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10 新大陸は見付かったのか?

「国庫を使い、何も見付けられなかったとは。これはゆゆしき事態ですぞ」

「そうです、王の責任問題になります」

「どうなさるおつもりですか? ダンカン王!」

「……」

 貴族の重鎮達はダンカンを吊し上げている。何という浅ましい奴らだ。自分達は何もしないで、文句ばかり言っている。もしここで新大陸が見付かったと言ったらどうするつもりだったのだ?

 彼等は、この国を出て侵略でもするつもりだったのか? だが、そんなことが出来る気概のある者はいない。彼等はただ王の揚げ足を取りたいだけのようだ。

 ゴードンは彼等の思い違いを正すことにした。

「貴殿等は何か勘違いをしているようだ。この航海は私個人の資産で行ったものだ。国庫からはびた一文供出していない。航海で得たものは無かったが、それでも私の人生において実りある旅だった。王は私の我が儘を快く聞いてくれて、少しの間私を自由にしてくれたのだ。これから私は王の補佐として付くことにする」

 貴族達は何も言えなくなったようだ。

 今まで何かことあるごとにダンカンに不平をぶつけて、自分等は何も協力してこなかった。かと言ってダンカンを王の位から蹴落とすでも無く、ただただ自分の地位を維持することに連綿とするだけの無能揃いだ。

 今、この国は発展し始めている。王都の近くに出来上がった学園都市は王都に負けないくらい発展し始めた。

 魔の森近くに在るため、生徒達のレベル上げが容易に出来、魔法の新理論も確立し始めている。

 商人達は学生が狩った魔獣の素材に群がり、学生はそのお金で勉強がはかどるという相乗効果が出来ている。

 学園都市には冒険者ギルドを誘致し、学生達にギルドに加入する事を奨励したのだ。今、学園都市から上がる利益は莫大なものになっている。

 この都市は王族の管理の下にある。総ての利益がダンカンに齎されているのだ。

 貴族等はそこでの利権を得たいが為、王に度々面倒な問題を持ちかけ、自分が如何に有能かを示そうとしているようだが、返ってそれが彼等の無能さを際立たせている。

 近視眼的にしか物事を捕らえられない馬鹿者に、任せられるはずが無い。

 ダンカンは得意のだんまりを決め込んで、貴族達からの進言をのらりくらりと躱し、取り合わないようだ。それが彼等を益々いらだたせ、そしてダンカンのことを無能だと決め込もうとしている。

「自分の我が儘でダンカンに悪いことをしたな。よく持ちこたえていたものだ。これからは私が補佐について貴族どもを矯正してやる」

 王の立場から逃れ、自由を謳歌した。ゴードンにとって久し振りのレベル上げも出来たのだ。もう十分だった。

 数年すれば、貴族の代替わりが進み、ダンカンの側近も育ってくることだろう。

 ゴードンのこれからの挑戦は国の貴族達の意識を変えていくことだと決めた。


「ゴードンそれで、新人類はどのような者達なの?」

「その内ダンカンも連れて行ってやるさ。今は我慢してこの国の貴族達を纏めていこう」

「分かっている。マリーナが王子を産んでくれて王子が普通の人間だったことに、貴族達は何故かがっかりしているんだ。まだ、貴族達は呪いのことは忘れて居ない。今ここを離れることは出来ないのは理解している。でも、見て見たいな。見た目が魔獣なのでしょう?」

「……ああ、以前の私達のようだった。だが、彼等には魔力器が無い。同じ呪いでは無いようだ」

「でもどうやって船に乗り込んだの? 奴隷商の使用人がしらみつぶしにしていたはずなのに」

「彼等特有の技能があるのかもな。今レオンが鑑定士を同行させて調べているはずだ。サラは何度か南の大陸へ行って様子を見ているようだ。その内報告してくれるだろう」

「鑑定士は口止めしているんでしょう? 彼等の国が落ち着くまではソッとしておくと言っていた筈だよね」

「私が懇意にしている鑑定士は八十歳の老人だ。あの土地に永住して貰うことにしている。魔女の事もあるから、暫くは公表しない方がいい。南の大陸には、魔力持ちが居ない。北から攻められればあっという間に侵略できてしまう。だがあの土地には呪いが掛かっているのだ。あの土地の呪いが、我が大陸の子どもに影響するかも知れない。それを調べてからで無いと南との交流はしない方がいいだろう」

「ゴードンの航海は実りがあったね。素晴らしい成果だ。これを公表しないなんて勿体ない気もするけど……貴族達が余りにも考えがなさ過ぎて信用も信頼も出来ない。仕方が無いね」

 レオン達の研究は何年にもわたるはずだ。サラは、

「もう子どもを産む予定は無いから、私は平気よ。でも、レオンたらここでもう一人作るか何て言っているの。子どもをモルモットにするなんて酷いと思うわ」

 確かにレオンはこの頃研究にのめり込んでいる。領地は信用のおける代官に任せ、殆ど南の大陸に行ったきりだ。

「彼奴は一体何を考えているのか。サラや子ども達を放って置くのなど、以前では考えられなかったはずだ」

「でも、分からないでは無いな。自分の好きなことが目の前にあれば、夢中になってしまうのも……」

「ダンカンの好きなことは?」

「僕はここで王をするので満足している。普通の人間として生きていけるのが一番の僕の希望だったから」

「そうか……願いが叶っていたのだな。ダンカンは」

 王の自室から薄らと王都が見渡せる。

 ダンカンとゴードンは一晩中語り明かしたことになる。王都の空にオレンジ色の朝日がゆっくりと顔を出し始めた。


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