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14話 潜入二日目、最後のチャンス

 潜入二日目。

 昨日と同じ配置に私とお兄ちゃんが着き、アリスとアカリが社内に潜入。

 会社側の人間からすればこの二人は研修二日目のインターン生という訳なのだが……。

 


「今回で掴み切りたいところよね」


「そうだな〜」

 


 というもの。昨日柳先生と話してた、ファンタジア内での動きの活発化が思った以上に進行が速い事が懸念だ。

 このまま時間を掛ければ手遅れは間違いない。

 なんとしても、今日で奴らの居場所を当てないと。

 そう意気込んだのはアリスとアカリも同じだ。

 同じが故に、空回りしないといいんだけれど……。


 

「まあ。今は俺たちに出来ることを全力でするだけだ。鈴、マップは?」

 


 機材をいじり社内マップ画面を広げる。

 昨日の内に記録した情報であらかた内部の地図を作成しておいたのだ。

 といっても? この機会がオートで勝手に作ってくれたんだけど。すごいわよね。さすが最新技術。ただ記録するだけで良いなんて飛んだ優れものだ。

 


 表示されたマップに赤い点が二つ。これはアリスとアカリ。黒い幾つもある点が社内に存在する社員または研究員だ。この黒い点。誰が誰かまでは分からない。ってか数が多すぎて目が痛くなる。

 まだ出勤時間前だという時間帯なのにもこんなに人が揃っているなんて親愛製薬――名前の割にブラック企業なんじゃない?

 


『裏でこそこそ犯罪者とつるんでるあたり、間違いなくブラック企業ではあるけどね』


『違いないわね』

 


 そう操作していると、アリスとあかりに近づく黒い点が一つ。

 


「お兄ちゃん動いたわよ」


「おっけー確認した。昨日と同じ案内の人だな。こっちでも見えるぜ」


 

 双眼鏡で覗いていたお兄ちゃんもその様子を確認できたみたいだ。

 さあ。もう跡がない潜入作戦を始めましょう。


――――――――――――――――――――――――


「おはようございますお二人とも。今日も研修二日目頑張りましょうね」


「「はい!」」

 


 昨日と同じ先輩社員が二人と軽めの挨拶を交わし、社内へ案内する。そこで今日のスケジュールの確認を歩きながら受けるのだが、アリスとアカリは互いに頷き合い、アカリがポケットから出した小型発信機を先輩社員の体に取り付けようとした。

 


「っと今日はこの後すぐにオリエンテーションがあるんですが――」


「いぃっ!?」

 


 取り付けようとして先輩社員が振り返ってきた。

 なんてタイミングの悪さ。もはや芸術だ。

 小型発信機を摘んで取り付けようとしていた状態からこの人に気付かれずにやり過ごすのはかなり厳しい。

 やけど! やるしかあらへん! ナニワのド根性魂をみせたるわっ!!

 


「あ、アアッー! 先輩の首元に季節外れのでっかい蚊がー!」


「えっ!?」


 

 バッチコーン!! と先輩社員の首元にアカリが張り手をかまし社員は「ぐはぁ!?」と盛大にダメージを受けた。

 この光景もはやただの暴力じゃない? そうアリスは冷や汗をかいたが――

 


「すまんすまん。マジででっかい蚊がおってさ〜。大丈夫ですか?」


「い、いきなりすぎますよ……いてて」


 

 なんと後輩のとんでもない暴力をこんなに簡単に許してしまった。なんて懐の広い人なの!?

 こんな人がブラック企業に勤めてるなんて、可哀想。可哀想すぎるわよ!

 アリスは涙した。アカリの理不尽な暴力を受けてなお許し、感謝までしているこの社員に同情を隠せなかった。


 

「おや、ハーモニーさん? どうしたんですか涙なんか流して」


「い、いえ。これはなんでもないです!」


 

 いきなり涙を流した私にまでこんな優しく。急いで涙を拭って誤魔化した。アカリはアリスの方を目を細めて睨んでくるが、元はと言えばあなたがめちゃくちゃしたからこうなった訳で、そんな目を向けられる筋合いはない。


 

「はあ。緊張で気分が高ぶってしまったんですね。わかります。でも大丈夫ですよ。きっとあなた達二人ならこの先この会社で良い経験が積めるはずですから」


「はい!」


「では行きましょうか」


 

 そしてまた歩き出す。

 彼の後ろを歩きながらアリスはアカリに顔を近づけ――


 

「で? 付けたの?」


「バッチシや。ってあんま変なことせんといてや? ここで疑われたらお終いなんやから」


 

 誰のせいでこうなったと思ってんの!? とはここでは言えず帰ってから文句を言ってやろうとアリスは心に誓った。

 


「先輩先輩!」


「はい?」


「昨日先輩が話してた昇進の話なんやけど。どないですか?」


 

 アカリが聞いて先輩社員は「あー」と少し上を見上げながら答えた。

 


「ふっふっふ。覚悟は決まりましたよ。昨日あなた達に話してあの話を受けてみようと思うんです」


「おー! そりゃめでたいなぁ! で? いつ話に行くん?」


「そうですね〜。オリエンテーションが行われる会場に二人を送り届けてすぐですかね〜」


「ええやんええやん! 朝イチから社長も社員の覚悟にニッコニコ間違いなしやで!」


「あはは。大袈裟な〜。それに報告するのは社長じゃなくて上司ですよ」


「まあまあ。細かいことは気にせんでおいて〜や! な?」

 


 そう言っては先輩社員の背中をバンバン叩くアカリ。

 こいつ、潜入作戦してる自覚はあるのだろうか? そう思わせる程にヤバい行動。これにはインカムからも――


 

『ちょっとアリス! アカリを止めてよ! 何させてんのよ!』


 

 そう注意された。されたとはいえこの場で返事することも出来ないし、今のアカリを止めることも難しい。

 だって、近くで見てわかるけど、何だかよく分からない絆が生まれ始めてるんだもの。

 目の前にはアカリの言葉に嬉しそうに答える先輩社員の姿があった。ここで下手に介入するのは人間として間違っているような気がする。

 ただ明らか間違っている点があるとすれば、今の自分達はスパイの身であって、こんな気安い後輩キャラになることじゃないとは思うんだけどね。

 


 そう思いながらも最初のステップ。これから重大な情報を仕入れてくれそうな先輩社員に発信機を取り付けることができた。

 後は彼が上司からの話を盗み聞くだけだ。

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