あれーもしかしなくても怒ってる?
「――お疲れ様でしたプリス様。プリス様があの手勢を一挙に引き受けてくれたので、潜伏していたチームリーダーを探すのは容易でした」
「ふふん、ミュリアにとっては少々手こずる相手だったかも知れませんが、あの程度の輩どうって事ないですのよ。まあ多少策を講じてはいたようですけれども、所詮序列一位のワタクシにとっては小細工にも劣る悪あがきですわねっ!」
勝利の余韻に浸りながら、プリスとミュリアは学園内の敷地を歩き、ギルドハウスへと帰ろうとしていた。
アルカディア学園が誇る第一位魔法騎士が所属するギルドハウスという響きから、多くの者は『敷地が広大で優雅なイメージ』が必然的に浮かぶだろう。
「相変わらずのその自信、私達にとっては励みになります」
「ワタクシを倒したいのならもっと実力のある者を連れて来なくてはなりませんわね。まあ、この学園においてそんな輩が果たしているのかというのが、率直な疑問ですけれども? オーッホッホホ!」
プリスが高笑いをした所で、丁度ギルドハウス前へと到着する。
「まあでも、今日はいささか疲れましたわね。早くベッドで横になりたいですの」
「ですね。ただしかし……相変わらずというか、このギルドハウスも外からだと普通の一軒家と変わりませんね」
「ここに常駐しているのはワタクシとミュリアの二人だけなのですから、無駄に広くする必要もありませんわ。人数もワタクシ達含めて9人しかおりません事ですし、ギルドハウスを改築したり面積を広くする費用があるなら、装備やアクセサリの一つでもこしらえた方が遥かに有意義ではないですの?」
「……そうですね。おっしゃる通りです。ギルドとしての地位や体裁よりもあくまでも『強さ』のみに拘るその姿勢。このミュリア――真に感服致します」
* * *
――『テレスティアル・ヴァンガード』・ギルドハウス内――
自宅に着いた二人は早速荷物を下ろすと軽く一息をつき、今や吸い慣れた我が家同然とも言える空気の心地良さに包まれる。
「ワタクシもそれなりに一汗かいた事ですし、なんだかシャワーでも浴びたくなりましたわね」
「同感ですね」
「あらあら。でしたら先に浴びて来てもいいですのよ? ワタクシは別用もある事ですし」
「いえ、かの『聖域の門番程度たる私』が、プリス様を差し置いて先に浴びる訳には――」
「……『ミューリアス』ぅ?」
「は、はい! ここでは『あの事』は禁句でした……!」
「もう、全くですのよ。万が一にでも誰かが聞き耳を立てていたらどうするんですの? それでなくとも、アイツ等にはワタクシ達がここにいる事は内密にしておきたいんですのに」
「私とした事が迂闊でした……。ではお言葉に甘えて、お先に失礼します」
一階にある浴室へと向かったミュリアと、二階にある自室へと向かったプリスで一旦別れる。
そして階段を登り、廊下を歩き、自室へ繋がるドアノブを握るまでの間、プリスの顔は終始浮かなかった。
それも当然――――その脳裏によぎるのは、過去の『屈辱』ばかり。
「見てなさい……今のワタクシは、あの頃とは違うという事を証明してやるんですのよ!」
何かを振り切るようにして、プリスは勢いよくドアを開けた。
『やほープリティ。先にお邪魔してるよん』
『もうちょっと場所は選んだ方がよかったんじゃないかな? ここだと余りにもプライバシーの侵害という物が……』
『だってー外で待ってたら『ルル達』怪しすぎでしょー? それにほらほら、木を隠すには森の中ってよくゆーじゃん!?』
『うーん当たらずとも遠からずの表現だねえ……』
――――――――まず最初に、これは『夢』かと彼女は思った。
しかも良い夢ではなく『限りなく悪に近い夢』だ。目の前から聴こえてくる声も、彼女の耳には妙にぐわんぐわんと反響して聞こえた。
このギルドの長たるプリスには、自分の身に何が起こってるのか、一瞬だけ理解できなかった。
しかし、プリスにとっては今最も会いたくもあり、最も会いたくなかった『二人』の憎き人物。
「……な、な、なななな」
――故に、
「何してるんですのアナタ達はぁーーーーーーーーーっっ!!!???」
プリスの感情が爆発しない訳が、無かった。
『区切り所が見つからず今回は短めになってしまいました』
「ちょっとー前回といい今回といい、ルルの出番が全然なーい!」
「僕としては楽で助かるけど……」




