第27話 二度目の解放
第27話です。
今回は戦闘中心の山場になります。
パーティとしての連携と、これまでの違和感がどう絡むのかを意識して書いています。
5/7 冒頭のシーンを修正しました。
少しでも臨場感を感じてもらえたら嬉しいです。
ギルドへ戻る頃には、昼過ぎのざわめきが広がっていた。
依頼帰りの冒険者達が酒場スペースで騒ぎ、受付前では素材査定の列ができている。そんな喧騒の中を抜け、シン達は受付へ向かった。
「グラッジボアの件について、今後の対応も含めて相談に来ました」
受付嬢はすぐに表情を引き締める。
「未達成報告の件ですね。すでに上層部へ共有済みです」
書類を確認しながら続けた。
「現地での異常発生、および危険個体の存在を確認したことを受け、依頼内容が変更されました」
「変更?」
グリスが眉を上げる。
「はい。本来のグラッジボア討伐対象は確認済みとして扱われます。そのため依頼自体は達成処理となり、追加分については別件――“異常発生案件”として再編成されます」
なるほど、とシンは小さく息を吐く。
森の奥で起きている異常は、もう通常依頼の範囲ではないということだ。
袋をレナが受け取り、中を確認して半分をこちらに渡す。
「ほら、1000」
「ありがとう」
『所持金:3260G → 4260G』
「ならその依頼このまま俺たちが受注します。
追加で、この方々も同行していただくことになりましたので、登録をお願いします」
「同行登録、承知しました」
外に出て、通りを抜け、森の手前で足を止める。奥から流れてくる空気が重い。
(ここで上げる)
『提案:サブスクリプション解放(演算能力・初級)』
一瞬の迷いのあと、答える。
「使う」
『消費:500G』
『所持金:4260G → 3760G』
思考の引っかかりが消え、視界が整理される。
(……やっぱりこの感覚だな)
軽い。判断が先に出る。無意識に足が一歩前へ出ていた。
(……悪くない)
「どうかした?」
「準備できた」
グリスがこちらを見る。
「一ついいか」
「はい」
「変に気使うな。一緒にやるんだ、普通でいい」
一瞬止まる。
「……わかりました」
息を吐く。
「……いや、わかった」
グリスが笑う。「それでいい」
森へ踏み込む。
『反応:多数』
一気に世界が整理される。位置、距離、動きが繋がる。
(……見える)
左三、右二、背後一。
「数、多いな」
「ああ、奥に固まってる」
「ダン、左抑えろ!」
「……任せろ」
ダンが前に出て盾で突進を受け止める。衝撃を殺した瞬間、剣で弾く。
「右から二体!」
マリーの声。
(読めてるな)
踏み込む。
『最適行動:算出』
遅れない。
突進を半歩ずらして首を斬る。一体。反転してもう一体。横からレナが滑り込み、残りを落とす。
「まだ来る」
「ああ」
さらに三体。
「前、出るぞ!」
グリスが押し上げる。
自然と形ができる。
ダンが受ける。
レナが斬る。
グリスが繋ぐ。
マリーが読む。
(無駄がない)
だが終わらない。
「奥だ!」
押し込む。
気配が濃くなる。
開けた場所に出る。
群れが溜まっている。
不自然に静かで、同じ方向を向いている。
(……集められてる)
『観測状態:強化』
背中に感覚が走る。
位置が分かる。
(……そこか)
意識を向ける。
ノイズ。
視界が歪む。
だが、踏みとどまる。
(……見える)
一瞬だけ輪郭。
だが意味が繋がらない。
『解析:不能』
その瞬間。
「来るぞ!」
群れが崩れる。
突進。
だが遅れない。
全部、読める。
「右三、左一!」
「助かる!」
グリスが動く。
避ける。
斬る。
踏み込む。
ダンが受ける。
レナが落とす。
マリーが次を読む。
連携が噛み合う。
止まらない。
一気に削る。
やがて静かになる。
残るのは中心。
視線。
そこにある。
(……まだいる)
逸らさない。
もう一度、意識を向ける。
ノイズが強くなる。
近い。
だが届かない。
『解析精度:上昇』
(……足りない)
「一旦引く」
「賛成だ」
「そうね」
森を抜ける。
感覚は薄れる。
だが消えない。
(……切れてない)
振り返らない。
分かっている。
あの奥に、何かがいる。
そしてそれは――こちらを見ている。
第27話を読んでいただきありがとうございます。
かなり近づきましたが、あと一歩届かない状態です。
次回、その“足りない部分”に踏み込むことになります。
ここから一段階上げていきます。




