<十七>
というわけで戦闘シーン。
相変わらずうまく描写できない…。
2人分の血を啜った「其れ」は、ようやくその姿を現し始めていた。
グネグネと動くブヨブヨとした袋をいくつもつなげたように見える不定形の胴体。
その胴体から、牙の生えた口のついた触腕がいくつも伸びて蠢いている。
その内の2本は男と衛視を貫き、未だ血を啜っている。
時折、その口から笑い声が漏れている。
…クスクス…クスクス…。
その神経を逆撫でする笑い声に、怒りを覚えた衛視達は一斉に斬りかかる。
次の瞬間、身体を貫かれた衛視は5人に増えた。
「下がって!」
フィリアが声を掛ける。
衛視達が邪魔になり、攻撃魔法を放つことができない。
しかし、仲間を殺された衛視はさらに逆上し、フィリアの指示を聞き入れない。
「貴様ぁっ!」
「よくもっ!」
おめき声を上げながら次々と斬りかかっていく。
が、触腕に貫かれた仲間の身体が邪魔になり、結果的に各個撃破されてしまう。
あっという間に犠牲になった衛視の数は7人を数えた。
流石に怖じ気づき下がり始める衛視達。
その横を通り抜け、前に進む「もの」があった。
ディーが錬金術で生み出した土人形である。
生み出すには人造生命より手間が掛かり、しかも受け付けるのは単純な命令しか受け付けないが、攻撃力は人造生命をはるかに上回る。
真っ直ぐと自分に向かってくる土人形に触腕を伸ばす「其れ」。
触腕は確かに土人形を貫いた。
ただし、それだけである。
魔力の核を破壊されない限り土人形は不死身だ。
触腕に貫かれたまま土人形は、その太い腕で「其れ」を殴りつける。
ブチブチッと触腕が千切れ跳ぶ音と共に吹き飛ぶ「其れ」。
そこにフィリアの魔法が襲いかかる。
-我は願う-空に漂いし風の精霊-敵-切-全て-『烈風斬』
今は亡きビロウズ直伝の精霊魔法が「其れ」の触腕を全て切り払う。
ゲヤャハハハハハ!
哄笑をあげながら、「其れ」はその場を這いずって逃れようとする。
そこに土人形が追撃を行う。
太い両腕を組み合わせ、大槌のような一撃を「其れ」の胴体の中心に叩き込む。
ブベチャァア!
腐肉が潰れるような音と共に「其れ」の胴体は前後に潰れ、千切れた。
(終わった…)
誰もがそう感じた瞬間。
「其れ」の前半分が大きな口を開き、自分を攻撃した土人形に喰らい付く。
一瞬で土人形の上半身は消失した。
それで核を破壊されたのであろう。土人形はただの土塊へと戻る。
いつの間にか「其れ」の背からは新たな触腕が生え始めていた。
「其れ」が更に次の獲物を見定めようとした瞬間。
-我は願う-堅固な大地の精霊-敵-貫く-『大地槍』
フィリアの唱えた精霊魔法が生み出した槍が真下から「其れ」を貫く。
大地に縫い止められた標本のようになった「其れ」を更に大地の槍が貫いていく。
2本。
3本。
4本。
槍の数が8本を数えた時、ようやく「其れ」は動きを止めた。
と、「其れ」は突然形が崩れ初め、赤黒い汚泥の様になったかと思うと、塵と化して消えた。
「何なの、『あれ』は…。」
「…分からない。今まで見たことも聞いたこともない…。」
そう呟いた2人が隣のヒュームを見る。
死にそうなくらい真っ青な顔をしたヒュームは2人の無言の問いに
「私にも…分からんよ。」
と力なく答えた。
自分たちが直面していた問題が、想像以上の物だったことに3人は衝撃を受けていた。
※通常、付与魔術で生み出される「ゴーレム」とは違い、錬金術による土人形はあくまで仮初めのものになる。(一定時間が経つと元の土に戻る)ただし、材料である地面と触媒さえあれば何処でも作成可能なため、錬金術師は自身の攻撃手段として土人形を用いることが多い。なお、どちらも同じゴーレムと呼ばれるのは制作過程は違っても術者の命令を聞き、動く、という面で変わりはないからである。
というわけで今回でた「其れ」=星の精でした。
英名 Star vampire




