『おかえりがある場所』
最近、ちょっと思う。
パパって。
思ってるより、ずっと頑張ってる。
小さい頃は、あんまり分からなかった。
毎日仕事行って。
帰ってきて。
「疲れた〜」って言いながら笑ってる。
それが普通だと思ってた。
でも。
今は少し分かる。
大人って。
ちゃんと笑うの、難しい日もあるんだって。
あの日。
パパが帰ってきた瞬間。
すぐ分かった。
元気ないって。
靴を脱ぐ音とか。
「ただいま」の声とか。
いつもと少し違った。
結愛も気づいてた。
あの子、そういうの本当に敏感。
ごはんの時。
パパ、ぼーっとしてた。
なんか、見てるこっちまで苦しくなるくらい。
でも。
結愛がプリン半分あげた瞬間。
ちょっと空気が変わった。
あぁ。
結愛、ちゃんと“元気にしたい”って思ったんだなって。
すごいと思った。
私は、あんなふうにまっすぐ出来ない。
だから。
少し羨ましい。
夜。
私は、自分の部屋でメモを書いた。
“失敗しても、パパはパパだよ”
書きながら、ちょっと照れた。
こんなの、恥ずかしいかなって。
でも。
なんか伝えたかった。
パパって。
自分の失敗を、自分で大きくしちゃう人だから。
次の日の朝。
パパ、少し笑ってた。
昨日よりちゃんと。
それ見て、ちょっと安心した。
玄関で。
結愛が折り紙渡してる。
“ぱぱ だいじょうぶ!”
字、ぐにゃぐにゃ。
でも。
あれ、たぶん世界最強。
パパ、笑ってた。
なんか。
泣きそうに笑ってた。
その顔見た時。
家族って、こういうことなのかなって思った。
学校へ行っても。
なんとなくパパのこと考えてた。
ちゃんと大丈夫かな、とか。
また落ち込んでないかな、とか。
でも同時に。
きっと大丈夫とも思ってた。
だって。
パパ、弱そうに見えて、ちゃんと前向く人だから。
夜。
帰ってきたパパは。
昨日よりずっと普通だった。
結愛が飛びついて。
ママが笑って。
パパも笑って。
その景色見たら。
なんかホッとした。
私は思う。
たぶん。
家って、“完璧な人”が集まる場所じゃない。
失敗して。
落ち込んで。
疲れて。
それでも帰ってこれる場所。
それが家なんだと思う。
パパは、きっと。
自分が家族を支えてるって思ってる。
もちろんそうだと思う。
でも。
支えられてるのは、たぶんお互いだ。
結愛のまっすぐな優しさ。
ママの静かな安心感。
そして。
パパの、ちゃんと家に帰ってくるところ。
全部で、山本家なんだと思う。
夜。
私はスケッチブックを開く。
描いたのは――
ソファで笑ってるパパ。
隣でくっついてる結愛。
少し離れて笑うママ。
その絵を見ながら。
私は小さく笑った。
タイトルは――
『おかえりがある場所』
その絵は。
たぶん今までで一番、“家族”だった。




