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異世界×AI〜俺だけレベルが上がらないのに、補助AIの「最適行動」でいずれ世界最強に!?〜  作者: qp46


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第36話 思考同期率

戦闘のあと、少し静かな回です。

今回はその余波と、シンの内側に起きている変化を描いています。


派手さはないですが、今後に繋がる大事な部分になっています。

男の気配が完全に消えてからも、しばらくのあいだ誰も動かなかった。焦げた石畳の匂いと、まだ残る熱、それに荒い呼吸だけが、その場に戦いの余韻を引き止めている。


やがて、グリスが息を吐いた。


「……行った、よな」


「気配はない。追跡も不可だ」


ダンが盾を下ろしながら短く答える。その言葉で、張り詰めていた空気がようやく緩んだ。マリーも小さく肩の力を抜く。


「ほんと、なんだったの……あれ。でも、さっきの連携、ちゃんと通ってたよね。あれなら、次は――」


言いかけて、止まる。


シンが、その場で動かずに立っていた。


「シン」


レナの声。


(……来る)


胸の奥で、押し込めていた違和感が、ゆっくりと浮かび上がってくる。視界の輪郭がわずかに歪み、地面との距離感がずれる。


(サブスクの反動……)


『状態異常を検知。演算補助終了に伴う感覚補正の消失』


(……それだけか?)


違和感は、体よりも思考の方にあった。


さっきの戦闘が、細部まで整理されている。どの判断が最適だったか、どこに無駄があったか、どう動けば一番効率が良いか――迷う余地がない。


(速いな)


そう思って、すぐに気づく。


(違う)


速いんじゃない。


迷ってないだけだ。


『補足:思考同期率上昇』


(……は?)


『中級サブスクリプション使用による影響と推定』


言葉の意味が、ゆっくりと落ちてくる。


(同期……つまり)


(俺の思考が――)


『当個体との連携精度向上』


(……寄ってるのか)


chaPPYの側に。


「シン」


もう一度、レナの声がかかる。


「顔色、悪い。さっきからずっと黙ってる」


「大丈夫だ。問題ない」


ほとんど反射で答えていた。


その瞬間、レナの表情がわずかに変わる。


「……ほんとに?」


間を置かずに続ける。


「今のそれ、シンの言葉じゃない」


(……)


言い返せない。


レナは少しだけ息を吐いて、続けた。


「でも、さっきのシンはちょっと怖さがあった」


視線は逸らさない。


「すごく冷静で、すごく正確。だけど――冷徹に感じた」


一拍。


「それ、あんまり好きじゃない」


胸の奥が、わずかに揺れる。


「強いのはいい。でも、それで変わるなら違う」


一歩、距離を詰める。


「シンはシンでいい」


短く、言い切る。


(……ああ)


言葉が、静かに落ちる。


さっきの自分は、間違っていなかった。無駄もなく、最適で、勝つための動きだった。


(でも)


それだけだった。


「……悪い」


短く返す。


レナが、少しだけ表情を緩めた。


「うん。それでいい」


その一言で、思考の輪郭が少し戻る。


『補足:思考同期率、低下傾向』


(……引き戻されたか)


小さく息を吐く。


「とりあえず、ここ離れるぞ」


ダンの声で、全員が動き出す。


「さっきのがまた来る可能性もある」


「だな……」


グリスが肩を回しながら応じる。


少し歩いたところで、シンが口を開いた。


「……さっきのやつ、多分だけど」


全員の視線が集まる。


「俺と同じ、転移者だ」


「転移者?」

マリーが首を傾げる。

「異世界人ってこと?」


「ああ。こっちの呼び方で言えば、そうなる」


少しだけ言葉を選ぶ。

「あいつらは、自分たちのことを“転移者”って呼ぶ」


ダンが頷く。

「内側の呼称、か」

「そんな感じだ」


グリスが苦笑する。

「どっちにしろ、普通じゃねえってのは変わんねえな」

ちらっとシンを見る。

「……お前を筆頭に、だけどな」


一瞬だけ間が空く。


「否定はしない」

短く返す。


グリスが笑い、空気が少しだけ軽くなる。

だが――


(あいつは、奪う)


『能力特性:奪取』


(しかも、俺を理解しかけてる)


『再接触確率:高』


(……だろうな)


歩きながら、静かに考える。

(次は、準備してくる)

そして――

(こっちもだ)


『提案:戦術再構築および事前最適化を推奨』


一瞬だけ、思考が揺れる。

(あれを使えば、確実に強くなれる)

だが、同時に思い出す。



「それ、あんまり好きじゃない」



(……)


息を吐く。

(ちゃんと選ばないと)


『提案:思考同期率の段階制御』


わずかに頷く。

(それでいこう)


胸の奥に残る違和感は、まだ消えない。

だが、その違和感があること自体が、

今は少しだけ安心できた。

第36話まで読んでいただきありがとうございます。


戦いが終わったことで見えてきたものと、逆に浮き彫りになった違和感。

シンにとっても、仲間にとっても、少しずつ状況が変わり始めています。


この先は対策と準備の段階へ入ります。

次の一手をどう選ぶのか、引き続き見守っていただけると嬉しいです。

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