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つきよのうさぎ  作者:
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226/302

『おかえりがある場所』

最近、ちょっと思う。


パパって。


思ってるより、ずっと頑張ってる。


小さい頃は、あんまり分からなかった。


毎日仕事行って。


帰ってきて。


「疲れた〜」って言いながら笑ってる。


それが普通だと思ってた。


でも。


今は少し分かる。


大人って。


ちゃんと笑うの、難しい日もあるんだって。


あの日。


パパが帰ってきた瞬間。


すぐ分かった。


元気ないって。


靴を脱ぐ音とか。


「ただいま」の声とか。


いつもと少し違った。


結愛も気づいてた。


あの子、そういうの本当に敏感。


ごはんの時。


パパ、ぼーっとしてた。


なんか、見てるこっちまで苦しくなるくらい。


でも。


結愛がプリン半分あげた瞬間。


ちょっと空気が変わった。


あぁ。


結愛、ちゃんと“元気にしたい”って思ったんだなって。


すごいと思った。


私は、あんなふうにまっすぐ出来ない。


だから。


少し羨ましい。


夜。


私は、自分の部屋でメモを書いた。


“失敗しても、パパはパパだよ”


書きながら、ちょっと照れた。


こんなの、恥ずかしいかなって。


でも。


なんか伝えたかった。


パパって。


自分の失敗を、自分で大きくしちゃう人だから。


次の日の朝。


パパ、少し笑ってた。


昨日よりちゃんと。


それ見て、ちょっと安心した。


玄関で。


結愛が折り紙渡してる。


“ぱぱ だいじょうぶ!”


字、ぐにゃぐにゃ。


でも。


あれ、たぶん世界最強。


パパ、笑ってた。


なんか。


泣きそうに笑ってた。


その顔見た時。


家族って、こういうことなのかなって思った。


学校へ行っても。


なんとなくパパのこと考えてた。


ちゃんと大丈夫かな、とか。


また落ち込んでないかな、とか。


でも同時に。


きっと大丈夫とも思ってた。


だって。


パパ、弱そうに見えて、ちゃんと前向く人だから。


夜。


帰ってきたパパは。


昨日よりずっと普通だった。


結愛が飛びついて。


ママが笑って。


パパも笑って。


その景色見たら。


なんかホッとした。


私は思う。


たぶん。


家って、“完璧な人”が集まる場所じゃない。


失敗して。


落ち込んで。


疲れて。


それでも帰ってこれる場所。


それが家なんだと思う。


パパは、きっと。


自分が家族を支えてるって思ってる。


もちろんそうだと思う。


でも。


支えられてるのは、たぶんお互いだ。


結愛のまっすぐな優しさ。


ママの静かな安心感。


そして。


パパの、ちゃんと家に帰ってくるところ。


全部で、山本家なんだと思う。


夜。


私はスケッチブックを開く。


描いたのは――


ソファで笑ってるパパ。


隣でくっついてる結愛。


少し離れて笑うママ。


その絵を見ながら。


私は小さく笑った。


タイトルは――


『おかえりがある場所』


その絵は。


たぶん今までで一番、“家族”だった。


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