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休憩所で昼食を終えた僕は、トイレに行くと言って席を離れた。
そしてトイレの個室に入り、右腕のブレスレットに触れる。
『イレーザさん、今お時間ありますか?』
『はい。先程の魔物の件ですか?』
『いえ、あっ……はい。魔物とは少し違うんですが。
その時、ちょっと全力で動いてしまって、
一緒に活動している人達に、レベルのことを話す約束をしました。
それで、イレーザさんのことや、眷属のことは話しても良いのでしょうか?』
『彰斗が実際に戦っているところは見られなかったので、なんとも言えませんが……
話そうとしている人達は、彰斗にとって信用に値する人達ですか?』
『はい。さっきも、力を隠すなら、もう少し考えなさいって怒られました』
『そうですか。それなら、レベルと神器のことも話しておきなさい。
知っていることで安心できるものは、きちんと伝えておくべきです』
『はい。分かりました』
『そちら側に話してはいけないことは、前にも伝えましたね。
管理者という存在と、キューブガーデンの本質。
それに加えて、彰斗が眷属に選ばれた理由までです。
ですから、彼女達には私自身の存在を伝えても構いません。
眷属という話も、それ自体については問題ありません。
ただし、シャニアさんの存在は伏せてください』
『はい』
『それと、新しい魔物について話したいことがあります。
今日は来られますか?』
『はい。行けると思います』
『それでは、後ほど』
◆
休憩所へ戻ると、鹿屋さんが不安そうな顔で僕を待っていた。
「鹿屋さん?」
「彰斗、ずっと思い詰めたような顔してたけど……大丈夫?」
そっか……食事中、色々考えてたからな。
「あっ、うん。ちょっと考え事してた。
どこで話そうかなって」
「そっか。んー、この前のカラオケ店は?」
「ごめん。今日はちょっと人に会う約束があって。
それと、話す内容自体は一言で終わるから、今からでもいいかなって。
でも、あまり大声で驚かれると、盗聴とかありそうで」
「そうね。じゃあ、さっきみたいに小声で話すように、恵美達にも伝えるね」
「うん。ありがと」
「恵美~! さっきみたいに集合してくれる?」
「うん、わかった」
◆
確かに、さっきと似た状況なのは分かるけど……
なんでまた添島さんが対面に座って、他のみんなが僕を囲むの?
「それでは、多紀君。詳しく説明してください」
……あっ、合ってた。
尋問の続きだ、これ。
「えっとですね。まず僕のレベルなんですけど……194あります」
「……え? 今なんて?」
「レベルが194です」
「……聞き違いじゃなかったのね」
「僕も、まさかテンプレな反応が返ってくるとは思いませんでした」
「ちょっ! 誰だってそうなるでしょ!
見なさい、真名達も固まってるじゃない!」
「あっ、ほんとだ」
周りを見上げると、大豊さん達が
「こいつ何言ってるんだ?」
という顔で完全に停止していた。
「えっ!? 彰斗って、そこまでだったの?」
一番に復帰したのは鹿屋さんだった。
そういえば、あの時も僕の言葉を信じるって、真っ先に言ってくれたっけ。
「もしかして鹿屋さん、何か気付いてました?」
「あっ、うん。確証はなかったけど。
大きな猪の時、彰斗が助けてくれたんでしょ?
あの時、スマホから『あっ』って声が聞こえたから、
そうなのかなって」
「あ……あれ、聞こえてたのか。
はい。猪を倒したのは、僕の持っている神器を使いました」
「しんき?」
「この世界で言えば、対物ライフルですね。
僕のレベルが194なのも、神器を持っているのも、
イレーザさんっていう女神の使徒に出会って、
眷属になったからなんです」
再び固まる鹿屋さん。
そして、添島さん達は最初から最後まで固まったままだった。
「ちょっと待って! 情報量多すぎ!」
「それ! え? なに? 眷属? ライフル?」
添島さんの言葉に続いて、大豊さんが復帰。
他の三人は、まだ硬化中。
「ここではお見せ出来ませんが、どこかでお見せします」
「あ、うん。それで、眷属って具体的に何かしたりするの?」
どうやら、添島さんは通常運転に戻ったらしい。
「いえ。今のところは、僕の自由にしていいって言ってくれてます」
「そう。取りあえず……
私達は、多紀君がとんでもないレベルだった、
って事を理解すればいいわけね」
「まあ……そうですね。
もちろん、この話は内緒でお願いします。
イレーザさんも、皆さんにだけなら教えていいって、許可をもらいましたので」
「もちろん。これは私達だけの秘密にするわ。
みんなも分かってるでしょ?」
「「「「「う、うん」」」」」
大きく頷く残りのメンバーに、
僕と添島さんは同時に安堵の表情を浮かべた。
……たぶん、同じ“安堵”でも、
その中身は全然違うんだろうけど。
――戻って来てくれた。
◆フィールド区画『3の零』
大谷修司「何か、木の上に魔物の反応がある。それも複数」
鷹森蓮菜「木の上? そんな魔物っていないはずよね?」
大谷修司「あぁ、だから注意してくれ。嫌な予感がする」
鷹森蓮菜「判ったわ。今から確かめる?」
大谷修司「そうだな。蓮奈なら対処できるか」
鷹森蓮奈「えぇ、任せて」
大谷修司「蓮奈、気を付けろよ」
鷹森蓮菜「了解。修司」




