ヌアザ
キーリスがこの星に来て数年、敵対原生生物を駆逐するため色んな亜人を作り出して来た。
ゴブリン⇒オーク⇒ラセツ、ヤシャ
猫型、狼型、鳥型
村も町とよべるほど人口が多くなった。しかし、人口が多くなった分、近隣トラブルが多くなった。特に知能が低く、人口の増えるスピードの速いゴブリンによる犯罪行為が目立つようになっていた。
キーリス「アイツラは専用に隔離したほうがいいのかなぁ?」
キーリスは天空神殿の遺伝子工学研究室の自分の席で端末に送られてくる、街の状況をチェックしていた。そのそばでは何時ものように魔女達が小道具を並べて魔法の研究をしている。
キーリスの目を引いたのは猫型亜人のことだった。キーリスは彼らのことが大好きで、彼のケモナーっぷりは自他共に認めていた。
猫型亜人はあまり他の種とコミュニケーションをとるということはなく街の外れに自分たちだけの小規模なコミュニティを形成しだしていた。
キーリス「いっそ、専用の村でも作ったほうがいいのかもしれない、あぁ、でも遠くに手放したくないなぁ。」
キーリスの画面のスクロールは続いた。
魔女リーダー「そういえば、マオから嘆願書の件について早く解決策を講じるように来てますよ?」
キーリス「ターマをつけてるのにか?アイツめ、他力本願なんだから。」
キーリスは呆れた。マオは魔女と交際しだして更に、他力本願が加速し、あまちゃんになった印象がある。
世界樹の制圧で竜種による襲撃、戦闘の回数が減ったからかもしれない。
魔女リーダー「でも、あの二人のこと、嫌じゃないんでしょ?お父様?」
キーリス「うっうるさいなぁ。全く、魔女には敵わないよ。」
魔女たちはキーリスが赤くなるのを見て、クスクスと笑い合った。
マオとターマは魔女の繁殖のモデルケースとして、キーリスから正式に交際を認められた。
ゴブリンの繁殖には成功してたものの他の亜人の繁殖例はあまりなかったので、町では空前の婚活、妊活がブームになっていた。
マオ「ニーアのとこに子が生まれたって?!そりゃめでたい!」
知らせを受けたマオとターマは揃ってニーアの同種の奥さんと子供のいる病院へ向かった。
母子ともに健康で病室に戻っているということでマオたちも見舞いに病室へ向かった。が、途中の通路の席にニーアがいた。
ニーア「あ、マオさん。」2人に気がついたニーアは立ち上がる。
ニーアは子どもが生まれたというのに浮かない顔をしている。
マオ「どうしたんだよ、ニーア。もっと喜べよ。」
ニーア「それが、ウチもシッポが短くって……」
ターマ「報告書にあったボブテイルというやつですか?」
ニーアは黙って頷いた。
前世で罪を犯した魂はシッポが短く生まれてくる。
なんて変な宗教観が猫型亜人たちの間で広まっていた。
マオ「そんな時にすんなよ!元気なら、いいんだよ。」
ターマ「そうですよ。ボブテイルは希少です。希少価値ってやつです!」
ニーアはその言葉に励まされたのか。目に光が宿った。
天空神殿のある地域の世界樹が制圧され飛竜による妨害がなくなったのでシャトルによる宇宙にある船から地上間の物資の大量輸送がこの2年の間に始まっていた。
人々の暮らしは原始的なものから一気に近代化が進んで福利厚生、司法が発展し豊かさを謳歌していた。
裁判所ができると心が読める種族が必要となった。
それがヌアザのいる下半身がへびの体のラミアという種族でイギギと同じく奴隷階級の身分だった。
イギギ「お待ちしてました。同志ヌアザ。」
ヌアザ「アヌ(キーリス達のこと)は何処だ?」
宙間便のシャトル空港に降り立ったヌアザをイギギ達が出迎えた。腰まで伸ばした銀髪をなびかせドレススカートから見えるヘビの体をくねらせ音もなくイギギのもとに向かってくる。
イギギ「天空神殿で制作物達と惰眠を貪ってます。」
ヌアザ「神造外骨格は?」
イギギ「製造ラインは何時でも稼働可能です。」
ヌアザと呼ばれた銀髪のラミアは空港から見える世界樹を眺めた。
ヌアザ「採掘が始まるまで、おとなしく裁判でもしておくか。」
ついに最初の巨人がロールアウトした。
地上に作られた巨人を作るための大きな遺伝子工学研究所。2人のイギギが2階の通路からカプセルの中の5m級の巨人を見下ろしていた。
研究員イギギA「コレでコイツにグルジを振るわせて、世界樹を切り倒したら、いよいよ神造外骨格が作れる。」
所長イギギ「渓谷のレアメタルは少量すぎたしなぁ。」
カプセルが持ち上がり、培養液が側溝に流れ、巨人がでてくる。その体を研究員のイギギ達がチェックをしている。
研究員イギギ「聞いたか?同志ヌアザが裁判所に着任したって?」
研究員イギギA「あぁ、聞いた聞いた。連日、取り調べの差戻しが出るんだっけ?」
所長イギギ「やっば、ラミアはすげーわ。」
裁判所で今日は強盗と婦女暴行を働いたゴブリンの裁判が執り行われようとしていた。裁判長の席にゆっくりと銀髪のラミアが入って来て席にヘビの腰を納めた。
ラミアは席にあった紙の罪状文に目を通している。
ヌアザ「なになに?強盗ついでに出会わせた婦女子を強姦と、……えらく派手にやったもんだ。」
ゴブリン『なんだコイツ。』
ようやく、ラミアはゴブリンを見た。蛇の目だ。ゴブリンは身を貫く視線に恐怖した。
ヌアザ「ラミアっていう種族さ。それで?初犯なんだっけ?」
ゴブリン「は、はい。」『ケッケッケ。んなわけねーだろ。』
ラミアは法廷で肘をついて斜に構えてた。その目は細くゴブリンを見下ろしている。
ヌアザ「ほぉ、コイツはもう一度、窃盗の事件も洗ったほうがいいかもしれん。特に女性のやつ。強姦までされてても女子は言わないことが多いからなぁ。」
ゴブリン「!」『!コイツ!』
ヌアザ「狼。」
狼型の警官「はい。」呼ばれた警官は冷や汗をかいた。新しく着任した裁判長は人の心を読む。そう、同僚たちがうわさしていたからだ。
ヌアザ「コイツの裁判は差戻しだ。もう一度、取り調べをやり直せ。」
狼型の警官達がゴブリンを法廷から連れ出そうとするが、ゴブリンは抵抗する。
ゴブリン「ちょっと、待ってくれ!俺はホントに初犯なんだ!反省もしてる!」
その言葉をラミアの裁判官は鼻で笑う。
ヌアザ「私に嘘と隠し事は通じないよ。閉廷。」
ラミアの裁判官は木槌を鳴らした。
ゴブリンは隙を突いて警官達を振り払い、ヌアザに飛びかかった。
コーン
ゴブリンは壁にでもぶち当たった音と共に床に落ちた。
ゴブリン「!?なんでだ?!」
ヌアザ「……お前なぁ。」
ヘビに睨まれる。ヌアザがゴブリンと目線を合わせる。
ゴブリン「う!」
ゴブリンは硬直して動けなくなった。警官達が立たせようとするもその身体はカチコチだった。
ヌアザ「おい、狼。気が緩んでるぞ。」
狼型の警官「失礼しましたヌアザ裁判長。」『どうなってるんだ?こんな奴が奴隷階級?あり得ない。』
ヌアザ「ありがとう。狼。お前は優しいなぁ。」
狼型の警官「……」『ありがとう?なんのだ?』
ヌアザはニタニタ笑うだけだった。裁判長はユックリと法廷を退出した。




