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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
2.ギルドを作るんだってさ
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みんなとの連携を掴もう!

 ――アルカディア学園・疑似森林フィールド――




「じゃあアムには早速で悪いけど、4人揃った事だし、明日に備えての簡単な連携をシミュレートしていこう」

「時間経つのは早いよねー。模擬戦まで後2日しかないんだもんね」


 ルルナの言う通りだった。

 いくら4人揃ったとは言っても、何しろ今しがた出来上がったばかりの急造も急造の即席パーティ。

 個々のおおよその能力は把握してても、それを互いに連携させるとなると話は全く変わって来る。

 午前中の講義を受け、その後の今や日課となった装備の点検やアイテムの合成などはすっかり板につき見事な手前で片づけてしまった双子一行は空いた自由時間を使って、学園の施設として用意された訓練用の特殊フィールドに足を運んでいた。

 

「すごいねシャル! 学園の中にもこんなハイテクな設備があるなんて! これならわざわざお外に出なくても色々勉強できそうだね!」

「でも所詮訓練は訓練。疑似フィールドに慣れすぎると、実戦時の怪我や最悪死のリスクに対しての危機が薄れるだろうし、ずっとここに籠りっきりって訳にはいかないさ」


「アンタら本当対称的だね……。そういやあんた達さ、ギルドに申請しなくてもいいのか? 他にやる事があんならアタシが代わりに申請してきもいいけども」


「手続き関連は明後日の模擬戦が終わってからにするよ。リアンがやる気になってる以上、僕等も明日の戦いで無様な姿を見せたくないしね」


「……みんな、ありがとね」


「はいはい喜ぶのはリアの幼馴染であるレイラの鼻っ柱をへし折ってからねー」

 


 ルルナの言い方だけ妙に憎しみが籠ってるのは敢えて口には出さない他のメンバー。当然知り合ったばかりのアムは事情背景を知らないから、「何の事やら」といった表情をするだけに留まる。



「陣形的にはアムとルルナが前衛。僕が中衛。リアンが後衛って形になるけど、それで問題ないかな?」



 まずは全体的にバランスを考慮した2:1:1の割とオーソドックスな陣形で組もうとするシャルルの提案に誰も意を唱える者はいなかった。

 


「てかさ、シャルルとルルナは能力的には本来余裕でトップクラスの実力持ってんだろ? 目立てない事情はひとまず置いといてさ、もうちょいステータス上げられないの?」


「序列通りだと本来このくらいの実力が妥当だからね……。本当のいざって時には一時的に能力を上げるかも知れないけど、基本はこのステータスで戦うと思う。……これも僕等の学園生活がかかってるんだ、どうか許してほしい」


「んでもアタシもリアンも、このまま本格的にパーティ組んで戦ったら二軍セカンドくらいなら普通に上がるぞ? そんときに二人がそのままの序列で居続けるのは無理があるんじゃないのか? 本格的なスレイヤーズマッチになれば『控えも含めて9人は必要になる』んだからな」


「本格的に人数が集まって来たら僕とルルナはクラフター方面でいくさ。専属クラフターがいるのはこの界隈じゃ割と当たり前らしいし」



 ――成る程、そう来たかとアムが腕を組んで思い耽る。


 そうこうしている内に、森の奥から現れたのはゴブリンを初めとした数体の初級モンスターだ。

 最前列のアムは大斧を構え、ほぼ同列に並ぶルルナは戦闘用のグローブ、後方のシャルルは投擲用のナイフ、更に後方のリアンはロッドを構えて素早く散開した。

 


「リアン、飛行タイプのモンスターは物理組じゃ相手にしづらいから極力頼んだよ」


「うん、分かった!」


「ルルナは突進役のアムの周りに気を遣うんだ。僕もアムを中心にサポートするから」

「おっけ!」



 一番手前にいたゴブリンをアムが一撃で仕留めると、続いて奥の敵をまとめて薙ぎ払おうとする。

 だがその前に、既に攻撃体勢に入っていた鳥型モンスターをリアンの初級魔法で撃ち抜き、モンスターの群れはシャルルの投擲ナイフによる牽制でひるませる。


 

「ナイスサポート! 後はアタシに任せな!」



 豪快にフルスイングしたアムの攻撃で3体いたモンスターを斬り裂くと、真っ二つになってやがて全ての敵が沈黙する。

 初戦闘にしてはそれなりの連携を組み立てられたようだった。

 


「ぶー。ルルなんもしてなーい」


「いやいや、あれくらい本当はアタシ一人で全部片づけなきゃ。あの程度の敵でみんながフルに動いてたら、余力がほとんどないって言ってるようなもんでしょ?」



 アムの言い分も最もである。

 今相手にしていたのはほぼ初心者用に設置された初期モンスターばかりで、どれも一撃で仕留められなければ命などいくつあっても足りない。



「もう少し奥にいけばもっと強いモンスターが配置されているみたいだね。この辺でちまちま相手にしてても意味がないから先を行こう。リアンは大丈夫?」


「うん平気。でも……アムってとっても強いのね。後遺症がまだ残ってるだなんて、嘘みたい」


「膝と腰をもろにやっちまったからな。これでも当時の半分以下しか実力を出せてないし、本気を出すと身体のあちこちが痛いからいまいち踏ん張り切れないんだ」



 一見、軽々と動き回っているようでも、本人は全然納得していない様子だった。

 自分が今よりももっと戦えてた日々を思うと尚更に歯痒い気持ちがあるのだろう。


 

「いいから早くルルにも戦わせてー! ほらほら先行っちゃうよー!」



 急かすルルナにみんながため息混じりに笑うと、来るべき明日に備えて一同は再び走り出す。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「いたよシャル! アイツがここのフィールドボスだね!」

 

 ルルナが指差した場所にいたのは、とある一つの植物が魔力によって変異した末に凶暴化した『イーヴィルプラント』と呼ばれるモンスターだった。

 そして互いに存在を認識し合った時点で戦いは既に始まっていた。

 地面から一気に生えて来た数本の触手は最前列にいたルルナをがんじがらめにすると、一気に自らの養分にしようと高く持ち上げる。

 


「ぎゃあーアムちゃん助けてぇ―!!」

「……ったく、油断しすぎだっての!」


 

 続けて駆け付けたアムの斧で茎を切断すると、力と支えを失った触手はだらりと垂れ下がりルルナは拘束からひとまず逃れた。


 

「ふええ食べられるかと思ったー。アムちゃんありがと!」

「ぼさっとすんな! ほら次来るぞ!」

 


 アムの怒号で正面に向き直ったルルナは、またもや襲い掛かる触手に次は巻きつかれまいと紙一重のタイミングで回避する。

 しかしルルナの武器は基本グローブでそれを用いた格闘戦がメインだ。アムの斧と違い、グローブで触手を斬り裂くのは少々無理がある。

 魔法にも様々な属性があるように、物理属性にも大まかに分けて打撃、斬撃、刺突の三属性が存在し、イーヴィルプラントの場合は斬撃が基本的な弱点となるが反対に打撃系はダメージは通り辛い。

 


「おい植物野郎、アンタの相手はアタシだ! ――さっさと『こっち来なッ』!」

 


 斧の派手に振り回しながら柄を勢いよく地面に突きつけると、これ見よがしにアムは指をくいくいと引き付けて『挑発』する。

 己の身そのものを盾にするタンクと呼ばれる前衛では敵を引き付ける行為は決して珍しくはない。むしろ強大な敵であったり連携の取れた相手では必須行為にもなって来る。

 


「僕等は基本単独行動だから見る機会があんまりなかったけど、ルルナも覚えておくといいよ。ああいった『挑発特技プロヴォーク』は煽りの言葉に魔力を込めた魅了魔法チャームスペルの一種でもあるんだ。ただの言葉遊びをしてるんじゃないからね」

「あ、本当だ。なんだかアムちゃんに対してキレてるみたいに見えるね」

 


 怒りに駆られたモンスターは力の限りアムを執拗に狙うが、怒り狂った思考では命中率は大きく下がりアムもその分動きを読みやすくなる。

 とは言え、攻撃力そのものは怒りで上がってしまっているから油断禁物だ。

 


「リアン、火属性の魔法はいけるかい?」


「うん! 中級程度なら大丈夫!」



 リアンが瞳を閉じて詠唱を始めると、前方に魔法陣が描かれ始める。その様子に気付いたイーヴィルプラントは触手を使って妨害しようとするが、ルルナが足止めしてアムはひたすらに攻撃を続け、敵側に狙いを定めさせない。

 


「ついでに動きも鈍くさせとくよ――『鈍化魔法スロウ』!」

 


 シャルルが放ったのはデバフスペルの一つである鈍化魔法。これによってイーヴィルプラントの動きを更に抑制させて、反撃の機会を完全に失わせる。

 そして豪快に斬り裂いたアムの後に続いたのは――――


 

「――行きます! 貫いて――『フレイムアロー』!」



 詠唱が完了した魔法陣の中心から飛び出したのは、炎に包まれた一筋の軌跡。

 身体のど真ん中目掛けて撃ったリアンのフレイムアローはイーヴィルプラントを貫くと、やがて力無く本体ごと崩れ落ちて消沈する。

 


「や……やった!」

 


 双子達が学園を訪れてから、およそ3週間。初めて三軍相応の戦力で目標を撃破した瞬間でもあった。

 ルルナは手柄となったリアンにダッシュで近寄るとそのまま抱き寄せ、シャルルはアムとハイタッチを交わす。

 


「……でも、アムの言う通りだね。この敵くらいではそうそう喜んでもいられないよ。明後日に控えたレイラ達との模擬戦ではもっと激戦は予想される。その時の鍵になるのは…」

「大丈夫。……私頑張るから」


 

 あくまで今回の戦いは『練習の練習』なのだと、リアンを中心に強く言い聞かせる。

 勿論それは他の誰よりも自覚してるのだろう。この程度の戦果で勝利に酔いしれたりするリアンではなく、むしろ真の戦いはこれからだと強い意志をもった瞳で周りに訴えかけていた。


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