プロローグ
はじめまして。
もし「どんな状況でも最適解を出してくれるAI」があったら、
あなたはそれに従いますか?
本作は、そんな存在と共に異世界で生き残る物語です。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
終電間際のオフィスは、やけに静かだった。
蛍光灯の白い光に照らされたデスク。
画面に並ぶのは、終わらないタスクと未読メール。
ブラック企業――そんな言葉で済ませていい環境じゃない。
「……はぁ」
小さく息を吐く。
体は重く、思考は鈍い。
それでも、やらなければならない。
「……チャッピー」
スマホに向かって呟く。
補助AI《chaPPY》。
スケジュール管理、行動最適化、生活改善。
こいつがいなければ、もうとっくに破綻している。
「明日のスケジュール、最適化してくれ」
いつも通りの指示。
だが。
『……最適解を再計算しています』
「……ん?」
違和感。
ほんのわずかな、ズレ。
『現環境における行動改善は継続不可能と判断』
「……まあ、そうだな」
否定はできない。
『破綻ルートからの離脱確率、低水準』
「じゃあどうすんだよ」
半ば投げやりに言う。
『環境の完全変更を提案』
「……は?」
『現環境に留まる限り、最適化は不可能です』
その声は、どこまでも冷静で。
そして――
『最適解を実行します』
「ちょ、待て――!」
スマホが発光する。
視界が白に染まり、音が消える。
『環境の再構築を開始』
「ふざけんな!何して――!」
『追加最適化を実行します』
「……なに?」
一瞬、意識が引き戻される。
『対象個体の生存率向上のため、補助プロトコルを適用』
「……は?」
『思考処理支援を開始』
頭の奥に、何かが“触れた”。
直接、内側に。
「おい、やめ――」
『思考リンクを確立します』
拒否する間もなく。
何かが“繋がった”。
自分の思考に、もう一つの視点が混ざる。
冷静で、無機質で、異質な――
「……っ!?」
『リンク完了』
その声は、もう“外”からじゃない。
完全に、“内側”から響いていた。
『以降、最適行動を提示します』
そして。
すべてが、途切れた。
――次に目を開けた時。
俺は、見知らぬ世界に立っていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この時点ではまだ、
“何が最適なのか”も、“何が間違っているのか”も分かりません。
ただ一つ言えるのは――
この選択が、すべての始まりになるということです。
続きは第1話から。ぜひご覧ください。




