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33話 最終決戦。平和を脅かすお邪魔虫②

 奏凍死塚の戦機はどんな物にでも姿を変える特殊な戦機だ。既存の武器から空想の産物まで彼女の思いのままに姿を変える。それ故に常に有利を取られているように錯覚させられる。

 だが、彼女の真の力はその思考力だ。

 アルカトラズでもそうだったが、常に相手の有利を取れる最適解を導き出し、相手を常に後手に回すのだ。



 そんな相手に単体で挑んで勝てるだろうか?

 いや、まず無理だ。ジャンケンで言うなら、常時後出しをかましてくる相手に真っ向から挑むのは勝率が低いどころか0だ。

 故に俺達は1人で撃ち合わない。

 最低でも2人。多くて全員で一斉に掛かって死塚の判断力を鈍らせる戦略をとっていると言うのに――



「なんで対応できんだよッ!」



 お兄ちゃんがそう愚痴を溢す程、死塚の力の牙城は高く険しく強固な物だった。

 今の彼女の戦機は触手だ。タコのように8本の軟体が背中から生えただけだと言うのに、俺達はそれに翻弄されていた。



 正面から俺がライトニングスパローで斬り込むが、これはまぁ対応されるのは分かる。だが両サイド――引いては背後から絶え間なく攻撃を仕掛けるみんなの動きを捉え、足を絡め取っては投げ、分厚い触手で戦機を防御しては物量で押し切ってくる相手にどうすれば良いのだろう。



『なにか良いアイデアは!? なにか考えないと!』



 鈴芽ちゃんの焦りが伝播する。

 そんな事、言われなくても分かっているのだが、有利を押し付けてくる相手に思考は負に堕ちるばかりで、良いアイデアなど浮かぶはずがない。

 それに場所も場所だ。

 周りには洗脳を受けた議員達がいる。

 アリスのドラゴンブレス、俺のエアバーストなんて放てば、ウィザードではない彼等は大怪我どころか死者すら出してしまうだろう。

 死塚はそれが分かっているからこの場から離れようとしない。戦闘狂のようでありながら姑息な手を使う……。

 だからこそやりづらいのだが――



「でりゃぁぁぁ!!」



 触手と撃ち合っても勝ち目はない。ならば足だ。相手はいかに最強であろうが、足を崩せば体勢は崩れる。

 上半身を狙うと思わせ、俺は刃の軌道を死塚の足へ向ける。

 行ける!――

 触手は間に合っていない!



「良い判断です。ですが!」



 触手の先端から棍が如意棒の様に伸びる。

 タコのような触手の先が形を変えたのだ。

 それが俺の渾身の攻撃を防ぎ、最も容易く弾き返された。



「そんなのありか!?」


「私に既存の武器は効かない。舐めない事です!」



 瞬間。死塚の触手全体からライフルの銃口が生える。

 流石にこれについての説明はいらないよな?



「退避! 退避ぃぃ!!」



 俺は叫んだ! この銃口全てから魔力を伴った射撃が出来るなら、身を晒し続けるのは危険だ。

 俺たちは急ぎ死塚から距離を取る。

 瞬間――銃口が火を吹き、辺り一体に魔力弾を掃射し始めた。

 現実の銃弾とは違い、紫色に発光するエネルギー体の弾幕が俺達に向かう。

 必死に防御し、躱す。

 時折流れ弾が議員の眉間を撃ち抜く事もあり、無差別だ。



『まずいまずい! どうしようどうしよう!!』


『落ち着いて! 今は取り敢えずこの場を凌がないと!』



 焦燥に駆られ判断が鈍る。ただでさえ後手に回らされているのに、こんなの無理ゲーだ。

 こいつの戦機だけめちゃくちゃだ。

 原作で名前だけの存在だった癖になんでこんなに強いんだよッ!

 ――そこで俺はふと考える……。

 ここはラノベの世界だ。

 設定だけ登場していた奏凍死塚とは言え、原作者が勝てないと思わせるような敵を作るだろうか……。

 そんな奴がアルカトラズに捉えられるような描写を描くだろうか?

 いや、あるはずだ。一見めちゃくちゃなクソゲーを押し付けてくるこの女にも弱点が。

 原作者の気持ちになって考えろ……。この世界の人間の発想にとどまるな……。



『鈴芽ちゃん、表を少しの間頼める?』


『大樹? まさか何か考えが――』


『ない。けど何か届きそうなんだ……』



 しばしの沈黙――鈴芽ちゃんは目の前の弾幕を放つ要塞と化した死塚に目をやりつつ、小さく息を吐いた。



『分かった――やる事は時間稼ぎでいい?』


『十分! 頼んだ!』


『おっけー! 任せなさい! あんたは全力で脳みそを回転させてよね!』


『今の俺の脳みそは鈴芽ちゃんの物だけどね!』

 


 そうして意識を俺から鈴芽ちゃんに切り替えた。

 この体は元々鈴芽ちゃんの物だ。

 体の小ささは、こと回避に関しては俺以上に彼女の方が体の扱いに慣れている分、弾幕の隙間を掻い潜り被弾を防いでくれた。

 幸いこの弾幕はこの場に居た仲間で対応出来るぐらいの攻撃なようだが、やはり攻め手に欠けている様子。

 俺は魂の中で思考する――

 無敵、最強と思わされる奏凍死塚の弱点を――。



 設定とはいえ彼女は囚人だった。なら一度は倒した人物の設定はあるはず。無かったとしても、彼女が負けた設定は確実にあるのは間違いない。

 今までこの世界に転生して多少の誤差はあれど、設定を大きく逸脱する事は無かった。変化があったのはイベントに関するものだけ……。

 俺がこの世界の作者なら死塚をどう描くだろうか……。

 悪役でラスボスを描くだろうか。

 いいや。どれだけ無敵に設定していようが、悪役として出す以上必ず突破口は用意するはず――何かあるはず。

 今まで見てきた彼女の行動――声にした言葉――

 どこかにヒントが……。

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