優月ちゃんと居場所つくれてるね!
ある土曜日。
保育園で、“親子ふれあいイベント”が開かれることになった。
内容は――
親子でゲーム。
歌。
工作。
そして最後に、家族写真。
唯ちゃんは朝から気合い十分だった。
「今日は絶対ちゃんとした服で行く」
「いつもしてるじゃん」
「今日は“ちゃんとしたママ”感出したいの」
でも十分後。
優月にジュースをこぼされる。
「ぎゃー!!」
開始前から大騒ぎ。
僕は笑いながらタオルを持ってくる。
「はい、“ちゃんとしたパパ”どうぞ」
「ちょっとムカつく」
保育園へ着くと。
優月、超ハイテンション。
「ぱぱきたー!!」
「ままぁぁ!!」
クラスの友達へ、僕たちを自慢げに紹介して回る。
「これ、ぱぱ!」
「これ、まま!」
“これ”扱いだった。
でも嬉しい。
教室には、子どもたちの絵が貼ってあった。
その中に、優月が描いた“家族の絵”もある。
僕。
唯ちゃん。
優月。
そして――
なぜか巨大なうさぎ。
僕は吹き出す。
「うさぎ、家族よりデカい」
唯ちゃん大笑い。
「優月の世界では重要人物なんだよ」
しかも僕の顔。
ほぼアンパンマン。
「パパ、丸すぎない?」
すると後ろから優月。
「ぱぱ、まるい!」
先生まで笑っていた。
イベントが始まる。
最初は親子ダンス。
でも。
優月、踊らない。
ずっと床に寝転がってる。
「いやぁーん」
イヤイヤ発動。
僕と唯ちゃん、必死。
「優月ー!踊ろう!」
「うさぎさんも踊ってるよ!」
すると突然。
優月、覚醒。
「ぴょんぴょーん!!」
なぜか一人だけ全力ジャンプ。
しかも勢い余って僕へ激突。
ドンッ。
僕、転ぶ。
子どもたち大爆笑。
唯ちゃん、笑いすぎて涙出てる。
「先生、また転んでる!」
完全に保育園名物だった。
工作の時間。
親子で“未来の夢”を描くことになった。
周りの子どもたちは、
“ケーキ屋さん”
“電車の運転手”
みたいな可愛い夢を書いている。
優月はクレヨンを握りしめて、真剣な顔。
そして描いた。
――うさぎ。
でかい。
あと、なぜか僕が隣で転んでる。
「夢どこいった!?」
唯ちゃん、呼吸困難レベルで笑ってる。
でも。
絵の端っこには、小さく家族三人が手を繋いでいた。
先生が優しく言う。
「優月ちゃん、家族大好きなんですね」
その瞬間。
僕も唯ちゃんも、少し胸が熱くなる。
帰り際。
みんなで家族写真を撮る。
優月は僕と唯ちゃんの真ん中で、満面の笑みだった。
カメラマンさんが言う。
「はい、チーズ!」
その瞬間。
優月が叫ぶ。
「うさぎー!!」
パシャ。
撮れた写真。
僕、笑い崩れてる。
唯ちゃん、涙目で笑ってる。
優月、ドヤ顔。
最高に“僕たちらしい写真”だった。
帰り道。
夕焼けの空の下。
優月は僕と唯ちゃんの手を繋ぎながら、楽しそうに歌っている。
意味不明な歌。
たぶん即興。
でも、すごく幸せそうだった。
唯ちゃんは、その横顔を見ながら静かに言う。
「ねえ」
「ん?」
「優月、ちゃんと“居場所”作れてるね」
僕は頷く。
保育園にも。
友達の中にも。
そして。
僕たちの隣にも。
優月の笑い声が響くたび。
この家は、もっと“家族”になっていく気がしていた。




