表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Watch ~監視者~  作者:
「風鳴りの魔都」
80/98

<五>

なかなか日が進まない…。

 アルガの11日。

 シィンはニュールカイムに到着した。

 前世では来たことがあったが、今世ではまだ一度も来たことはなかった。

 幸い町並みに殆ど変化はなかったため、迷うようなことはなかった。

 その記憶を辿り、ある冒険者の宿を訪ねる。

 「破風の窓亭」

 そこは表通りから少しはずれて場所にあるが、その分、裏の情報が集まりやすい宿だったはずである。

 シィンはさっそく不死者の情報を集めるつもりだった。

 宿に向かう途中、少女とすれ違った。

 貧民街の住人らしく、薄汚れた服装をしている。

 自分に向かって近づいてくる見知らぬ人物に警戒しているようだった。

(何かあったのか?)

 とは思ったが、わざわざ関わる程、暇な訳ではない。

 少女の側を通り過ぎると、目的の宿に急いだ。

 (まだやっていればいいが…。)

 そう思いながら向かうと、やがて目的地が見えてきた。

 扉を開けて中に入る。

 宿の中にはなかなか癖のありそうな冒険者が、数人たむろして酒を飲んでいた。

 彼らは入ってきたシィンを値踏みするように眺めたが、すぐに興味を無くしたように眼を外した。

 シィンも、ことさら彼らに眼をやることなく、カウンターに近づく。

 そこにはサルをミイラにして圧し縮めた様な感じの老婆がチョコンと座っていた。

 「…。」

 老婆はつかの間シィンを眺めたが無言のままだった。

 それには構わずシィンは言葉を発した。

 「情報を買いたい。」

 「…符丁は?」

 乾いた風が吹き抜けるような声で老婆が答える。

 「俺が知っているのは古いが、それでよければ。」

 「…言ってごらん。」

 「『竜より強く、王をも支配し、死よりも無慈悲な物』。」

 「…良いだろう。何が知りたいんだい。」

 「この街での最近の裏の噂。特に不死者について。」

 「わかった。詳しい奴を紹介してやるよ。ところで…。」

 「なんだ。」

 「名前はなんとお言いだい?」

 「シィン。」

 「昔、そんな名前の奴を知っていたよ。」

 「そうか。」

 老婆は皺に埋もれた眼で探るような素振りを見せたが、口にしたのは別の言葉だった。

 「お代は今から呼ぶ奴と交渉しな。その内の一割があたしの取り分だ。」

 そう言うと、宿の中でたむろしている冒険者達の方を見てその内の一人を呼んだ。

 「…ベック。このお客が聞きたいことを話してやんな。」

 呼ばれた男がシィンに近づいてきた。

 「ばあさん、部屋を借りるぞ。」

 そう言うとシィンを促して、奥の部屋に移る。

 「…で、何を知りたいんだ?」

 ベックと呼ばれた男がシィンに訊ねる。

 「まずは裏の噂。そしてその中で不死者が関わっているようなもの、だな。」

 「それなら300リン、だな。」

 シィンが黙って言われた金額を机に置くと、ベックは話し始めた。

 「最近、殺しが流行っているようだ。特に貧民街の連中が、ポツポツと殺されてる。」

 通常なら噂にもならない事柄だ。貧民街での殺傷沙汰は日常茶飯事である。シィンが眼で続きを促すと、ベックも頷いて続きを話し始める。

 「これが、ただの殺しじゃないらしい。現場は酷い有様だったそうだ。」

 殺されるのは年端もいかないような少年少女。それがバラバラにされている様な有様だという。しかも…。

 「中には喰われてた奴もいたらしい。」

 とベックはシィンに告げた。確かに街中としては異常な事態である。

 「国はどう動いている?」

 シィンの質問にベックは

 「200リン。」

 と代金を告げた。

 改めて代金を払うと、

 「騎士団が動き始めているようだが、何もつかめてないらしい。」

 とだけ答えた。

 シィンはさらに質問を重ねる。

 「不死者が関わっているのか?」

 この質問に対してベックの応えは

 「わからない。」

 というものだった。

 代金が足りないのか、と探ってみたが、

 「本当にわからないんだよ。関係してるんかも知れんが情報そのものがない。」

 という返事だった。

 礼を言って部屋を出ようとするシィンにベックが声を掛ける。

 「不確かだが、魔神崇拝が関わってるんじゃないか、って話はあったぞ。」

 と声を掛ける。

 「わかった、幾らだ?」

 「サービスしとくよ。この件の情報はまだ要るのか?」

 「新しく入ったらまた頼む。」

 「わかった。」

 カウンターに戻ったシィンは老婆に仲介料を支払って宿を出た。

 (…魔神崇拝、か。奴らが関わっているのか?)

 とりあえず、他に手がかりらしきものはない。わざわざ自分をこの街に誘った以上何らかの繋がりはあるだろう、そう考え、シィンはこの事件を追うことに決めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ