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Watch ~監視者~  作者:
「精霊の迷宮」
53/98

<十六>

ちょっと短め。

試練の間には罠がないため、取りあえずここで休憩することとなった。

 休憩の合間に、シィンが大量に持ち込んできた薬品類で体調を整えていく一行。

 「何でこんなにいるんだ、と思ったが…。」

 「必需品でしたね。」

 「ケイトはシィンに謝った方が良いんじゃないか?」

 「何でよ!」

 「『重い』とか、『こんなに要らない』とか、さんざん文句言ってたろ?」

 「…忘れたわ。」

 「風追い人」の一行は軽口を叩きながら回復を終えると休憩に入った。

 通常なら不寝番を立てるところだが、水精王アーフラが、

 『ここは安全です。』

 と保証をしてくれたので、全員で休むことになったのだ。

 役目を終えた水精王アーフラは現在、姿を見せていない。


 シィンはその軽口に付き合うでもなく、淡々と回復をすると休息に入る準備をしていた。そのシィンにディーが話しかけた。

 「シィンさんは…、『風追い人』ではないの?」

 「そうだ。今回は俺が依頼主という立場だな。」

 「依頼?…何が目的なの?」

 「ここにある『剣』を取りに来た。」

 素っ気ない会話でなかなか話がつながらない。

 そのことにもどかしさを覚えたディーは、更に言葉を重ねようとする。

 「あの…、」

 「次の間も此処と同じくらいきつい。もう休め。」

 そう言うとシィンは会話を打ち切ってしまい、横になってしまった。

 その姿に、自分が拒絶されたような寂しさを覚えた。

 (…やっぱり、足手まといだと思ってるんだろう、な)

 「ディー。」

 軽く落ち込みそうになったディーを、後ろから呼ぶ声がした。

 振り向くと、ケイトが手招きしていた。  

 近寄っていくと自分の隣に簡易毛布をずらして隙間を作った。

 誘われるまま、そこに座ると、ケイトが話し始めた。

 「ディーは足手まといじゃないから。」

 「…でも。」

 「あなたが生きていて、一番喜んでいるのはきっとシィンよ。」

 「そんなはずない…。」

 (そんなはずはない。あの人はこの迷宮に目的を持って来ている。私は邪魔者…)

 自分の内部に潜りかけたディーの意識をケイトの言葉が引き戻す。

 「私達がレンナルトを出たのはディー達より1日遅れ。」

 「ですが、着いたのはあなた達が迷宮に潜った1ジアン後です。」

 いつの間にか傍に来ていたシャリーが言葉を継ぎ足す。

 「急がせたのはシィンよ。」

 (嘘、そんな理由はない…。)

 「『1ピンでも詰めないとそれだけ間に合わない可能性がある。』あいつが言ったの。」

 「彼は…とある『理由』で人が死ぬのを極端に嫌います。」   

 「同じ『理由』でずっとソロだったのよ、彼は。」

 「あの態度は、まあ、その弊害ですね。」

 次々とかけられる言葉に戸惑うディー。

 「私達が1ジアン遅れた時に彼は覚悟していたわ、『新しき星』の全滅を。」

 「でも、貴方は生きていました。」

 「だから、ディーが足手まといなんてことは絶対無いの。」

 その言葉が、言葉に込められた優しさが沈み込んでいたディーの感情を呼び起こす。

 ディーはケイトにしがみつくと、小さな声を上げながら泣き始めた。

 その声は静かに、長い間、試練の間に響いていた。


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