また背中がムズムズする……
――アルカディア学園・裏庭――
「そろそろ――あ、来た」
虚空に向かって一人呟くのは、一軍の制服を身に纏った白髪の女子生徒。
それとほぼ同時に空に真っ黒な霧が出現すると、一人の黒髪の男性が姿を現す。
――
――――――
「……浮かない顔のようだけど、おいしくいただけた?」
「まだだな。まるで【闇】が足りん。あの状態で喰らっては何もかもが中途半端だ」
「だと思ったわ。そんなバァルに朗報よ」
「ほう……?」
「西の大陸で行われてる争いの応援要請として、魔法騎士連盟に届いたらしいの」
「ふむ、早速混沌として来たか。出だしは好調といった所か」
「そこで今回はアルカディア学園の生徒を、派遣部隊として出兵させるらしいわ。生徒達にはそれを『二軍実地試験』と称させてね」
「……試験とやらをするのは勝手だが、よりによって若い子等をわざわざ同族による醜い争いの場に放り出すと言うのか? 人間にも随分と非情な主がいるものだ」
「ほんとね、どっちが悪魔なんだか。ただクエストをするだけが魔法騎士のやる事だと思ったら、派遣任務も最近増えて来てるみたいだし、楽しさ通り越して疲れるわ」
「どうせ小賢しい人間の事だ。それなりの『理由』があるのだろう?」
「向こう側にお金がなかったらしいし、あの辺なら『魔法騎士連盟管理内区域』でもあるし、それも理由の一つじゃないかしら」
「ああ、仮に死んでも位置情報が割り出されて、かつ死者の魂も一定時間ならば保護されるという仕組みのやつか。我の与り知らぬ間に、随分と画期的な世になったものだ」
「その辺はなんだっていいのよ。要はお金よお金。高ければ強い人を送り出す。安ければ弱い人を送り出す。よりお金がほしい連盟としてはそれだけの話」
「だから『試験』と称して半端者を送り出すと? 実に醜いな」
「仕方ないじゃない。二軍に上がる為のテーマとして『死の恐怖を乗り越える』事が掲げられてるそうだし、三軍上がりの子達はその辺の認識が薄いんでしょうね」
「して、それがお前と何か関係があるのか?」
「今回の任務をするにあたって、リーダーは流石に一軍からのメンバーが派遣されるんだけどね、なんとそれが、私がそれのリーダー役に今回選ばれてしまったのよ」
「そうか」
「……随分とあっさりした反応ね」
「正直、だからどうなんだとしか言えん」
「相変わらず鈍いのねえ。私が『あの子達』と一緒に行動できる機会がようやく訪れたのよ。嬉しいと思わない?」
「あの二人はずっと三軍に居続けるから行動を共にできないのではなかったのか? 今回は二軍の連中がメインなのだろう?」
「お金がないと言ったでしょう? で、せめてもの人数合わせとして、どうしても三軍の面々も混ぜないといけなくなったらしいのよね。一軍のメンツを揃えたのは、こちら側の温情ってトコかしらね」
「ふむ、結局如何程に集まるのだ?」
「連盟の予想としては200人程で、その中で試験対象になったのは150人程。それに対し、向こう側の希望数は280人程」
「……人の世と言うのは中々に儚いものか。それにしても、相変わらずよく話を聞いてるものだな」
「聞いてるんじゃなくて、聴こえてくるだけ。私が悪魔であり、人間でもある限りね」
「我が悪魔でよかったとつくづく思いたくなる感想だな」
「目的は主に機械で構成された戦闘ロボットの鎮圧ならびに魔物討伐。――ま、大袈裟に言ったけど、結局やる事はいつものモンスター退治って事ね」
「……何故そこまでしてアルカディアの生徒にこだわる? 仮に一国の大事だと言うなら金に糸目をつけている場合ではないだろうに」
「さてね、お互いに『利がある』とかじゃない?」
「……増々付き合いきれんな。まあ俺は俺の好きなようにやる、お前も好きにしろ」
「今回は物分かりがいいのねえ」
「付き合いきれんと言っただろう?」
「ああそういうコト。――――じゃ、私は行くとするわね」




