今度は不思議な人とお友達?『★』
――アルカディア学園・ギルド管理課――
レイラ達と戦ってから次の日。
リアンがあの一言を発してから、彼女の中で何かが変わった。
何かとは言っても、別に強力な武器を手に入れたとか、学生にしては高度な魔法を編み出したとか、そういった類のものではない。それでもあえて言葉に表すならば彼女の『瞳』だろうか。
「リアなんだか積極的になったね。やっぱり昨日一緒に戦って正解だったんじゃないかな? シャルはどう思うの?」
「ま、いいんじゃないかな。彼女が自らこうやって管理課にまで足を運んで、申請書に進んで記入をしてる。僕としては願ったり叶ったりだしさ」
「……アタシゃ別にギルドでもなんでも構わねーんだけどさ。これから何か目標でもあんのか? リアンを一軍まで上げるのはいいとして、もうちょい具体的な何かがほしいっていうか……」
すると、丁度アムが不安を零していた所で、今までカウンター側を向いていたリアンが振り返った。
「……あのねみんな。今から丁度一ヶ月後に行われる『ラグナロク』って知ってる?」
「ああ……そういえばそんなものあったなあ。アタシは去年から出てないし、今年もすっぱり諦める気でいたから、完全に頭から抜けてたけども」
「僕もすっかり忘れてたね。アレ自体には学園の序列変動には全くの無関係だって聞いたし、装備やお金には全く興味がないし、今の僕等には大したメリットがない」
「ねーねーみんなで納得してないでルルにも説明してよー!」
「――ほら、あの『張り紙』だよルルナ」
「んー?」
どれどれ、とルルナが訝し気な瞳でギルド管理課の壁に貼られた一枚のポスターに近づく。
――――今年も『バトルロイヤルの大祭典・ラグナロク』の季節がやってきた!
今回は上位入賞者だけでなく、なんと参加した生徒全員にはもれなく『参加賞』が配られる! 中身は参加してからのお楽しみ!
普段実力が発揮できない生徒や、運に恵まれない二軍や三軍の埋もれた強者達もこの機会に上位に入って、是非とも超強力な装備や高ランク素材をゲットしよう!
――アルカディア学園・運営より
「ばとるろいやる……らぐなろく? なにこれ?」
「僕が以前見た学園の資料によると、本来は交流目的で図られたオープン戦みたいなものだったらしいけどね。今じゃ強力な装備や賞金が貰えたりして、今じゃアルカディア学園の一大イベントになってるらしいよ」
違和感丸出しにして、ポスターに頭に無数のクエスチョンマークを浮かべるルルナの背中を見かねて、シャルルは彼なりの補足を加えた。
端的に言えば、大抵の学園には存在する『体育祭』と受け止めればいいだろう。
「アタシが最後に出た時も、手に入れられたアイテムがかなり破格だったからなあ……。そいつらの為に『下剋上』を狙ってる生徒は今でも相当多いだろうね」
「うーん…………。よく分かんないけど色んな人と戦えるんならルルはそれでいいよ! じゃ、もう行こ!」
「あ……ごめんまだ手続き終わってないの。もうちょっとだけ待っててくれる?」
「えー!? じゃあここタイクツだからちょっとお外行ってくるね! 終わったら教えてねシャル―!」
「……相変わらずルルナは僕をなんだと思ってるのか……」
そう言ってルルナは周りの呼び止める声にも耳を貸さず、脱兎のように管理課から出て言ってしまった。
* * *
「やっぱルルにはじっと待ってるのは耐えらんないもんねーっと。えっと、この辺お散歩してたら終わるかな?」
辺りには特に何もなく、そこらを歩いても雑木林や茂みが続くだけの緑々しい景色だが、ほどなくしてやがて視界に見えて来たのは小さな泉だった。
「およ……歌声? 近くで誰か歌ってるのかな? すっごいキレイ……」
きょろきょろと見渡すと、声の主はすぐに分かった。
ルルナを背にして優雅に立つ、一人の少女らしき姿。リアンと同じような真っ白な長い髪を時折吹く風に乗せて、鼻歌も交えながら澄んだ旋律を奏でる。
「え、ちょ……! あれってモンスター!!?? あっ……」
自分の上げた声が思ったよりも大きくなってしまった事に気付く頃には、既に遅かった。
まるで白髪の少女の唄を観客のように、ぐるりと囲んで静かに聞いていたモンスターはルルナの声に驚いてしまうと、そのまま蜘蛛の子を散らすように何処かへと去ってしまった。
「あら……?」
「あ、ごごごごごごめんなさーいッ!! 驚かすつもりじゃなかったの!」
「ああいいのよ別に。それにしてもよくここを見つけられたわね。ほとんどの生徒が知らない場所だから、ここ」
「とっても空気がおいしくて、綺麗な場所ですね! ってか、そのカッコてもしかして一軍?」
「そうね。私は別に一軍だの二軍だの全然興味ないんだけど、とある人が『魔の恩恵をより強く受ける為には666位になっておくのが一番いい』って言って聞かないのよね」
「666位! すごいゾロ目! じゃあ一軍の中でもかなり強い方なんだねー!」
「強さも別にこれと言って意識はしてない……のかな? 私もちょっとした用事でこの学園にいるだけだからね」
「へーそうなんだ。あっ私ルルナって言うの! よろしくね!」
初めて会うにも関わらず、ルルナは持ち前の明るさで満面の笑みを見せながら手を差し出す。
それが目の前の少女にとっては余程おかしく映ったのか、不意にカラカラと笑い、目尻にうっすらと溜まった涙を指で拭う。
「あ……あれ? ルルなんだか変なコトしちゃった……?」
「ふふっ、いいえ何も。……そうね。これも何かの縁なのかしらね」
先の笑みの余韻を残しながらも、少女もルルナと同じく手を差し伸べ――互いの希有な出会いを祝福し合った。
「私の名前はリーシャ。――よろしくねルルナ」
「うん! こちらこそっ!」
新しい話を考えてたり色々してたら気付けばこんなに時間が……猛省します。




