表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6週間家族  作者: marron
57/60

話し合い


 子どもたちがキャンプから帰ってきてから一度、ウィリアムは我が家に置いてあったバゲージを取りに来た。

 その時、もう一度私はウィリアムと話すことにした。とにかく向こうの家が何なのか分からず、非常にもやもやしたからだ。


 向こうの家の人は、ウィリアムのママの知り合いの人らしく、元々ママは我が家と向こうの家を3週間ずつにすることを勧めていたらしい。だけどウィリアムが我が家に6週間に決めたのだ。


 私の憶測では、ウィリアムはウチに来る前に「子どものいる家のほうが楽しそうだよな」とノリで我が家に来ることに決めたのではないだろうか。

 だけど、向こうの家は民泊ということもあって「声をかけてきたのになぜ泊まらない?」みたいなことになっていたらしい。それでウチに来る前に泊まってきたようだが、その時に“民泊”の気軽さを味わったのだろう。

 普通の家庭と単なる民泊を比べて、連日連夜ゲームをしたいウィリアムにとって居心地が良いのはどちらか、早い時点で分かっていたに違いない。それを6週間、ウィリアムは頑張って耐えていたのだろう。


 それから私は、どうしても言いたかったことを伝えることにした。

「我が家に滞在中、嫌な思いをさせてしまって本当にごめんなさい。私はあなたの日本のお母さんになりたかった。だけど、私は悪いお母さんだった。ごめんね」

 それに対して、ウィリアムはパソコンの翻訳機能で答えてくれた。

「マロンは間違っていない。あなたは正しいことをした」

 比べれば、向こうの家の方が居心地が良いことは確かだけれど、小栗家の居心地だって悪くないと言ってくれた。


 言葉は通じないけれど、今は翻訳機能がスマホにもパソコンにも付いていて本当に便利。勿論変な訳もあってすごく言葉を選んでもどかしいこともあるけれど、それでも、ゆっくり、私たちはお互いの気持ちを話すことができた。


 話し合うことは必要。

 すれ違う時ほど、必要だと思う。

 そんな時、ウィリアムは私のことを嫌わないで、話しに応じてくれてすごく嬉しかった。この子はこういうところが本当に良い子だと思う。


--- ---


 話し合い(?)をしているとき、私の涙が出てきてしまったら、ウィリアムはすぐに紅茶を淹れてくれた。それは彼がネットで調べて前々から買いたいと思っていた柚子の紅茶で、やっと見つけたものだった。彼はこれを見つけた時「僕は柚子が好きだ。マロンは?」と聞いてくれて、「私も柚子、好きだよ」と答えると「きっと良い香りだよ」と言いながら、私のために買ってくれたものだった。ウィリアムと2人で飲むためのお茶を買ってくれたのは、彼の心遣いだよね。

 いつもは私がお茶を淹れるけれど、この時は何も言わずにウィリアムがさっと紅茶を淹れてくれた。良い香りと紅茶の温もりはとても優しかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ