『わたし、このおうちにうまれてよかった』
クリスマスの数日前。
優月は、学校から帰ってくるなりソワソワしていた。
ランドセルを置いて。
何かを隠すように、自分の部屋へ走っていく。
怪しい。
僕と唯ちゃん、顔を見合わせる。
「絶対なんかあるよね」
「あるね」
その夜。
結愛が先に寝たあと。
優月が、小さな声で僕たちを呼んだ。
「ねえ……ちょっときて」
リビングのテーブル。
そこには、折り紙や色鉛筆、リボンが広がっていた。
真ん中には――
手作りのクリスマスカード。
『ぱぱ ままへ』
少し曲がった文字。
でも、一生懸命書いたのが伝わる。
僕と唯ちゃんは、静かに座った。
「読んでいい?」
優月は照れながら頷く。
カードを開く。
中には、優月の字でこう書いてあった。
『いつもわらわせてくれてありがとう』
『かなしいとき、だいじょうぶっていってくれてありがとう』
『わたし、このおうちにうまれてよかった』
その瞬間。
唯ちゃん、涙腺崩壊。
「むりぃ……」
僕も、胸がいっぱいになった。
優月は慌てる。
「えっ、なんで泣くの!?」
唯ちゃん、涙拭きながら笑う。
「うれしいからぁ……」
僕は、優月の頭をそっと撫でた。
「ありがとう」
優月は、ちょっと照れくさそうに笑う。
「えへへ」
その時。
背後から声。
「ゆあもいる!」
振り返る。
結愛、起きてた。
しかも。
なぜか毛布をマントみたいにしてる。
「どうしたの?」
結愛、真顔。
「サンタ!」
全然違う。
でも本人は誇らしげ。
そして。
テーブルのカードを見る。
「ゆあもかく!」
数分後。
完成。
ぐるぐる。
まる。
謎のうさぎ。
そして中央に大きく。
『ぷりん』
僕と唯ちゃん、吹き出す。
優月なんて笑い転げてる。
結愛は満足げ。
「かけた!」
世界一自由なクリスマスカードだった。
クリスマスイブ当日。
家族みんなで、イルミネーションを見に行った。
街中がキラキラしている。
結愛は、目を輝かせて走り回る。
「ほしみたい!」
優月は、少し大人っぽく景色を見上げていた。
その横顔を見ながら。
僕は思う。
子どもたちは、少しずつ変わっていく。
でも。
今、この瞬間にしかない表情がある。
手を繋ぐ温度。
笑い声。
目を輝かせる顔。
全部、今だけの宝物なんだろうなって。
帰り道。
結愛は僕の腕の中で寝てしまった。
優月は、唯ちゃんと手を繋いで歩いている。
街の灯りが、静かに揺れていた。
その時。
優月が、小さな声で言う。
「ねえ」
「ん?」
「サンタさんってさ」
「うん?」
「“だいすき”をくれる人なのかもね」
僕は、少し驚いて。
それから静かに笑った。
「そうかもしれないね」
優月は、照れくさそうに笑う。
その横で。
結愛、寝言。
「……ぷりんさん……」
台無しだった。
でも。
家族全員、吹き出してしまった。
きっと今年も。
笑って終わる、いい一年だった。




