今後の方針
キーリスは議長に呼ばれて船内に戻った。
通路ですれ違う人たちも星のテラフォーミングが進んでキーリスを称え、持ち上げてくるが、陰キャのキーリスには対人はめんどくさいだけだった。始終、愛想笑いと生返事で乗り切った。
キーリス『何を頑張って言うんだ、ハッキリ、星のテラフォーミングを頑張れって言え。』
キーリスは自分が発達障害があることを自覚してたし、実際その診断を受けていた。
キーリス「議長。入りますよ。」
ガチャガチャ。
ん?あいてない。またか。
パン!パン!と腰を激しく打ち付けるような音もする。
キーリスは少し、時間を開けてまた来るかと船内のカフェに足を運んだ。
キーリス「自分で呼びつけておいてコレだもん。わざとか?」
船内のカフェならテーブル席は観葉植物に区切られているから、個室のような作りだ。
キーリスはハムサンドとホットコーヒーを頼んで今後の方針について考えた。
キーリス『そろそろ、俺も星に降りてもいい時期だろうか?アヴァターラを使うのはいいけど(女性に気軽にトランスできるのはいいけど)オペレーターとの毎日の挨拶とか億劫なんだよなぁ。』
特に根拠はないがキーリスは魔女達とならうまく付き合っていけそうな気がしていた。
キーリスは大あくびをした。
ー数日前ー
マオはキーリス呼び出されて天空神殿に出向いた。
マオ「え?キーリスの個室?」
受付の魔女「アポイントメントではそうなってます。」
いつもの遺伝子工学研究室のキーリスの席で話をするものだと思っていたマオは面を食らった。
珍しい事もあるものだ。
マオはキーリスの部屋に向かった。部屋の前まで来ると、どこからか扉の前の景色を見ているのか、中からキーリスの声が聞こえてきた。
キーリス「マオか、入れ。」自動でドアがシュッと開く。指を挟まないようセンサーとかがあるんだろうなとマオは思った。
マオ「キーリス。話っていうのは?」
いつもキーリス個室にはメスの猫型亜人達がたむろしているはず(実際には見たことはない)なのにそれも居ないのでマオは更に驚かされた。
キーリス「マオ。お前、ターマと妊活してるんだろ?週何回だ?」
なるほど、こういう話か。マオは納得した。
マオ「ほぼ毎日。」
キーリス「うーん、そうかぁ。お前と魔女では子供ができないのかもなぁ。」
マオ「そうなのか!?」
キーリス「お前達の交際を認めてから、もう、かれこれ2年になるぞ?おかしいだろ?ほぼ毎日しといて。魔女達もいい年だ。そろそろ真剣に次世代について考えてやらんといかん。」
キーリスは窓の外の天空神殿の庭園を見ながらそういった。庭園には赤いバラが咲き誇っていた。
キーリスがようやく、議長室に入ったのは、キーリスが軽食を食べて仮眠をとったあとだった。
それなのに議長の頬には赤いキスマークがあった。
キーリス「……」
議長「今後の方針なんだがな、キーリス。星をくまなく開拓するにため、全ての世界樹を攻略、伐採することを議会が決定した。」
キーリス「そうなると人手が足りません。」
議長「人間を戦線に投入しろキーリス。」
それを聞いてキーリスは戦慄した。確かにヒトはすぐに増える、兵隊の数をそろえるのは容易だ。しかし、ゴブリンと違い知能が高い。運用には細心の注意が必要だ。
キーリス「あれはゴブリン繁殖用、農作業用にしか運用してませんよ?それに武器が……」
議長「光の剣だ。あれの使用許可が取れた。」
キーリス「危なくないですか!そんなもの!イギギ共に出し抜かれます!」
議長「レアメタルが見つかったんだろ?遅かれ早かれ戦争になる。気象兵器の使用許可もでた。やるしかないんだキーリス。」
光の剣。刀身に高出力のエネルギー帯をまとい、分厚い装甲も、防御用十種の神宝オキツカカ"ミでさえも切ってしまう近接レーザー兵器。
数を揃えれば、飛竜との戦いも楽になるかもしれない。
キーリス『しかし、なぁ。』
キーリスは思考を保留した。
できたての巨人に巨大な斧“グルジ”を持たせて世界樹伐採に向かう。
巨人が、道中の未開のジャングル、木の根っこに足を取られて何回も転びそうになる。
マオ「スルーズ!足元に気をつけろ!もうちょっとでゴブリンを踏むとこだったぞ!」
スルーズ「お、マジか。木で足元が見えねーんだわ。」
5m級の巨人、スルーズにはちょうど木の葉が顔にかかり足元どころか行く先も見えづらいものだった。
一行には、イギギ達の調査キットを運ぶゴブリンも多数同行していた。
イギギA「資源採掘の前に、輸送用のインフラを整備したほうがよさそうだ。」
マオ「道路は大事だよなぁ。」
自分も張り出た木の根でつまづきそうになりながらマオは言葉をかみしめた。
イギギB「お!ついたぜ!世界樹だ!」
ゴブリン「朝早くに出発して、日が暮れかけてんじゃん。」
夕日に赤く染まる世界樹と根元の滝と湖は戦闘があったとは思えないほど優雅にそこに佇んでいた。大蛇や飛竜の死骸は動物たちが片付けたのか無くなっていた。
スルーズは世界樹に片手を添えてまじまじ見あげた。
スルーズ「コイツはすげぇ。俺よりデケェ。」
マオ「グルジで切り倒せそうか?」
イギギA「でなきゃ困る!」
スルーズはグルジを両手で握ると大きく振りかぶった。
スルーズ「やってやるさ!」
コーン!
グルジの刃が世界樹に食い込む。
時空割断魔法、八柄の剣をもってしても一気には斬れそうになかった。
イギギA「この木、魔法が効かないのか?」
イギギB「この素材使えるんじゃないか?」
イギギA「加工してあれの装甲に……」
イギギ達がブツブツ言っているがマオにはよく分からなかった。
スルーズはその間にも世界樹を斬り進めていた。
中は柔らかいのか切るスピードが上がる。
マオ「なあ、さっきから何の話ししてんだ?シンゾー何とかって何だ?」
イギギ達はその言葉にぎょっとしてマオを見た。
コーン!
世界樹を切る音が夕暮れの密林にこだまする。
イギギ達はマオには特別と言って話した。
マオ「神造外骨格?なんだそりゃ?」
イギギA「作業用のロボットさ、できたらマオには特別に見せてやるぞ?作業がはかどること間違いなしさ!」
イギギB「マオは特別。キーリス、様を驚かせてやろう。」
マオ「ドッキリだな!わかった。誰にも言わない!」
メキメキメキメキィ!
世界樹は巨人によって切り倒され大地に横になった。




