第34話 再接触
今回は再接触からそのまま戦闘に入ります。
ここで一気に状況が動き、相手の能力やシンの戦い方も見えてきます。
ここから本格的にぶつかっていく流れになるので、楽しんでいただければ嬉しいです
ギルドの扉を押し開けた瞬間、違和感が戻った。酒の匂い、依頼書をめくる音、笑い声――どれもいつも通りなのに、ひとつだけ浮いている気配がある。
(……いる)
背中に視線が刺さる。振り返ると、人の流れの奥にコートの影が見えた。深く被られたフードで顔は分からないが、さっきの男だと確信する。
『警告:同一反応を検知』
(やっぱりな。ここじゃまずい)
男は動かない。ただこちらを見ている。誘っている、という感覚がはっきりある。
「先に外で待ってる」
それだけ言って踵を返す。マリーの声を背に受けながら外へ出ると、喧騒が一段遠のいた。数歩進んだところで足を止める。
「いいのか?」
背後から声が落ちてくる。振り返ると、いつの間にか男が立っていた。
『サブスクリプション稼働中』『残り時間:25分』
(十分だ)
「……何のつもりだ」
「確認だよ」と男は軽く言い、一歩近づいた瞬間、皮膚の内側をなぞられるような不快感が走る。
『警告:外部スキャンを検知』
「……ない?」男が首を傾ける。「普通あるはずだろ。転移者なら、なおさらな。匂いはするのに枠がねえ。……奪えない」
(奪う? どういうことだ)
『推定:奪取系統能力』
(……スキルを奪うタイプか)
「なんだてめぇ」
空気が沈む。次の瞬間、男の姿が消えた。
『戦闘開始:近接高速型』
(チャッピー、回避優先で読む)
『了解。左後方回避』
体を流す。遅れて風が頬を打つが初撃は外れる。「……は? 読んだ?」と男が揺れる間に踏み込み、間合いを潰して拳を打つ。男は半歩で外すが完全には捌ききれない。軌道を微調整して連撃を重ねる。
「面白ぇな。見えてねえのに、動きだけ合ってくる」
男が手を振る。「剣技――スパイラル・エッジ」ねじれた斬撃が渦を巻いて飛ぶ。
『回避不能。防御へ切替』
(再現)
『再現可能スキル獲得:剣技 スパイラル・エッジ』
「再現――剣技 スパイラル・エッジ」
斬撃をぶつけ、相殺する。
「……マジかよ。コピーか?」
「お前の能力も大概じゃないか。奪う、とか言ってたな」
「……聞こえてたか。まあいい。使えるもんは全部使う、それだけだ」
『最適行動:連撃』
距離を詰めるが、男の口が動く。「炎よ、渦巻け――ファイアトルネード」足元から炎が立ち上がる。
『回避推奨:上方退避』
跳ぶ。熱が追い上げる。
(チャッピー、迎撃)
『近接圧縮攻撃を推奨』
(グリスの動き……これか)
「グリス、借りるぞ!」
「再現――剣技 パワースラッシュ」
重い一撃が叩き込まれ、男の軸がわずかに崩れる。
「……やりづれえな」
『残り時間:12分』
打ち合う。流れは拮抗しているが、わずかに向こうが上。
『残り時間:5分』
(チャッピー、サブスク再起動できるか)
『同一グレードは連続使用不可』
(上位は)
『上級プラン使用可能』
(いけるか)
『必要コスト:15000G』
(……無理だな)
「どうした? 鈍ってるぞ」
(チャッピー、維持)
『負荷増大。演算遅延発生』
『残り時間:1分』
(ここで決める)
踏み込むが――遅れる。
『サブスクリプション終了』
世界が鈍る。衝撃。吹き飛ばされる。
「なるほどな。時間制限か」
立ち上がる。
「――シン!」
レナが割って入る。グリスたちも続く。
男は一歩下がり、全員を見てから笑う。
「……増えたか。まあいい」
「奪えない個体に外付けの補助、か」
視線が細まる。
「せっかくエサの方から来てくれたことだ」
一歩、踏み出す。
「しっかりいただいていくとしよう」
『警告:高危険行動予測』
(……来る)
そして――戦いは、次の段階へ入った。
第34話まで読んでいただきありがとうございます。
ついに直接戦闘に入りました。
相手の能力とシンの戦い方、それぞれの違いがはっきりしてきた回だと思います。
次回はこのまま本格戦闘に入ります。
どう決着するのか、引き続き楽しんでいただけると嬉しい




