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9話 理解と整理

「えっと……ここは大樹さんの生きていた世界にあった本の世界で、死んで鈴の中にって……俺、まだ意識が戻りきってないんですかね?」


「いやいや。戻ってるから。到底受け入れられないこと言ってるのはわかるけど、実際に起こってるからね? 俺自身ビックリだから」



 信じられないのは俺だって同じだ。だけどそれはとうに前に受け入れた。

 時間はかかるだろうけど、こればかりは本当に起こっていることだから受け入れるしかないわけよ。



「は、はあ。信じられない話ですけど、俺たち家族のことにも詳しくて、この世界について俺よりも知ってるあたり信じるしかないんですが――」


「あ。タメ口でいいよ? 今の俺は君の妹だからね」


「えぇ……ちょっとそれは……」


「おっさんが妹ってのが気持ち悪いって顔しないでくれよ……。そうしないと周りから変に思われちゃうだろ?」


「そ、そうなんですが〜。分かっているんですが〜。うぅぅん」



 まあそうだよね。いきなり30過ぎのおっさんが10歳の妹の姿で「妹だ」って言ってきたら嫌だよね?

 でも仕方ないの。そうでもしないとこの世界でまともに兄妹できないから!



「はぁぁ。分かり……分かった。そうする」


「むしろそうしてもらわないと俺たちが困るからね。受け入れてくれてありがたいよ」



 こんな話を洗脳から回復したばかりの脳で受け入れてくれたことの方が感謝だけどね。逆の立場だったらまだ疑ってると思うよ。さすが主人公ってことだね。



「それよりも今はファンタジアの奴らが動き出したってことの方が大事なんですよね?」


「おっと。そうそう。お兄ちゃんが一人の時に、全国各地で演説してる奴らの声を聞いておかしくなった人が増えたらしくてね」


「お、お兄ちゃん……」



 あ。そこは受け入れ難いんだ。ごめん、諦めて?



「俺も、奴らの演説を聞いたけど、それでおかしくなったって? ダメだ。うまくその時のことが思い出せない」



 今回の洗脳は当時の記憶も曖昧にさせる効果がついてるのか。となると洗脳かマジ信者か判別つけるのは難しいな。

 これから立ち塞がるのがどっちなのか分からないのは相当やりづらい。

 お兄ちゃんは気絶させて治したショック療法的な奴だし。他の人たちはどうやって解除させたんだろ?



『そこんとこも知っておかないとだけど、病院で聞くのは難しいよね?』


『だね〜。守秘義務ってものもあるだろうし、そう簡単に個人の治療法を聞き出すのは無理だろうね』



 だったら個人の力より権力だ。

 基地に戻ってから来栖さん達に聞いてもらおう。

 もしかしたらとっくに知ってるかもだし。



「ここで考えても仕方ないよ、お兄ちゃん。今はとっととここを出て来栖さん達のとこに向かわないと」


「だな。分かった。じゃあすぐに準備するから――」



 と言って服を着替えようとし始めたが、お兄ちゃんは手を止めた。どうしたんだろ? まだ何か体に異変が残ってたのかな?



「あ、あの〜。部屋を出てもらえるとありがたいんだけど……」


「な〜に言ってるんだよ。同じ男じゃんか。気にせず着替えなよ〜」


「今のあんたは鈴でしょ!? 妹の前でそうそう着替えられないって!」



 え、えぇぇぇ。家族なのに〜?



『家族でも恥ずかしいでしょ普通!?』



 どうやらこの場では俺の方が異端らしい。

 おかしいな? 生きてた頃は茜の前でもスッポンポンでいたことも、着替えてたこともあったけど、文句言われなかったよ?

 その分いろいろ馬鹿にされたりはしたけど。主に一部分――



「鈴芽ちゃんにも怒られたから部屋を一旦出るよ……。準備できたら呼んでくれ」


「そうしてくれ」



 渋々俺は部屋を出てお兄ちゃんの準備を待つことにした。準備はそんなに時間が掛からなくて、俺たちはすぐに駐屯地に向かうことにした。

 なんやかんや心配してたけど、俺たちのことを受け止めてくれて本当に良かったよね?



『受け止めてくれたっていうか受け入れるしかなかったっていうかって感じよね』



 どっちにしても結果は同じだよ。

 まあ、鈴芽ちゃんの秘めた想いは話さずにいたけどね。


――――――――――――――――――――――


「九条鈴芽および九条雪也。ただいま帰還いたしました!」



 基地に戻ってすぐ、私はお兄ちゃんと一緒に敬礼して来栖さん達に向き合っていた。

 ここには八重さんに柳先生、アリスにアカリと全員が集結していて、私たちがここに来る前までずっと会議をしてたのか、机の上に紙が敷かれて色々書き込まれていた。

 それと帰りの道中でお兄ちゃんがあまりにもぎこちない様子だったから、大樹と私は交代することにした。

 そうでもしないとこの場で変な勘繰りされちゃうし、仕方ないよね。



「は〜い、お帰りなさい。今は全国で起こってる異常事態とファンタジアの動きについて見直してたところよ〜」



 来栖さんは八重さんに、私達の元に資料を手渡すよう促した。

 八重さんが分厚くなった資料の塊を私たちに手渡す。

 重い……。これが今起こってることと、分かったことなの?



「そこにある資料の話を全部するとまた長くなっちゃうから、今話し合ったことを掻い摘んで大事なとこだけを教えるわね〜」


「そうしてくれるとありがたいです……」



 お兄ちゃんも苦笑いでそう言った。



「そうだわ。雪也さん。あなたを特別強化実習生の待遇で我が隊に入隊させることにしたから、これから宜しくね〜」



 お兄ちゃんに来栖さんはポンと手を叩いて、思い出したかのように言った。



「マジっすか……」


「マジのマジよ〜。そうしないとこれからの作戦に困るからね〜」



 これが権力ってことよ、お兄ちゃん。諦めなさい。



「はぁ。分かりました。こちらこそ宜しくお願いします」


「うんうん。素直でよろしい。また必要な訓練は八重さんにお願いしてるから、面倒見てもらってね〜?」



 八重さんがニコニコと手をお兄ちゃんに振っていた。

 無いとは思うけど、八重さんもお兄ちゃんを狙うライバルの一人になる可能性が無きにしも非ず!?



『鈴芽ちゃん。今はそれよりも……』


『わ、分かってるわよ! ちょっと気になったぐらいじゃないのよさ』



 乙女心は複雑なのよ! 私の一部になったんだから、そろそろこういう細かいところにも気付きなさいよね。

 っとそこからは、来栖さんに聞かされた話を理解するのに集中することにしたのだが……。

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