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滅びと救いの彼方まで  作者: ナザラ
プロローグ
7/17

滅びた王国と姫と騎士 7

七色宗教にはそれぞれの宗教マークがある。例えば、神風教は渦巻きを囲むように24本の風を模した線が引いてある。また、聖火教は杯に炎が立ち上る絵など様々だ。

そしてそのマークを心臓に近い部分に着けている程、神に近い存在だと言われている。


「神風教司祭エルマン…、噂は知ってるぜ。その美貌と人を惑わす話術で人々を信者に変えてるってな」


「惑わすなんて人聞きの悪い。私はただ迷える人達を救済しているだけですよ」


神風教司祭エルマンと対峙するザルド、私もすぐさま剣を抜刀しエルマンに向けようとした。


「っ…!?」


それは反射に等しかった。私はザルドに背を向ける感じで反対方向に剣を構える。構える先に響く石畳を踏む音、生物的本能が嫌悪感を示し額から汗を流す。


「お前が私の妹を殺したのか?」


そして道の先から現す姿にオルフェン王国崩壊の日を思い出す。正確にはとあるワンシーンだが…。

戦斧を振り回し、私を殺そうとした女。それと面影が似ている黒毛の女性が殺意の籠った目線を送りながら近づいてくる。


「あんたは……!?」


「私は聖火教司祭のリン。ラン……お前が殺した女の姉だ」


聖火教司祭リン、戦斧女の姉と名乗る女性は片手に長剣を携え腹部に聖火教のマークを身に付けていた。

神風教司祭と聖火教司祭、だがそれだけではなく私達の周りを囲むように鎮座する無数の信者達。


「いつの間にこんなたくさん…」


「カリーナ。動揺するな、人数が多いだけだ」


敵に四方を固められてる中でも、ザルドは冷静に戦況を分析し一番厄介であろうエルマンから目を離さない。


「それと、聖火教司祭が言う言葉には耳を貸すなよ。どんな事を言われてもお前の国を滅ぼしたのはあいつらなんだからな」


「…わかってる」


ザルドに言われなくてもわかっていた。相手は私の国を人を殺した連中で私にとっては仇だ。妹を殺されたと主張するリンはいわゆる自業自得、私を怨む権利もないわけだ。

でも…。


「……」


その曇った表情をザルドは見たのだろう。ため息に近い吐息を漏らしエルマンに向き直る。


「それでわざわざ司祭様がこんな所になんのご用ですかね?」


嘲笑うかのような表情と発音で質問したザルドにエルマンもまた、クスリと笑う。


「えぇ…そうですね。単刀直入に言うとカリーナ王女をこちらに渡してほしいのです」


伸ばされた手は後ろを向くカリーナに向けられ、整った顔から溢れる狂った笑みは保護という名目ではないというのが伝わってきた。

生け贄かもしくは……そこまで考えたが面倒くさくなり抜刀していた大剣をエルマンに向けた。


「嫌だ……と言ったら?」


この返答しだいで始まるであろう戦闘にザルドもエルマンも信者達も手に足に力が入る。

そして。


「無理矢理にでも」


「っ!!」


爆走。

先に仕掛けたのはザルドであった。石畳の地面を踏みつけ、僅か2歩で相手の間合いを詰めた。踏みつけた足場はひびが入る程強く、それにより繰り出される大振りの横切りは相手の上半身を余裕で切断出来るだろう。

当たればの話だが。


「ちっ!?」


舌打ちが漏れる。

ブンッ!と風を切る音と共にその場にある草木は揺れ、空斬となってダンジョンの入り口を切り裂いた。しかし、ザルドの大振りはその場にいたはずのエルマンには当たらず空を切った。


「今の一撃、当たっていれば私は死んでいたでしょう。……当たればね」


その声は遥か頭上から落とされた。高さ10メートルは上空の場所でエルマンとその信者達はザルドに向かって手を向けている。

いつの間に上空へ移動したのか……いや、最初から空に浮いていたエルマンはいつでも上に回避行動を取れる状態であった。

つまりザルドの攻撃を避けたのは反射ではなく、来るとわかった瞬間に上に飛んだだけなのだ。


「戦闘慣れしてやがるな」


それに信者達も空に飛んで臨戦態勢を整えている。何が言葉で人を救うだ…めっからの戦闘集団じゃねぇか。


「神風教の奴らは皆、空を飛べるのか?」


「えぇ。それにこんなことも」


手のひらに溜まり始める透明な物。それは大気中から集めた風であった。エルマンを筆頭に信者達も一斉に溜め始めて、溜め終わるのに1秒もかからなかった。


[[[ウィンド]]]


エルマンと信者の声が重なり、放たれた無数の風の弾はザルドの真下に降り注いだ。

大きな着弾音と巻き起こる砂煙はウィンドの破壊力を物語り、全弾打ち終わる頃には辺りはクレーターだらけとなっていた。


「ふん……他愛ない」


砂煙が上がる地上を空から見下ろすエルマンと信者達は勝利を確信していた。

今まで無色透明の風弾を数十発くらい無事だった者はいない。直径1メートルのクレーターを作る程の威力を持つウィンドを魔法なしで生身で受ければ全身の骨は粉砕し、死に至るからだ。


「……ふっ」


ただし、例外はいる。

砂煙が晴れ、クレーターを作る地面に悠々と立つ1人の男ザルド。身体に傷はなく、今の攻撃を鼻で笑い神風教を見上げる。


「バカな……」


「あ、ありえるのか!?」


信者達が慌てふためく中でエルマンもまた、苦虫を噛み潰したような表情をした。


「お前らの攻撃は終わりだな」


ありえない状況に動揺している神風教達をそとめに大きく脚を屈伸させるザルドは大剣を肩に担ぐ。突然の行動に信者達は一瞬思考を奪われる。


「まさか…!」


一足先に気付いたエルマンはすぐさま回避行動をとる。

それと同時に。


「ぐへっ!?」


先程まで隣にいた信者が更に上空へぶっ飛んだ。そして飛んでいった信者がいた所にふりかぶった後であろう拳を突き出すザルドがいた。

この一連の出来事にエルマン同様、信者達も反応出来なかった。


跳躍。

一般に言われているジャンプと同じことをしたザルドだが、他の人とは違うところは神風教達がいる高さ10メートルの場所まで跳んだことだ。

そしてその勢いのまま、神風教信者を殴ったのだ。


「次は俺の番だ」


狂気をはらんだ目で見る神風教の顔はどれも恐怖に打ち引かれていた。






























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