僕の名前はまさるです。ゆうではありません。
「フゥー今日もどうにか自称魔王を倒せたよ」
一人の男の子が白い犬を撫でながら一息ついている。
「ポチ戻っていいよ」
男の子がそう言うと指に吸い込まれるように、消えて行った。
「よし!終わったし帰ろうかな」
男の子が何もない空間を手で開く動作をすると、日本の見慣れた住宅街が開かれた隙間から見えるではないか。男の子が今いる岩山の空間から、開かれた隙間を通って住宅街に戻ってきた。
「明日も学校だから早く寝よっと」
「社真央ちゃんが迎えにきたわよ」
二階で学校に行く準備をしていると、一階から母親の大きな声が聞こえてきた。どうやら隣に住む、伊世家真央ちゃんが呼びに来たようだ。
明るく元気な僕の幼なじみだ。
「社遅いよ」
「ごめんごめんお待たせ」
「じゃ行こっか」
小学校の時から真央ちゃんが呼びに来て一緒に学校に通うのが僕の日課だ。
僕は今高校生二年生なので長い事一緒に登校している。何故か今だに手を繋いでだ。小学生ならまだわかるが、付き合ってもないのに高校生にもなってこれは恥ずかしい。何回か辞めようと行ったが、その度に
「社は嫌なんだ、毎朝迎えに来てくれるこんな可愛い幼なじみと手を繋ぐのが」
と毎回怒られるので諦める事にした。
学校までは割と近く、地元の友達は大体皆この高校に通う。皆小学校からの幼なじみなので、毎朝こんな感じに
「ゆうちゃん相変わらず真央とラブラブだね」
「ゆうくんと真央はいつも仲良いよね」
などとからかわれるのだ。
それなのに真央ちゃんは気にした様子もなく、そうでしょと皆に返事を返している。
ちなみに何故かゆうちゃんと呼ぶのは男子が多く、ゆうくんと呼ぶのは女子が多いが、僕の名前はゆうではない優だ、優社だ。
それなのに優と呼ばれるのだ。
ちゃん付けや君付けは、僕の身長が158センチと低く顔も童顔だからしょうがないと、真央ちゃんに言われる。それと真央ちゃんからは可愛いとも言われるものだから男子としては複雑だ。並んで歩くと身長も同じぐらいなので、お似合いカップルと言われたりする。
「おい!朝からイチャ付くなと、何度言えばわかるんだ」
「美姫先輩おはようございます」
真央は注意されたのを気にせず挨拶をしているが、美姫先輩の額には青筋が入っている。
美姫先輩はこの高校の生徒会長で素行の悪い生徒がいた場合も、一睨みで黙らせる圧がある。そんな先輩は影では3ーEの女王や氷姫と呼ばれ一部の熱狂的なファンもいる。僕は苦手だが。
僕はいつも十五分前には、2ーBの教室につく、真央も同じクラスだ。仲が良い友達に挨拶をし席につく。そうすると決まって前の席にいる、鎌瀬剣「かませけん」がめんどくさい絡みをしてくる。
「今日も冬じゃないのに手袋なんかしてんのかよ」
僕はいつも左手に手袋をしている。激しい火傷があると言う事にして、それを剣君はいつも弄ってくる。毎回同じネタなのでいい加減めんどくさい。良く飽きずに八年間も弄ってくるものだ。
毎朝こんな感じから始まり、授業を受けて帰る毎日だ。真央ちゃんは陸上部なので帰りは別々だ。真央ちゃんは中学から陸上をしており、県でもトップレベルの選手である、ついでに剣君もだ。中学の時に一緒に陸上をやろうと何回も誘われたが、僕は帰ってからやらないと行けない事があるので断った。その時の真央ちゃんの駄々のこねようは凄かった。
夕方家に帰りつくと、妹の美心と友達の天音ちゃんが
「お兄ちゃんお帰り」
と出迎えてくれた。
天音ちゃんの本名は海野天音と言う。高校の美姫先輩の妹だ。天音ちゃんは可愛いらしいのになといつも思ってしまうが、決してロリコンではない、お兄ちゃんと呼ばせてるじゃないかと思うかもしれないが、それは美心の真似をして呼びだしたのが定着してしまっただけだ。小学三年生の女の子に邪な気持ちなどある訳がない。
二人にただいまと返事し、僕は二階にある自分の部屋に上がっていく。
「夜は仕事だしそれまでゆっくりするか」




