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ポテト

妊娠してからというもの。

唯ちゃんは、今まで以上に感情が忙しくなった。

ある日は突然泣く。

そして次の日には、信じられないくらい笑う。

僕は毎日振り回されていた。

ある夜。

夕飯を食べていた時だった。

唯ちゃんが急に真顔で言う。

「ポテト食べたい」

「今?」

時計を見ると、夜十時半。

「うん」

「明日じゃダメ?」

唯ちゃんは、ものすごく悲しそうな顔になる。

「……赤ちゃんが食べたいって言ってるのに」

「赤ちゃん、ポテト指定なの?」

「絶対そう」

結局。

僕たちは夜のファストフード店へ向かった。

車の中でも、唯ちゃんはずっと嬉しそうだった。

「しあわせ……」

「まだ食べてないよ」

「でもポテトが近づいてる」

店に着いて、揚げたてのポテトを受け取る。

唯ちゃんは一口食べた瞬間、目を閉じた。

「うまぁ……」

その顔が本気すぎて、僕は笑ってしまう。

「そんな感動する?」

「今の私には、ノーベル賞レベル」

帰り道。

唯ちゃんは満足そうにポテトを抱えていた。

でも五分後。

突然、真顔になる。

「……もういらない」

「えぇ!?」

「急に満足した」

「こんなにあるのに!?」

「ごめん」

結局、残りは僕が全部食べた。

次の日。

今度は朝から唯ちゃんがソファで泣いていた。

「どうした!?」

僕は慌てて駆け寄る。

唯ちゃんは鼻をすすりながらテレビを指差した。

そこには、パン屋の特集。

「このメロンパン屋さん……閉店するんだってぇ……」

僕は一瞬、言葉を失う。

「いや、でも別の店舗あるって」

「でもこの店長さん、優しそうだった……っ」

号泣。

僕は思わず吹き出しそうになるのを必死で耐えた。

その夜。

今度は逆に、唯ちゃんが急に笑い始める。

「ふふっ……」

「どうしたの?」

「あなたが真面目な顔で哺乳瓶の消毒方法読んでるの、おもしろくて」

僕は説明書を持ったまま固まる。

「大事だから!」

「先生みたい」

「先生だから!」

唯ちゃんはお腹を抱えて笑っていた。

笑いすぎて涙まで出ている。

「やばい、お腹痛い……っ」

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