もうやだこの子
「僕達のような若輩者に、わざわざ救援して頂き感謝いたします」
「いやいや礼を言われる程の事はしてないさ。――ところで、君達はギルドに入ってるのかい?」
「はい。建てたばかりで、今は僕達4人しかいない弱小ギルドですが」
「成る程成る程。……ならば一つ提案があるのだが、もし君達さえよければ是非私達のギルドに入らないかね?」
――それは、まさかの交渉だった。
助けて貰うや否や、まさかこんな事を言われるとはルルナでさえも夢にも思わず、皆が驚いた顔をする。
「私達のギルドは新規で中々実力のあるギルドに入れず、致し方なく自分等でギルドを立ち上げるもなかなか実績を出せずに困窮している生徒達を対象に今集めているんだよ。今は『君達のような状況の生徒が多い』と聞くからね」
「たしかにそうかも知れませんね。いかんせん僕達のような三軍所属だと、練習すらもおぼつかないので……」
「そうだろう? だからこそ、今私達はそんな報われない生徒達に手を差し伸べているのだ。――どうだろう、私達のギルドならば装備やアイテムも充実しているし、上に昇りたいという気持ちが本物ならば尚更お勧めしたいのだが」
「ねーねー。ギルド名はなんて言うんですかー? さっきインテグレイトとかって言ってた気がしたんですけど」
「おっと失礼。私とした事が片手間で名乗るような不躾を……。そうだ、私達のギルドは『インテグレイト』と呼ばれるギルドだよ」
(やっぱり聞き間違えじゃなかったか……)
(昨日のアレ……だよね?)
そのギルド名に聞き覚えがない双子ではなかった。普段能天気なルルナもつい最近聞いたばかりで、思わず顔に出そうになってしまったくらいだ。
(ねえシャル。リアンって知ってたっけ?)
(いや――自分から調べてたりしてなければ、まだ知らないんじゃないかな)
(まだ内緒にしといた方がよくない?)
(そうだね。わざわざリアンを混乱させる必要もない)
彼の雰囲気や聞いた限りの話では、悪い話ではなかった。現に強さを求めるレイラもそのギルドに入っていたし、今のリアンにとっては絶好のチャンスとも言えたかも知れない。
「僕の一存だけでは決められませんね。リアンはどう思ってるの?」
「わ、私? 私は……」
いきなりの問い掛けに少しだけ彼女は悩んだが、すぐに答えは出た。
「……私が『今の私』でいられるのは、他でもないこの3人がいてくれたからです。……だから、私はこのギルドをとても気に入っています。いえ、むしろ『大好き』です」
序列最下位だった彼女が今ここまで強くなれたのは、他でもない双子のおかげ。だからこそ、彼女が【グローリィ】を解散する理由もなければ意味もなかった。
「だから私は、もう少しこのままでいたいです。ダメ……かな?」
「そんな事ないよ! リアが決めた事ならルルはそれについてくだけだからねっ!」
どこまでも素直な感情を見せる二人の豊かな顔を見せられて、察しがつかないラースではなかった。
「ふむ……君達の結束はそれなりに固いようだ。ならば無理に引き入れるのも私達の心象を悪くするだけだし、今回は立ち去るとしよう。その代わりと言ってはなんだが――」
諦めて立ち去る前に、彼の後ろにいた生徒はいつの間にか手に持っていた『戦利品』を双子達に見せつけていた。
「あー『風竜の角』だ! それ結構レアなのにー! 他にも色々持ってるー!」
「今回のアイテムは僕等が貰っておくよ。もし君達の考えが変わって、入ってくれるというなら、その時はこれらを全部差し上げよう。では、これにて失礼」
交換条件をダシにして、そのまま帰っていったラース達。結局の所、今回の戦闘はほとんど彼等が貢献した時点で権利はほぼ向こう側にあったから、どうこう言われる筋合いもなかった。
「さて……僕達も帰ろうか。ここにもう用はないからね」
――――
――
その後、ダンジョンの入口まで戻って来た一行は今日を振り返ろうとこれまでに手に入れた戦利品を確認する。――が、当然これといったものはない。
「しまった……。しかもクエスト放棄してなかったし……。僕等の序列は……よかった、8つ上がっただけで済んだみたいだ」
「アタシも序列は大して変わんねーな。……それにしても、今回は疲れたな。美味しいとこはあいつ等に全部持ってかれちまったしよ」
「ごめんねみんな。私がもっとしっかりしてれば、私達だけで倒せたかも知れないのに……」
「仕方ないさ。リアンはボスクラスのモンスターと戦うのは初めてだったんだし、僕等の注意力が甘かったのだって原因の一つさ。それに『目的のアイテムは手に入れられた』から、終わり良ければ全て良しさ」
その一言に、一行の空気がざわつく。
あの時確かにラースは全ての戦利品を持って行ってしまった筈なのに、シャルルの言う事はそれとは矛盾している。
「クエストの報酬や戦利品は、あの人達に全部持っていかれちゃったんじゃないの?」
「そうだよ。『報酬』はね」
「相変わらずシャルはちゃっかりしてるよねー。あの時『わざと攻撃した』時点でもしやと思ったけどさー?」
事の真偽を知ってるのは周りの表情からしてルルナだけ。
「……ばれるか心配だったし、何よりちょっと反則だったけどね。成功率は85%程度だったけど、一時的にLUKだけをフル解放して『スティール』した甲斐があったよ」
シャルルが若干バツが悪そうに懐から取り出したのは、翡翠色に輝いて綺麗な雫の形をした一行が求める物。
「おいおい……それってまさか、な?」
かくして、アムの嫌な予感は的中する。
――――それは正しく、『風竜の雫』だったのだ。
――
『はい。という事で、なんとか無事ウィンドドラゴンを狩り終えられました。シャルルがなんだか悪人キャラになってしまうのではと若干危機感を募らせてるワタクシ目ではありますが、もうしばらくはこのまま様子を見ていきたいと思っています。ご了承をば』
「以上、久しぶりの作者のコメントでした……と。ささ、僕達も疲れてるし早く帰ろう。いやー悪人呼ばわりされちゃったよ。参るねー」
「全然参ってないだろー!? それにコイツに今一番振り回されてるのは多分アタシだよな!? 早めになんとかしてほしいんだけどねっ!?」
「まあまあアムっち。どんまいだよ……」




