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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
3.グローリィ始動!!
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なんだー意外といけるじゃん


「いけない、3人とも扉の方に下がってて! 後は私とルルナでなんとかするから!」



 戦闘が目的なのは確かだが、それ以前にルルナが最も優先すべき『子供達の救出』をここまで来てしくじってしまっては何の意味もない。

 

 そしてリアンも彼女の心情をいち早く理解しているからこそ、自分達よりもまずは子供達の身の安全を何よりも第一にして行動した。

 

 その間に、紅紫に彩られた『竜のウロコ』と言う名の屈強な肉体が、ルルナ目掛けてまっしぐらに飛んで来る。

 見た目の大仰な素振りとは裏腹に、巧妙に翼をコントロールして的確に狙いを定める所は、高度な知能と器用さを持つ『竜』ならではの動きだった。

 


「むーすばしっこい……」

 


 対して、その攻撃を前線で一人受け持つルルナだが、いかんせん2体同時ではなかなか裁き辛く反撃はおろか回避をするので精一杯。むしろ生半可に攻撃を加えようとしてもあの強靭なウロコは上手く隙を突かなければ、ダメージを与えるどころか痛くも痒くもないだろう。

 


「あ、あれー? やっぱり一人じゃちょっと無理ぽい……?」

 

「ええ……ルルナぁ……。今更そんな事言うのって……」

 

「ま――まままま、まあまあ! いざとなったらルルのほn」「本気出したら不味いなんじゃなかったの?」

 


 

 

 と――――完全に釘を刺されてしまった。

 

 

 つまりは、序列通りの力で戦うしかなくなったルルナ。

 


「ぐ、ぐぬぬぅ……せめて力か速さのどっちかだけでも上げられれば、まだいけそうなんだけど……!」

 


 それだけで勝てる見込みがあるのも本来おかし過ぎる話なのだが、当然彼女には常識という概念が通じない。

 

 今の状況を他に例えるならば、兵士になりたての新米が成竜を相手にたった一人で挑もうとしてるものだ。それも二体も同時に。

 


「えーい悩んでてシカタナシ。当たって砕けろっ! とにかくまずは数を減らさないとね。よーし行くよっ! リアも援護任せたよ!」

 


 後ろで子供達が見守っている手前、今更退く訳にもいかない。ルルナは腹を決め、本気で三軍サードの実力で倒しに行く。

 

(竜の弱点といえばやっぱり『眼』だよね。で、雷竜の弱点属性は、当然『水属性』。リアは水属性も割と得意だったハズ……!)


 この竜を倒すには何といっても後ろで控える強力なリアンの魔法が必須である。その為にも、まずはリアンが的を絞りやすい地上戦に持ち込みたい所。――なのだが、やはり相手は翼を持つ竜。そう簡単には彼女の得意領域では戦わせてくれない。

 


「こんのぉ……!」



 いつまでもちょこまかと動く雷竜。そしてその俊敏さ故に回避する事も困難。そんな手も足も出ない事態にルルナはいい加減耐え切れず、自身の固有能力である【天性の勘】を発動させるしかなかった。

 


「出し惜しんでる暇はやっぱないよね! もう行くっきゃない――――リア! 水魔法の詠唱準備だよ!」

 

「うん!」



 リアンもルルナからいつ指示が飛んで来てもいいように、体内の魔力を高めたままのリザーブ状態で待機していた。幸い二体ともルルナに執心であり、リアンや他の子供に目を付ける事もない。

 そして今度は指示通り水属性の魔法を撃つ為に魔法陣を形成すると、そこから水のマナを体内生成させ、更にそれを武器であるロッドへと伝達させる。


 

「今のルルが補欠程度の力だからってぇ……」



 ルルナは自身から近い方に狙いを定め、敢えて接近する。

 すると彼女の予想通り、向こうは逃げる事なく迎撃態勢に入ってくれた。

 

 竜に人間と同じように言葉を発する知能は無い。だが、その非力な少女が易々と自分の得意領域に入って来る事自体、雷竜からしたら『舐めている』としか思えなかった。それに対し案の定、隙を晒しまくったルルナに『馬鹿め』とも。


 雷竜は翼の先端部にも生えているかぎ爪をまるで自らの腕の様に扱い、そのまま一気にルルナ目掛けて豪快に振り下ろす。


 ――だが、



「ふふん――――なめないでよねッ!!」

 

 

 その油断こそがルルナの狙い。

 


『!?』

 

 

 今までの動きからして回避は100%不可能だと高を括っていた雷竜の目が驚愕によって大きく見開かれる。


 

「へへー今度は『そっち』が隙だらけ、だね……!」


 

 ルルナは右手にマナをありったけ凝縮させると、そのまま迷いなく無防備になった雷竜のどてっ腹にパンチが炸裂する。

 それは一見ただのパンチでも、一点に絞った『水属性の一撃』は雷竜にとっては申し分ない威力だった。そして雷竜の体内外で循環させている電気は『水分』と言う名の異分子によってイレギュラー反応を起こさせる。

 


『グガがッ!?』

 


 肉体を傷つけられ、更に内部に侵入した水分は雷竜の電流循環を著しく乱れさせる。元々機動力があるからこそ、反面防御力は他の竜と比べて低い。だからこそ、ルルナは敢えてこちらから近づき向こうの油断を誘いつつ、その想像を超えた【天性の勘】で見事捉える事に成功した。

 


「リアー今だよー!」

 

「……『水のマナ』よ。私の呼び掛けに応えて、かの敵を貫いてっ!」

 


 杖から魔法を放つ際、足元の魔法陣から溢れるマナの出力を更に高める。そして、その力を出し惜しむ事なく、リアンは一気に『目標』へ解き放った。

 

 青に満ちた『水属性上級魔法・ハイドロカノン』はリアンの白髪を一気に逆立て、後ろで見ている少年達もその膨大な余波に、思わず顔を腕で遮る程だ。

 

 ――それだけの魔法をまともに浴びれば、どうなるかなどは明白だった。

 



 貫いた先にあったのは、全身の機能が麻痺した挙句、最後には生命を司る己の心臓さえも停止した一匹の空飛ぶ竜。

 



 ゆっくりと。だが確実に地に向かって落ちていき、やがてすぐ鈍い音と共に竜は息絶えた。


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