2/27

始まり2

「あ、台風ほどじゃないか。」

ジンが、もどかしそうに回っていたが

「主殿、先に参る。」

目標位置に向かって飛んでいく。

「ジン、頼む。」

ここからなら、ジンは1-2秒で魔法を発動した正体を確認できる。

僕も少し大きなカラスに擬態して、ジンの向かった先に滑空する。

「タシーム、タブレット持ってきて!」

シルフィアも、タシームの中に潜り込んでいた。


もう到着したのか、ジンの焦った声が聞こえた。

「おそらく少女が魔法使い、襲われております主殿。

介入しますか?」

「もう着く!」


この辺りは大規模な開発が予定されていたが、結局何年も宙づりで、廃ビルが集まっている場所だった。

昼間は格安で賃貸されるために、ちょっと怪しいオフィスが何軒か入っている。

だから夜になると、ほとんど人けが無い。


そんな場所の裏路地は、ゴミや不法投棄に都合がいい。

足音をさせないように降り立つと、二人が見えた。


120キロはありそうな巨漢のサラリーマン風の男が、壁でビール瓶の底を砕いた。

ゴミの散らばった一番奥に、僕と年は変わらない女の子が倒れこんだ体制から、四つん這いに、そして顔だけ振りかえって恐怖におびえた顔で男を見た。

「このアマー!」

ビール瓶が、情け容赦なく振り下ろされる瞬間。

僕は唇が切れそうなくらいの声で叫んだ。

「フリーズ!!」

いつも、すごく冷静なんだけどね。

追いついたタシームとシルフィアが背後に降り立った。

「あ、ちょっとフラッとしてる。」

シルフィアが楽しそうにつぶやいた。



巨漢の男が地面から5cmくらいの位置で、表面だけ凍って止まってる。

女の子は男が叫んで、振りかざした時に観念したのか、目を閉じて震えていた。

一応、紳士の心得は学んだので、女性に対しての気遣いはあるんだけど、つい四つん這いの、お尻に目が

「パンツ履いてないの?」

女の子が目を開けて、僕を見た。

タシームが、タブレットを僕に渡すと、細かい霧のようになって、女の子を助け起こした。

普通、第一声に、ありがとうくらい言うよね?

「アンタ、誰よ?!」

僕は初めて出会った少女に怒鳴られた。


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