滅びた王国と姫と騎士 5
カンバロッタ街、その中心部にあるギルド本部。円形の街の道はは全てギルドに通じる通路であり、街で一番活気がある場所。武器屋や食事所なども並び、人もそれにつられるように沢山集まる。
「しかし、今日はやけに人が多くないか?」
一人の冒険者がぼやく。ギルドに通じる中央通りはいつにも増して人が行き来していた。かれこれ5年程ガンバロッタに暮らしてるが、それでもここまでの多さはないと冒険者は言う。
「あぁ、なんかギルドの広場に来てるらしいよ」
そんな中で事情を知る1人の冒険者がその疑問に答える。彼もちょうどギルドに行く途中だったらしい。
「来てるって誰が…?」
「七色宗教の聖火教と神風教。なんでかは知らないけど」
どうやら何かを話してるらしい、冒険者は答える。七色宗教が集団で来ること自体が珍しいのに、カンバロッタの中央で何を話してるのか、二人の冒険者はそれが気になった。
ギルド本部があるカンバロッタの中心部。人や物の流通を良くするために円形に作られている場所だが、今日はその流れもとある集団によって悪くなっていた。
「あ、七色宗教だ…」
「めずらしいこともあるのだな」
「しかも、聖火教と神風教の二大教だなんて」
その集団の名は、七色宗教。世界に存在する宗教の中で最大の教徒数を誇り、その教えは教育機関や政治などに影響を与えている程だ。七色宗教は7つの属性を神格化して作られた宗教であり、彼らの思想は全ては崇める属性から世界が生まれたという物だ。
「皆さん、聞いてください」
その声は透き通った美しい声だ。ローブの付いた宗教服を身に纏った教徒達の前に立ち、カンバロッタの住民がその声に耳を傾けて振り向けばその美貌に目を奪われる。
「私は神風教司祭、エルマンと言います」
エルマンと名乗るその男は他の教徒達が着ている全身緑色の宗教服とは違い、白色をメインとして腹部に着色されている神風のマークを中心に6本の緑色の線が走っている。
司祭という階級を持つエルマンは他の教徒とは違い、遠目からでも目立つ服装をしており、またそれにふさわしい男であった。
「皆様も知っているかもしれませんが、昨夜オルフェン王国が何者かによって滅ぼされました」
緑色の髪に緑色の瞳を持ち、整った顔付きをしたエルマンの凛とした佇まいは正しく司祭と呼ばれるに値する姿であり、だからこそエルマンの話を聞く者が大多数だった。
「そんな中でカリーナ王女は一人、オルフェン王国から脱出し今も追手から逃げています。私達の目的はカリーナ王女を保護し追手から身を守ることです」
エルマンは両手を広げ必死にカンバロッタの住民と対峙する。オルフェン王国の崩壊は七色宗教と関係がある。その噂はもちろん伝わっており、人々からの疑いの目もある。だからこそ……。
「私達を信じて欲しい、聖火教や永闇教がしてきたことは決して許されることではありません。しかし、彼らも自分の罪を認め改心しました。それでも信じられないのなら神風教を信じてください」
私達はあなた方の味方です。最後にそう締めくくると住民の疑いの目が少し和らいだような気がした。冒険者や一般人ギルド職員達が互いに話し合い、どうするか決めていた。
「………」
そんな中で聖火教は沈黙を保っていた。聖火教司祭である彼女はただうつむきなるべく住民からの疑いを向けられないようにしていた。
「あなた方聖火教は黙っていて下さいね。」
エルマンは住民に聞こえない声で聖火教司祭に話しかける。
「ここでなんとしてもカリーナを見つけなければ私達の首が飛ぶのですから」
「……わかってる」
聖火教司祭はただそれだけを言って会話を終わらせた。
「俺達は聖火教達は信じられねぇけど……神風教は信じるよ」
一人の男が代表して声を上げた。その声は正しく住民全員の意見であり、答えである。その言葉にエルマンは感極まった顔して頭を下げる。
「ありがとうございます。必ずカリーナ王女を保護し、いつの日かオルフェン王国を再建してみせます」
その発言に住民から歓声が上がる。オルフェン王国崩壊から1日にして、この行動力は流石神風教、疾風の如くの速さである。
「それでよぉ、カリーナ王女はどんな容姿なんだ?」
住民からの質問にエルマンは細かく教えた。
身長168センチ前後、オレンジと赤が混じったロン毛で服装は王族というよりは冒険者風であり、瞳の色は薄紅色。
そして腰にかけた鞘はまさしく国宝レベルの装飾が施されており、剣は真っ赤な赤色をしている。
「それなら、俺知ってるぞ」
そう言って前に出てきたのは厳ついギルド職員であった。
「カリーナ王女の場所を知っているのですか?」
「おぅ、ある冒険者を追ってここに…」
エルマンに渡されたのは一枚のクエストが載っている紙。そこにはバジリスクの討伐及び素材回収と書かれており、そこまでの道も地図で載っていた。
「ご協力ありがとうございます」
その紙をもらったエルマンの顔はとても美しい裏表がない笑顔であった。




