レイラに秘められた将来性って?
――アルカディア学園・実戦訓練用疑似フィールド施設――
この日は午後から月に一度行われる実戦自由演習の日だった。
この自由演習では、入って来たばかりの生徒や三軍に常駐してばかりの生徒は数少ない疑似フィールドでの練習が出来る機会でもあった。
本来ならばすぐにでもクエストに出発して、序列を上げるポイントを稼ぎたい所。しかし魔法騎士としての行動ができるのは基本的に全ての講義や授業が終わってからで、それまでは大人しくしているしかない。
訓練用の疑似フィールド施設が使用できるのは本来、二軍からだが、今ここにいるほとんどの生徒は三軍ばかり。故にいつもとは違う雰囲気がアルカディアの生徒達を包み込んでいる。
『違うっての。ここはこうやって――』
『もうちょいコントロール良くなると、鳥系のモンスターにも上手く魔法当てれんじゃない?』
慣れない手つきの生徒に教えてやっているのは二軍に在席する生徒達。一人や二人の教師だけでは教える範囲に限界がある。だから大概は小規模のグループに分かれて実力が高い生徒を優先的にリーダーにして『パーティのいろは』を教え込んでいるのだ。
そして双子達も二軍の先輩生徒に混じって基礎的な魔法の部分からモンスターとの戦いに関わる実戦的な要素を熱心に聞いている。……『ふり』をしている。
「おお、君達筋がいいな。ちょっと教えただけでモンスターとそれなりに戦えてるね」
「本当ですかーじゃあルルもっと頑張っちゃいます! 今日はいっぱい教えて下さいねっ! 先輩!」
「はははー君みたいな可愛い子に言われると、俺もつい熱が入っちゃうなあっ。よーし次は――」
(これが真の悪魔……)
(えーなんでよー変に黙ってたって逆に目立つじゃん?)
(それもそうだけど……。あまり悪乗りしすぎて他の生徒から反感を買わないようにね)
(わかってますよーだ。……あれ? ねえシャル『あれ』ってさ)
(ん……あれはもしかして……?)
腹の中で双子同志でしか話せない内容の会話をしている中、双子はとある『生徒』に気付いた。
(ちょっと気になるね。一旦席を外そうか)
(え、どうやって?)
(『こうやって』だよ――)
おもむろにシャルルは教えていた二軍の生徒に話しかける。
「すみません、ちょっとお腹の調子が悪いので……」
「おっと、緊張しすぎたか? まあよくある事だから気にすんな」
「看病はルルナに任せるので心配はいりません。じゃルルナ行こう」
「え? ええ、ああうん。じゃあちょっと行ってきまーす?」
いかにも体調の悪そうな態度をしながらこの場を去っていく双子――――と見せかけて、隙を見て茂みに隠れてこっそりと狙いを定めたとある生徒に近づく。
「やっぱりレイラ……だね。あのグループを教えてるのは一軍の人達かな? ちょっと『アルカディアライン』で調べてみよう」
「シャル持ってきてるんだ」
「例によって僕用に改造したけどね」
「もうやめたげてよう……」
「むしろ今までつけてないのをよく指摘されなかったと言うべきか。……えーと。じゃあの一軍の人に照準を当てて……と」
ルルナのドン引きも全く意に介せずに、シャルルは淡々とグループのリーダーらしき生徒に狙いを定める。
――リッツ。魔法騎士序列346位。一軍在席中。
◎種族:人間
◎性別:男性
◎所属ギルド:インテグレイト
◎使用武器タイプ:ハルバート、槍
Lv.38
STR(腕力、攻撃力) B+(B+)
VIT(体力、防御力) B (B+)
AGI(敏捷、俊敏性) C (C)
INT(魔力、知力) E (D-)
RES(抵抗、免疫力) F (E)
DEX(器用、制御力) D+(D+)
LUK(第六感、直感力)C (C+)
HP:2854
MP:169
属性適応値(C標準値)
火属性=D
水属性=B
風属性=C
地属性=C
氷属性=B
雷属性=C
光属性=B
闇属性=E
無属性=C
「――成る程ね。じゃあどれどれ、レイラはっと」
「ねえシャル。人間観察してるみたいで趣味悪いよ」
「失礼な。これは単なる情報収集だから」
の割にはいつもより生き生きとしているじゃないか、と思ったルルナだが、やはり口には出さない。
――レイラ。魔法騎士序列15646位。三軍在席中。
◎種族:人間
◎性別:女性
◎所属ギルド:インテグレイト
◎使用武器タイプ:杖、短剣
Lv.19
STR(腕力、攻撃力) E (C)
VIT(体力、防御力) D (C+)
AGI(敏捷、俊敏性) D+(B)
INT(魔力、知力) C+(B+)
RES(抵抗、免疫力) C (B)
DEX(器用、制御力) C-(A+)
LUK(第六感、直感力)C+(B)
HP:1078
MP:269
属性適応値(C標準値)
火属性=B
水属性=C
風属性=D
地属性=C
氷属性=C
雷属性=B
光属性=D
闇属性=B
無属性=B
「成る程成る程。中々いい一軍騎士と三軍騎士の比較データが……おや?」
「どったのシャル?」
二人の能力を見比べて、シャルルはある一つの共通点に気付く。
「あの二人……よく見ると『同じギルド』に所属してるじゃないか」
「うそホント? 見せて見せてー」
「ルルナも結局興味があるんじゃないか……」
当然だが、やはりルルナが見ても二人の所属してるギルドは同じだった。
「へえこれは面白い。ギルド選抜で行われてるスレイヤーズマッチはこのギルドは近年、軒並み上位に入ってるみたいだね。そんな優秀なギルドにレイラが入ってるってのは彼女の将来性を買われたって事なのかな?」
「すごーい。『将来ゆーぼー』ってヤツ? ……の割には」
彼女のギルドが中々のギルドであると知り、ルルナはよりレイラの一挙手一投足に目を見張る。
「なんだか、表情が晴れてないねレイラ。緊張してるのかなー」
「どうだろうね。やろうと思えば彼女の考えてる事を知れるけど、やってみるかい?」
「だから『そーゆートコロ』ねシャル! たしかにリアンには酷い事したけど、軽々しく乙女の領域にずかずか踏み込まないのっ!」
「……君にしては珍しくまともな事言ったね。まあ失礼千万なのは分かってるし、そんな事はしないよ」
表情こそ浮かないが、その動作はどれをとっても至って真剣。
その後も特に目立って変な事もしていなく、ずっと覗き見をしていても趣味が悪いだけなのでどちらが言うでもなく双子は立ち去っていった。




