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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
6.黒い気配(え、次は私が紹介? ええと、よろしくね)
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誰かと楽しく話すのは

 ――ユートゥルナ大瀑布・湧水洞窟地点――

 

 

 

 ラグナロクまで後三日。

 

 大瀑布の中間地点にまで差し掛かった所で時刻は夕陽が差し掛かり、丁度そのタイミングで一同は洞窟部分に入ったのが、このまま普通に進んでいると帰りの事も考えると一日で帰還するのは少し厳しい時間になってきた。

 

 

「おー見て見てアムっち! あそこに綺麗な湧水があるよ!」

 

「おお本当だ。シャルル、ここら辺で休んだ方がいいんじゃねえか?」


「うーむ。僕等は平気だけども……」



 ちらっと後ろを見たシャルルは、夕陽の光と影が入り混じる入口部分で洞窟の壁に背持たれているリアンとスイの様子を気にしていた。

 水脈が網目状に張り巡らされたこのダンジョンは、ただ前に進むだけでは攻略をする事は適わず、時には水中を進んだり滝を直接登ったりと想像以上に体力を浪費するダンジョンだった。それに加えて常時モンスターとの遭遇も頭に入れておかなくてはならず、元々華奢な二人は心身共に限界に近付いていたのだ。

 そしてそれを見抜けない双子である筈もなく――、

 

 

「よーし今日はキャンプしよキャンプ! ルル、一回でいいからみんなでしてみたいってずっと思ってたんだー」

 

「えっ、そ、そんな! 私ならまだ大丈夫ですからお気になさらずに……!」

 

 

 スイはまだまだいけると、腕を元気に振り回したり小さな魔法を詠唱したりして余力を見せつける。が、シャルルはそれを優しく手で遮り首を横に振る。

 

 

「前に進むだけが全てじゃない。時間は効率よく使わないとね。早速準備をしよう」



 

 * * *

 

 

 ――

 

 ――――

 


 結局双子のペースにされるがままに『グローリィ』はキャンプの準備を早々に終わらせ、腰を下ろした所でリアンがスイにふと疑問を投げかける。

 


「スイは過去に巫女だったという事は、ここに来るのは二回目になるんだよね?」


「はい。道も特に変わってないと思います」



 二人の話に今度はアムも混じり、スイの右隣に座り込む。



「その時はここの時点で疲れ切ってたのかな?」

 

「……いえ、あの時はまだそれほど……。でも一つだけ違うとすれば、水の量や流れが以前と違って明らかに激しさが増しています……。まるで――」

 

「外部からの侵入者を拒むように……って所か」

 

 

 最終的にはシャルルも加わって、スイは以前のこのダンジョンの様子を語り始めた。4人はパチパチと炎が揺らめく焚火を取り囲むようにして座り、すぐ横にはテントも設置されている。

 そんな雰囲気がスイは目に見る全てが新鮮なようで、準備している時もメンバーの誰かが物資を運んだり、あるいはただのバケツに水を汲んで来るだけでとても感激した顔で満たされ、テント内で料理をしているリアンに至っては「ずっと見ていたいですッ!」と発言を零すも、流石にそれではリアンもやり辛くて仕方ないのでアムが外に強引に引っ張って来て、今に至る次第だ。

 

 

「はぁーっ。でもまあ、ようやく一息つけた感じだな。川の流れに逆らって進んでるから足腰が結構疲れてくるし体力の消耗した状態で大群に襲われたらアタシとかはともかく、リアンは元より肝心のスイが危なくなっちまう」

 

 

 思えば最初に入口で出迎えた魔物の大群のお出ましも、スイが指摘したダンジョンそのものの変化も、普通に考えればシャルル達が元より歓迎されていないのは当たり前で、全てダンジョンの主が仕組んだものと考えればすんなりと通してくれるのは無理なのは分かっていた。スイ以外は訪れる事自体が初めてだし、これが普通なのかと思っても別に不思議はない。

 

 

「でもどうしてでしょうか……。私達に向けられていたのは敵意というよりも、むしろ……」


「明確な『殺意』。――だよね?」

 

「リアンさん!」


「別に呼び捨てで構わないわよ。もうレイだってここのメンバーなんだから」

 

「呼び捨て……!? いえいえ、それにはまだ及びませんので……っ!」


「はい出来たわ。竜肉の煮込み鍋よ。出汁もワイバーンの骨から取ってるから栄養満点よ。私が用意した薬味もたっぷりあるから好きなだけ食べてね」

 

「へえ。今日は中々に豪勢だな」


「ふふん、ルルが今日はフンパツしたのだ! 5人で初めてのダンジョン探索だし、『大天竜のお肉』を持って来たんだよー。『倉庫』にいつまでも置いといても勿体ないしー」

 

「……へえ。って待てよ大天竜ってグランドワイバーンじゃねーか……。いやもうアタシは大して驚かねーや……。ああそうそう、アタシも呼び捨てでいいかんな」

 

 

 スイは生まれてこの方誰かを呼び捨てで呼んだ事など無かったのか、珍しくオタオタする姿を見てリアンはくすりと笑い、それを見て茶化しにきたルルナが更に場をかき乱す。おまけにアムが「コイツ等に絡まれたら逃げらんねーから諦めな」と宣告されながらも出された料理に舌鼓を打ち、程よい感じにカオスになる。


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― 新着の感想 ―
[一言] 急激な環境の変化って、悪い方向でもいい方向でも戸惑いますよね
2020/05/17 17:15 退会済み
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