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19 柔の業

問.筋肉に突然「君も筋肉にならないか?」と言われ

  た際に正しい返答は? 


答.「ぅえ?!」 ←言語化されない「え?」

  (「ほう?」)←興味有り気に

  (『???』)←よくわかっていない


 脈絡なくブッ込まれた筋肉化への誘いに、変な声を出したきり硬直(フリーズ)するわたし。


「…ん、どうした?」


 そしてわたしを硬直させる提案をした当人は、自身がおかしなことを言ったことを微塵も感じていないように首を傾げている。

 

((おかしいにゃ…?))


 普通老齢に差し掛かっている筋肉達磨が小首を傾げたところで気持ち悪いだけなのだが、ジャクソンのそれを見ても特に何も感じない。


(『随分と澄んだ目をしているわ?』)


 …確かに。

 言われて見れば心なしかキラキラ(?)としているように見える。


(「…「ギラギラ」の間違いにゃ。」)


 目だけであれば幼子の希望に満ちた瞳と勘違いしてもおかしくなさそうなレベル(?)だ。


(「正気に戻れにゃ。

 …シアもピコの混乱を助長することを言うのは控え

 るにゃ。」)


バシッ!


「痛っ、はっ!」


((わたしは今何を…?))


 (はた)かれたような痛みを幻覚し、それによって数秒間の記憶の空白を自覚する。


「済まない、急過ぎたな。

 悪い癖だとは思っているのだがな…。」


 わたしが(他者から見て)一人でワチャワチャしていると、ジャクソンが決まり悪そうに謝罪してきた。


「あ、いや、此方こそ?

 ……それで、何故か聞いても?」


 年長者に畏まられ、心地の悪さからこちらも謝意を示して手打ちにする。

 それとは別に提案の意図を問う。

 提案を受けるにしろ、拒否するにしろ、判断材料がなければ返答が出来ない。


(「ふ~ん…?」)


 マルが疑いを向けてくるので白状すると、わたしとしては遠慮願いたい。

 これに関してはわたしの感情だけでなく、士官候補生時代の格闘訓練で適性が著しく低いことが既に判明しているのだ。

 しかし力を扱う者として上澄みであろうジャクソンが、手合わせの相手をしたのがマルと理解した上で尚わたしに提案してくるとなれば、その理由に興味が湧く。


「う~む…何故、か。」


 どうやら感覚的なものからの提案らしく、暫く考えを纏めているジャクソン。


「そなたがトリアンダを伸した時の事なのだが、」


 ……、あ。

 一瞬誰のことだか分からず考えたが、初日の出来事だと思い当たる。


((そういえばあの時…。))


(「…と言うか、それしかないにゃろ?」)


(『ちゃんとお爺さんの話を聞こ?』)


 わたしの思考にマルがツッコミを入れたことで意識が逸れてしまいそうになるが、シアの注意で失礼をせずに済んだ。


(『失礼がどうこうと言うならシアも大概だと思うん

 だけどにゃ…。』)


 マルの抗議については熟考の後検討と言うことで処理させていただきました。

 そしてジャクソンの話の続きだが…。


「トリアンダと相対した際の注意の向きかた…、それ

 と掌打の姿勢と当て方に武術の片鱗が見えたように

 感じてな。」


 一応軍式格闘術は履修しているわけだからそういうことも有り得る。


「しかし軍式のものには無い動き方…、むしろ我が家

 の闘気術に通ずるものがあった。」


「ふむ。」


 闘気術とやらはフォレスト家の秘伝らしい。

 免許皆伝であるジャクソンからしてみれば、未熟のまま振るわれるのに我慢ならないと言うことだろうか?


「だが同時に、我が闘気術とも異なる武術であるこ

 とも理解した。

 儂が考えるに、そなたはマルコシアスがそなたの身

 体を動かした際の動きを、無意識ながら再現しよう

 としているのではないか?」


 体で覚えると言う言葉があるが、まさにその現象が起きているようだ。


「闘気術は神の力を効率よく発揮する武術として形造

 られたとされている。」 


(「…なるほどにゃ。」)


 わたしにはわたしが無意識でマルの真似をしようとしていることと、闘気術の元がどういったものであるかの関連性がさっぱりだ。

 幸いマルは納得しているようなので後で説明して貰えるだろう。


「傍流か他派かは定かでないが系統としては同じ。

 であればそなたが闘気術を習うことには意義がある

 と儂は判断した。」


 ジャクソンの話をざっくり言い換えると、わたしがマルコシアス(マルとシア)の力をより発揮出来るようになるということらしい。

 マルが否定しないあたり、ジャクソンの考えは間違いないとみえる。

 有益ではある。

 しかし習うことに否やは無いが一つ懸念がある。


「ジャクソンの話はだいたい理解したにゃ。

 でもわたしの身体は鍛えても効果があまり出ないら

 しくてにゃ。」


 士官候補生時代、格闘術に適性がないと判断されたのは、わたしの身体は筋肉トレーニングを行っても筋肉が付きにくいという体質に起因していたのだ。


「ああ、軍式格闘は力を重点にしているからか…。」


 武術に精通するジャクソンは直ぐに問題点に気付いた。


「闘気術も剛の(わざ)寄りだが…、まぁ大した問題は無い

 だろう。」


 鍛え上げられた腕を組みながら、ジャクソンはそう言い切った。

 ここまで説得力の無い「問題無い」との言葉はこれまでに聞いたことがあっただろうか。


「儂は偶々鍛えれば肉がついたが、歴代当主にはそな

 たのような者もいた。」


 遺伝的にそのケースは少なかったことは察するが、闘気術は代々伝わってきた武術とジャクソンは言った。

 そしてその理由(答え)


「技の数としては剛の業に及ばないが、闘気術には柔

 の業も存在する。」


 ジャクソンのその言葉を聞いた瞬間、わたしが闘気術を習うことが決定したのである。


 


 

 

 

 




 



次回更新は23日の12時です。


いつも読んでいただきありがとうございます。


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