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Watch ~監視者~  作者:
「風鳴りの魔都」
83/98

<八>

なかなか筆が進みませんでした。


情景は頭の中にあるのに文章にならない…。

 アルガの15日。

 あれからシィンは貧民街を中心に「廃教会」について情報を集めていた。

 しかし、調査には殆ど進展が見られなかった。

 噂はある。それはもう多種多様にある。

 しかし真実はおろか、事実すらその中に殆ど混じっていない。

 (意外に尻尾が掴めん…、意図的に噂をばら撒いているのか?)

 そう考えねば不自然なほど、情報が集まらない。

 通常なら此処で追求の糸は断ち切られてしまう筈だった。

 そんな中、シィンは「廃教会」ではない「或る」場所の噂も集めていた。

 (こちらもやはり、か。決まりだな。)

 シィンが集めた「或る」場所の噂。其処には異常なものは何も含まれていなかった。

 そして、それこそが異常だった。

 ゴミ溜めに一つもゴミが落ちていない、或いは飢えたオーガが人間を黙って見過ごす、といったレベルの異常だ。

 常に異常と異能と常識外に満ち溢れている場所。そんな場所に異常な噂が一つもない筈はないのである。

 (ならば、次は直接行ってみるか…。)

 シィンが次に向かおうとしているのはアザトー通りである。

 転生前に何度かこの国を訪れたことのあるシィンは、その場所が危険な場所であることを知っていた。にも関わらず、その場所についての「異常な」噂が無い、ということは誰かが意図的に押さえている、ということになる。

 そして、その異常性を気づかせないために貧民街の「廃教会」の噂は流されているのだろう、と推測したのだ。

 しかし、シィンはその前に「廃教会」に行くことにした。

 待っているのは十中八九、罠である。

 罠と分かっていていくのは愚か者かも知れない。

 しかし、相手の情報が殆ど無い現状で闇雲にアザトー通りに向かうのは無謀である。

 シィンは罠から「情報を読み取る」ことにした。罠のある場所には罠師もいるだろう。ならば聞きたいことを罠師に喋ってもらえばよい、と考えたのである。

 (まず下見をしておくか。)

 そう考えたシィンは宿から出て貧民街の方に向かう。

 「よぅ、兄貴。」

 宿を出てから程なくして声を掛けてきたのは、2日程前に知り合ったチコという少年である。

 「今日は噂はいいのかい?」

 シィンはチコに噂集めをしてもらっていた。貧民街の住人同士のネットワークはかなりのものである。日々の生活に生き残れるかどうかが掛かっているからだ。特に子供というのは目端が利かなくては生き残れない。だからシィンはわざわざ子供に噂集めを依頼したのだ。銅貨1枚程の報酬だが、チコ達貧民街の子供達にとってはかなりのものである。チコは張り切って噂集めをしてシィンに報告していた。

 「何かあったか?」

 「リラの奴が死んじまう前に仕事を頼まれたらしいよ。」

 「ほう?詳しく聞かせてくれるか?」

 そう言うとシィンがチコに銅貨を3枚渡す。リラというのは生け贄にされていた少女の名前である。シィンは彼女の足取りについても探るように依頼していた。

 「毎度ありぃ。」

 「それで?」

 「何でも届け物を頼まれたらしいよ。」

 「何処へだ?」

 「銅貨2枚。」

 「1枚だ。」

 「ちぇっ、ケチだね。」

 口を尖らせるチコに銅貨を1枚放る。

 「アザトー通り。」

 「誰の所か分かるか?」

 「其処まではちょっと…。」

 「分かれば銅貨5枚だ。」

 「分かったよ、また聞き込みしてくるよ。」

 そう言うとさっさと走り去ってしまうチコ。

 分かれば良し、分からなくても「廃教会」で情報は手に入るだろう。そう考えて、シィンも自分の目的地へと向かった。


次回は早くしたいです。


早くしたいんですが…。

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