第39話 第三王子は相撲大会に出る!3
自分の相撲道に掛ける熱意に今更ながらに気付かされている『シュウ』です。
異世界ハルタン夏場所の勝敗は……
一回戦
〇サムソン 対 ●コゴブ
〇トーカゲ 対 ●タロウ
〇ミノノモンタ 対 ●オーグル
〇リンリン 対 ●ボルト
二回戦
〇シュウ 対 ●トーカゲ
〇エリス 対 ●リンリン
準決勝
〇サムソン 対 ●シュウ
〇エリス 対 ●ミノノモンタ
決勝戦
サムソン 対 エリス
これから、決勝が始まる――
決勝戦の取組みは! 優勝候補サムソン対横綱エリス! お互い闘気を纏いサムソンさんとエリスは土俵に上がった。
行司が掛声を上げる。
「はっきょい、残った 残った!」
お互いの立会いは、横綱エリスがしっかりとサムソンを受け止め、がっぷり四つの体勢になった。
エリスの小さい身体で大男のサムソンを受け止めるなんてどうなっているんだ!
両力士は微動だにしない! 動かないんじゃない、動けないのだ! まさにパワー対パワーの対決になった。
膠着状態になって4分が過ぎた。行司が両者の背中を叩き『水入り』の合図を送る。
水入り後の体勢維持の為、審判員が足の位置やまわしの組み方などをしっかり把握してから分かれ水入りに入った。
レーニャさんがエリスに飲み物を渡し、エリスは飲み物を受取り飲み干した。
僕は、エリスに近付き、
「エリス、大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫よ。サムソンさん強くなったわ。今の私でも勝てるかどうか」
「エリス、あまり無理な事はしないでね。最後にエリス、愛してるよ」
「――!? えっ!」
「いやー、こんな時に何言ってるんだろ。僕」
「ありがとう。私も愛してるわ」
「――!? えっ!」
「「…………………………」」
僕らは無言になった……
「私、頑張って優勝するからね!」
「ああ、エリスの勝利を信じてるよ!」
――僕は、突然出た言葉に驚いた…… きっとエリスと出逢った時から好きだったのだ…… やさしく、あたたかいエリス…… 一緒にいるとどこか安心してしまうところ…… 全部…… 自分でも気が付かないくらいに……
水入りが終わり、サムソンとエリスは土俵に上がった。
審判員の指導で、水入り前の態勢になった。行司が両力士の廻しの背中の部分を叩き再開の合図を告げた!
エリスは腰を叩かれた瞬間、廻しを掴んでいた両腕を引きサムソンの体を密着させ持ち上げた。サムソンは土俵から足が離れた事で慌て足をばたつかせ、エリスの指を掴まれた廻しから外そうとした。
サムソンは足の反動を利用してエリスの指が廻しから外れ、何とか逃げ切り、エリスとの距離を取った!
エリスはサムソンの廻し取り、技を掛けたい。サムソンは持ち上げられた動揺でエリスから距離を取り、突っ張りで、突き出しか突き倒しを狙いたい。お互いそんな駆引きをしているように感じた。
――先に動いたのはサムソンだった!
サムソンはエリスに対して、右手からの突っ張り! エリスに方に当たり、エリスは一歩、後ろに下がった! サムソンは好機とみて、さらに左手からの突っ張り! エリスはまた後ろに下がり、サムソンは突っ張りを繰り返し、エリスは土俵際まで追い詰められた! もう一回、突っ張りが当たれば突き出しになる絶体絶命のピンチ……
サムソンがエリスに勝利を確信した最後の突っ張りを繰り出した時、エリスはしゃがむように腰を落とし両手でサムソンの右ひざを抱え込み、押し上げて自分の背中にサムソンを乗せ、後ろに体を反らし土俵の外にサムソンを投げ飛ばした!
――場内はスローモーション見ているかのような一瞬の出来事に静まり返った……
「「「「――おおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」
エリスの勝利に場内は大歓喜に包まれた! 自分たちが座っていた敷物が土俵にめがけて宙に舞った! みんなのボルテージは大絶頂となった!
僕はあまりの嬉しさにエリスの元へ駆け寄り、どさくさまぎれてエリスに抱き付こうとした時、死角から二つの拳が僕の腹にめり込んだ…… 体がくの字に曲がり悶絶状態の中……
「――一体何が起こった……」
「ロッシュウ様には、まだ早すぎます」
「ロッシュウ様、姫様は渡しません」
――僕への刺客は、レーニャ&レイニー最凶コンビだった……
エリスはみんなに揉みくちゃにされていたが、そこから抜け出し、僕の所へ来ようとした時、レーニャさんに捕まった! そして、僕が悶絶している中、エリスの胴上げが始まった!
『ワイショイ! ワイショイ! ワイショイ!』
エリスの体が三回宙に舞う……
僕はまだ悶絶中……
「お~い! 俺を忘れてるぞ!」
サムソンがエリスの所まで走って来た!
「さぁ、皆の衆! 姫様の祝賀会はじめるぞー! 朝まで終わらないからなー! シュウ、お前もだぞ!」
「えっ!?」
「何が『えっ!?』だ! 当たり前だぞ! 姫様とシュウがお前らが主役だからな!」
「うん……」
「姫様も今日は、泊まっていくだろ? 主役が居なくちゃ、祝賀会になんねーぜ!」
強引な誘いに僕たちには拒否権は無いようだ……
サムソンさんは相撲も大好きだがそれ以上に宴会が超大好きに感じるのは僕だけだろうか?
――取りあえず、エリスは農村部へ泊る為、一旦や実家の屋敷に戻り、母上様と父上様から許可を得る事になった。
そして、エリスは一旦、瞬間移動で、実家に帰った……
エリスが戻るまでの間、僕とみんなは祝賀会の準備を始めた。
準備が終わった頃、エリスが農村部へ帰って来た……
「エリス、おかえり! 待ってたよ」
僕は、エリスに声を掛けた。
「ただいま。シュウ君……」
エリスの後ろには5歳位の女の子が立っていた……




