曲決めー高瀬日和
一学期も終わりに近づいてきたある日、日和が学校に着くと、有希と華乃が何か話していた。
「おはよう!何の話してるの?」
「おはよー!そろそろ合唱祭の曲決めあるよねって」
「あー確かにね。今年の候補曲何だろうね」
「わかんないけど、私は『落葉松』やりたいんだよねー!」
「そうなんだ!私は『虹』がいいなぁ。日和ちゃんは?」
二人ともガチなんだな。
日和は笑って何も答えず、代わりに言った。
「ちょっとちょっと、合唱祭で盛り上がるのもいいけど、もっと近くに楽しい行事があるよ?」
「あ、夏期学校!行動班も部屋班も一緒だよね。楽しみだなぁ」
「華乃正解!…でも有希、大好きな京都への旅行、忘れてたんじゃない?」
「忘れてないっ…忘れてた…かも」
「あはははっ」
慌てる有希を見て、思わず涙を浮かべて笑ってしまった。二人もつられて笑っている。
そのとき、担任の宇佐美が話しかけてきた。有希が華乃と顔を見合わせる。
「田中、横田ちょっといい?今日のロングホームルームで合唱祭の曲を決めたいから、仕切ってくれる?候補曲リストはそれまでに配っとくから。あとはCDがあるから、それ流して多数決でいいと思う。じゃ、よろしくね。お前らには期待してるからね」
「わかりました!ありがとうございます!」
二人は声をそろえ、さっそくリストを見始める。
「あ、虹も落葉松も入ってる!あとは…この作曲者さんの曲は審査員にウケがいいかな」
「さすが合唱部!それは伝えなきゃね」
楽しそうに話し合う二人を見て、日和は取り残されたような気分になり、そっと二人から離れた。
七時間目。ロングホームルームの時間として、木曜日だけにある。
有希が司会、華乃が書記で、話し合いが始まった。
「これから、合唱祭の自由曲を決めたいと思います!課題曲はまぁ知ってると思うけど、『大地讃頌』です。今からみんなに配ったリストに載ってる曲を流すんだけど、他にやりたい曲ありますか?」
日和はそれとなくまわりを見回した。案の定、誰も手を挙げていない…と思ったら、服部光一郎が手を挙げている。有希が指すと、服部は言った。
「俺、『愛を込めて花束を』がやりたいでーす」
ポップスっていいんだっけ?
有希が何か言おうとするのを、別の声が遮った。「おい服部、誰に愛をこめるんだよ?」
くだらない。面白くもなんともないわ。
日和はため息をつく。
服部は首をすくめたが、他の人はニヤニヤして有希を見ている。
運悪く担任は不在で、彼らはふざけ放題だ。さっき服部をからかった沢口と、その取り巻きである飯田、久保田が騒ぎ立てる。
「もしかして?Tさん?田中…」
「ちょっと!ふざけたこと言ってないで、真面目に参加したらどうなの?」
思わず怒鳴っていた。クラスメイトたちがびくっとして日和を見つめる。それも気にならないほどに腹が立っていた。
私の大事な親友をバカにしないで。
静まり返った教室に、沢口の舌打ちが響いた。




