海ってこんな感じなんですか?
晴れ渡る空と広大に広がる海はお互いに蒼さを競い合っている。
颯爽と吹き抜ける風は船上の人々に心地よい安息を与えた。
ゆったりと進んで行く、絢爛豪華な船からは貫禄が感じられる。
……はずだった!
分厚い雲が一面に配置されている空は、今にも雨が降り出そうとしており、海では波が荒れているのが見て取れた。
べったりと張り付くような潮風は船上にいる人々に不快感を与える。
左右へ大きく揺れる船は、慣れていない者を容赦なく酔わせ、下手したら転覆するのではないかと思えた。
こんなはずじゃなかったのに……
どうしてこうたったんだよ!
数時間前に遡る。
「この世界に来てからもう三日目か……」
別に元の時代が恋しい訳ないけど、少し寂しさを感じているのは確かだった。
それにしても暇だ……
そんなことを考えていると戸が開いた。
「弥九郎、少し遊びに行かんか?」
姿を見せたのは父親であるらしい隆佐だった。
一体何をするんだろう?
まぁどうせ暇だし少しくらいならいいか!
そう思い、隆佐の後に続いて部屋をあとにした。
「弥九郎、早く乗らんか!」
本当に一体何をするつもりなんだよ!
釣りをするとしてもこの船はあまりにも大きすぎるだろ!
これは絶対に何かを企んでいるな?
「父上、体調が悪いので帰ってもいいですか?」
「何を言っておる!早く乗れ!」
自分には一切選択肢はなく、為すすべもなく大型船に連れ込まれた。
はぁ〜……嫌だなぁ〜……
「それで遊びって、何をするんですか?」
「そ、それは……何でも良いじゃろ」
何も考えてねぇのかよ!
せめて一つでも建前を思いついとけよ!
はぁ……いくら言ったところで、船の上では何もできないけど……
海は漕ぎ出して数時間が経ち完全に船酔いになっていた。
初めて船に乗ったけど、人生でも最悪な経験の一つになったわ!
「弥九郎、お前を魚屋のところへ預けてから四年になる。それに歳も二十二となった」
隆佐が急に話し始めた。
いきなりであったし、態度がとてもしおらしかったので驚いた。
「それがどうしたんですか?」
真意を掴みきれず問いかけた。
何を考えているんだ?
「そろそろ良い頃合いだろう。儂の後を継がんか?」
つい驚きのあまり吹き出してしまった。
いきなりすぎない!
心の準備ができてる訳ないだろ!
「お言葉ですが、父上もまだまだご健在ですし、まだ早いのでは?」
そうか、と答えた後は何も言ってこなかった。
少し気まずい雰囲気の中、来た道をまた引き返して行くのだった。