表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
101/302

『わたし、このおうちにうまれてよかった』

クリスマスの数日前。


優月は、学校から帰ってくるなりソワソワしていた。


ランドセルを置いて。


何かを隠すように、自分の部屋へ走っていく。


怪しい。


僕と唯ちゃん、顔を見合わせる。


「絶対なんかあるよね」


「あるね」


その夜。


結愛が先に寝たあと。


優月が、小さな声で僕たちを呼んだ。


「ねえ……ちょっときて」


リビングのテーブル。


そこには、折り紙や色鉛筆、リボンが広がっていた。


真ん中には――


手作りのクリスマスカード。


『ぱぱ ままへ』


少し曲がった文字。


でも、一生懸命書いたのが伝わる。


僕と唯ちゃんは、静かに座った。


「読んでいい?」


優月は照れながら頷く。


カードを開く。


中には、優月の字でこう書いてあった。


『いつもわらわせてくれてありがとう』


『かなしいとき、だいじょうぶっていってくれてありがとう』


『わたし、このおうちにうまれてよかった』


その瞬間。


唯ちゃん、涙腺崩壊。


「むりぃ……」


僕も、胸がいっぱいになった。


優月は慌てる。


「えっ、なんで泣くの!?」


唯ちゃん、涙拭きながら笑う。


「うれしいからぁ……」


僕は、優月の頭をそっと撫でた。


「ありがとう」


優月は、ちょっと照れくさそうに笑う。


「えへへ」


その時。


背後から声。


「ゆあもいる!」


振り返る。


結愛、起きてた。


しかも。


なぜか毛布をマントみたいにしてる。


「どうしたの?」


結愛、真顔。


「サンタ!」


全然違う。


でも本人は誇らしげ。


そして。


テーブルのカードを見る。


「ゆあもかく!」


数分後。


完成。


ぐるぐる。

まる。

謎のうさぎ。


そして中央に大きく。


『ぷりん』


僕と唯ちゃん、吹き出す。


優月なんて笑い転げてる。


結愛は満足げ。


「かけた!」


世界一自由なクリスマスカードだった。


クリスマスイブ当日。


家族みんなで、イルミネーションを見に行った。


街中がキラキラしている。


結愛は、目を輝かせて走り回る。


「ほしみたい!」


優月は、少し大人っぽく景色を見上げていた。


その横顔を見ながら。


僕は思う。


子どもたちは、少しずつ変わっていく。


でも。


今、この瞬間にしかない表情がある。


手を繋ぐ温度。


笑い声。


目を輝かせる顔。


全部、今だけの宝物なんだろうなって。


帰り道。


結愛は僕の腕の中で寝てしまった。


優月は、唯ちゃんと手を繋いで歩いている。


街の灯りが、静かに揺れていた。


その時。


優月が、小さな声で言う。


「ねえ」


「ん?」


「サンタさんってさ」


「うん?」


「“だいすき”をくれる人なのかもね」


僕は、少し驚いて。


それから静かに笑った。


「そうかもしれないね」


優月は、照れくさそうに笑う。


その横で。


結愛、寝言。


「……ぷりんさん……」


台無しだった。


でも。


家族全員、吹き出してしまった。


きっと今年も。


笑って終わる、いい一年だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ