<十四>
一ジアン後、一行は再び「試練の間」の前にいた。
「ディーもいることだし、ここでもう一度『試練』について確認しておくぞ。」
シィンの言葉に頷く一行。
「今から『合い言葉』を唱えて中に入る。入れば守護者との戦闘になるだろう。」
「その守護者を倒せばいいんだな。」
「いいや、一撃を受けきればいい。『合い言葉』無しだと倒さなきゃいかんが。」
「そりゃまた、ずいぶんと易しいこったな。」
シィンの言葉を、疑わしげに聞き返すカイト。ここまでの迷宮を思えば信じられない気がする。
「そうでもない。こっちの条件も結構悪いからな。」
「…結界による弱体化、ですね。」
「おまけに『保護対象』もいる。」
こちらの悪条件を数え上げるシィンとシャリー。
結界による弱体化云々はよく分からなかったが、もう一つの悪条件である「保護対象」は自分である。ディーは申し訳なく思い、小さくなった。それをフォローするようにカイトが言う。
「それでも一撃でいいんだろう?ここまでの罠に比べれば…。」
「ずっと難しいだろう、な。」
それをばっさり切り捨てるシィン。
考えてみれば、ここまでの罠をかいくぐるだけの実力がなければ、この場には立てないのだ。その先にいる守護者が、今までの罠より弱いのでは話にならない。
シィンが言うのも当たり前と言えば当たり前だった。
「そういえば、しっかり聞いていませんでしたが、どんな守護者なんですか?」
「言っていなかったか?」
「守護者が居る、としか聞いていませんね。」
シャリーが周囲を確かめると、他の仲間も頷く。
そうだったか、と思わず内心で焦るシィン。本人はすっかり話していたつもりだったのだ。「新しき星」のことで焦っていたためのミスだった。
おそらく驚くだろうな、と思い、いささか回りくどい言い方を始めた。
「この迷宮の本当の名前を知っているか?」
「『還らずの迷宮』じゃないの?」
「それは俗称だ。正式には『精霊の迷宮』と言う。」
その言葉に不思議そうに問い返すグレン。
「精霊なんぞ見なんだが。」
その言葉に対して更に説明を続けるシィン。
「だが、この迷宮では精霊魔法を全て使うことができる。」
「それは凄いけど…、って前に見た魔法を使えば、ディー達をもっと速く見つけられたんじゃないの?!」
「あれは、よく知っている相手限定だ。…と、話がそれたな。」
1名を除いて話の続きを聞こうとする。
しかし、シャリーだけは、話の途中から顔色がどんどん蒼くなり、細かく体が震え始めていた。
「どうした、シャリー。顔色が悪いぞ。」
心配するカイトの声も聞こえないように、シィンの方を見て、
「…う…そ、です、よね?」
と小さな声で確かめる。
「残念だが、お前が想像したとおりだよ。」
気の毒そうに言うシィンの返事に、もはや言葉も出なくなるシャリー。
「というわけで、守護者は『四大精霊』だ。」
一瞬の間を置き、シィン以外の驚愕の声が迷宮に木霊した。
※通常冒険者が遭遇するような精霊は風精や火精などの下級精霊である。四大精霊とは下級精霊や中級精霊の王とも呼ぶべき存在で、神に近い力を持つと考えられている。実際の神に比べればその力は弱いが、並のドラゴンよりはずっと強い。通常の武器で傷を付けることはできず、魔力を帯びた武器しか通用しない。人族が挑む相手としては最悪の部類に属する。いわゆる「決して出会ってはいけない相手」「出会った瞬間、敗北が決定する相手」になる。それぞれ「風精王」「火精王」「水精王」「地精王」と呼ばれる。性別はなく、その時によって女性とも男性ともとれるような姿で表れる。人族とは「契約」によってのみ関わり、力をふるう。従属させることは不可能である。




