この家、好きだな”って。
次の日の夜。
私は、自分の部屋で宿題をしてた。
……はずだった。
でも。
全然集中できない。
理由。
リビングから、結愛の声が聞こえる。
「ぷりんうしゃぎはね!!」
また始まってる。
しかも今日は。
パパを相手に、“超長編ごっこ遊び”。
終わる気配ゼロ。
私は思わず笑う。
少し前まで、元気なかったのに。
今のパパ、ちゃんと笑ってる。
その声を聞くだけで、なんか安心する。
私は、そっとドアを少し開ける。
リビング。
パパ、ソファに座ってる。
結愛は、その横で大暴れ。
ぬいぐるみいっぱい。
床カオス。
でも。
パパ、ちゃんと付き合ってる。
疲れてるだろうに。
「それで、ぷりんうさぎはどうなったの?」
って、本気で聞いてる。
結愛、超嬉しそう。
「まほうでせかいをまもる!!」
スケールでかい。
ママはキッチンで笑ってる。
その光景を見て。
私は、なんか胸があったかくなった。
あぁ。
いつもの山本家だ。
その時。
パパが、ふとこっちを見る。
「あ、優月。宿題終わった?」
私は、ちょっとだけ笑う。
「まだ」
すると。
結愛が、急に言う。
「おねえちゃんも、まほうつかう?」
巻き込まれた。
私は吹き出す。
「何の魔法?」
結愛、真剣。
「げんきになるまほう!」
それ聞いて。
パパ、少し笑った。
たぶん。
結愛は、本当にそう思ってる。
“笑わせれば元気になる”って。
単純だけど。
でも。
結愛って、そうやって家族を明るくしてる。
無意識に。
私は、リビングへ行く。
ソファに座る。
すると。
結愛、当然みたいにくっついてくる。
あったかい。
ママも、お茶を持ってきてくれる。
なんでもない夜。
でも。
私は、こういう時間が好きだった。
その時。
パパが、ぽつりと言った。
「なんかさ」
私とママ、見る。
パパ、少し照れながら笑う。
「この前、みんなに励ましてもらって、ほんと助かった」
少し静かになる。
でも。
結愛だけ、即答。
「えへへ!」
たぶん意味全部は分かってない。
でも。
嬉しそう。
ママが優しく笑う。
「みんな、パパ好きだからね」
私は、ちょっと照れくさくなる。
でも。
否定はしなかった。
パパって。
不器用だけど。
ちゃんと家族のこと見てる。
頑張りすぎるくらい頑張る。
だから。
たまには、支える側になりたいって思う。
その時。
結愛が突然、立ち上がる。
「きょうは、“かぞくぎゅー”する!!」
なにそれ。
でも。
次の瞬間。
結愛、パパにぎゅー。
ママも笑いながら参加。
私も巻き込まれる。
狭い。
暑い。
カオス。
でも。
笑い声が止まらなかった。
私は思う。
きっと。
家族って。
こういう、小さな時間の積み重ねなんだ。
特別じゃなくてもいい。
みんなで笑えるなら。
それだけで、ちゃんと幸せなんだと思う。
夜。
部屋へ戻る前。
私は、リビングを振り返る。
パパ、笑ってる。
ママも笑ってる。
結愛は、もう眠そう。
その景色を見ながら。
私は小さく思った。
“この家、好きだな”って。




