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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
3.グローリィ始動!!
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リーシャってただ者じゃないっ!?

 ナマズ型のモンスター『ラージシルーラス』は突如横から放たれた魔法で真横に吹っ飛ばされ、3体とも一瞬で息絶えていた。



「な……だ、誰だよ!」



 3人が目を見張った所に立っていたのは、指先から魔法を放っていた白髪の少女。

 初めは遠くにいて薄暗いダンジョンの影によって顔を知る事ができなかったが、双子達に近づいていくと次第にその表情は鮮明に映ってくる。



「あれ……もしかして?」



 それはルルナにとっては『数日ぶり』となる、あの少女との再会だった。

 


「久しぶりねルルナ。三日ぶりだからそうでもないかしら」


「リーちゃん!?」

「……ルルナ。僕にも分かる様に説明を」

「えっとね、この間学園の外れで偶然会ったの! そしたらすぐお友達になれたの!」

「お、お友達……。またそうやって勝手に……」



 シャルルが苦い顔をする訳は、ルルナが誰かと仲良くなる事よりも、それによってまた以前のようにうっかり『漏らしてしまう』事故を心底心配していたからだ。

 仮に今まで秘密を言っていなくとも、ルルナの事だ。いつ口を滑らすか分かったものではない。

 ルルナが知らない誰かと仲良く話すのを見れば見る程、シャルルにとっては心臓の悪い光景が延々と続く。



「おいおい、敵はまだいるんだぞ。無駄口叩いてないで早く――」



 本来ならばこのまま残りの敵を倒して、こんな面倒な用事など終わらしてしまう筈だった。




 ――――しかし、双子の『不運』はまだまだ続く。




「お、おい。あれ、って……」


 アランの言葉が止まり、途切れ途切れになる。そして口を魚のようにパクパクさせ、呆気に取られた彼の視線は既に倒した筈のエネミーに向いていた。



「あらあら……あれは『突然変異種』? ちょっと当たり所が悪かったかしら?」



 体内に潜むモンスターのマナが暴走し、夥しい量のマナを噴出させる。身体の色も水々しかった色から燃えるような赤に変わり、ギラついた瞳孔の開き切った瞳はそれだけで威圧感を放つ。



「お、おいおいおい! じょじょ冗談じゃねーぞ! あの魔力量、A+以上の強さはあんだろ! しかも三体って! 俺等なんかの能力じゃ全滅しちまうぞ!?」


「逃げるんですか?」


「たりめーだ! お前ら三軍の連中と一緒にやってて勝てるわけねーだろ!? わりーけど俺は先に逃げっからな!」



 言うだけ言ってアランは結局逃げてしまった。つまり残ったのは双子とリーシャの三人だけ。



「仕方ない、僕等も逃げようよ。見た所リーシャさんは制服からして一軍ファーストのようですけど一人でなんとかなるんですか?」


「うーんどうしようかな?」



 リーシャが悩んでいる間にも、敵はじりじりと詰め寄る。いい加減腹を決めないと逃げる事も適わずこのまま死あるのみ。仮に死亡したとしても朽ちた肉体はその場に【ソウル】となって残るが、誰からも発見されずに三日程が過ぎると【ロストソウル】となり、真の死を迎える事となる。



「――貴方達は戦わないの?」

「へ? 何を言ってるんです? 僕達は三軍で……」

「ふーん。それで『誤魔化せてるつもり』なの?」

「な……」

 

 言葉に詰まるのも無理はなかった。まるで『全てを見透かされている』ようなリーシャの妖しい眼光。そんな彼女の視線と問いに、シャルルの心臓はどきりと跳ねる。



(ちょ……ちょっとルルナ……。もしかして『正体』を言っちゃったのかい?)

(し、知らないよー! ルル何も言ってないよー!)


「別に慌てなくたって大丈夫よ。私はそういうのが『視える』だけだから。それに――ほら」



 先の読めない応酬を繰り広げている内に、遂にモンスターの一匹が痺れを切らし突っ込んで来た。リーシャはただ不敵な笑みを浮かべながら黙って見ているだけで、何もしない。



「ほーら、力を出さないと死んじゃうわよ?」

 

(――くそ!)



 仕方なくシャルルは力を出した。その瞬間、衝突する寸前、手持ちのダガー一本で真っ二つになるイレギュラータイプの『ラージシルーラス』。読みが見事に当たって喜々とした表情のリーシャとは真逆に苦々しい顔をするシャルル。



「やっぱり『当たり』みたいね。……ってあら、どうやら突然変異種のマナの濃い臭いにそこら辺のモンスターもつられちゃったみたいね、ほら頑張って!」


(ルルナ、君はとんでもない人と知り合っちゃったみたいだね……)

(な、なんかルルの所為にされてるー!?)



 次から次へと沸きだすモンスターに双子はリーシャと会話をするどころではなくなり、仕方なくその処理に追われる。が、自分等が軽くあしらえばあしらう程にリーシャは満足気な表情をする。



「まだまだね。貴方達は全然本気を出してない。精々『十分の一』がいい所ね」


「……貴方はどうして僕等の力を知ってるんですか。僕等の本来の力は二重三重にはった厳重な魔法で隠しているんです。少なくとも学園の一軍くらいの実力では見破るなど不可能な筈です!」


「私の事なんてどうでもいいのよ。やっぱり途中で気になって後を付けた甲斐があったわ。じゃ、久しぶりに楽しめた事だし――」



 いつの間にか手に握っていた禍々しく装飾された、身の丈以上の長さの槍をリーシャは軽々と振り回す。

 そして一閃の後に残ったのは、突然変異種もろとも全て両断されたモンスターの残骸。



「お楽しみの続きは後に取っておくわね。また逢いましょう二人とも。その内、ね」


「ま……待ってください! 僕達の事はお願いですから――」


「別に誰にも言わないわよ。ギルドとかにも入ってないし、そもそも話す人なんて私には全くいないから」



 それだけ言うと、軽やかな足取りのままに去ってしまう。突然現れ、突然去った彼女の姿が完全に見えなくなるまでの間、双子は一言たりとも発さなかった。


 

「やっぱり不思議な人だねー。話す人がほとんどいないって言ってたのに、お友達になってくれたルルって、もしかしてすごくラッキーだった!?」

「そんな悠長な事を言ってる場合じゃないよ! ああ……不安だ。この僕が全く読めない人だなんて……。ものすごーく不安だ……」

「まあまあ、なんとかなるっしょー。じゃ帰ろ、シャル」

「こんな時まで楽観的なその性格が今だけ羨ましいよ……」

「えへへーシャルが珍しく褒めてくれたー」

「褒めてないから」

 


 辺りに人も魔物もいなくなったダンジョンに立つ二人。結局碌な収穫も得られないまま、自分達の部屋へと引き返す事になるのであった。





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