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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (3) / Melancholic Minuet〜  作者: 御子柴 流歌
第2曲: アフロディーテ

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2-17-B. 買い出しと意図せずの差し入れ


 予想通り、自転車は不要だった。


 最寄りのスーパー内、二階のテナントである百円ショップ。

 ここは品揃えも豊富だが、その商品ジャンルも優秀だった。


 思った通りだ。

 園芸コーナーには似たような雰囲気の針金があった。他の月雁(つきかり)高校の生徒たちもいるかと思っていたが、案の定数名居た。

 学ランだったり指定ジャージだったりと、見分けるポイントは多い。

 こういう旗艦店のような品揃えを抱えている店舗は、しっかりとマークしておいて損はない。

 以前買い物帰りにチラ見していた甲斐があった。


 品質的な部分では少し懸念があったものの、この細さのモノでそこまでの差が出るとはあまり思えなかった。

 もし問題があったとしても今日はとりあえずの応急処置として使ってもらって、明日以降誰かにひとっ走り行ってきてもらえばいいだろう。


 月雁高校二年三組の名義で領収書を切ってもらい、会計は無事終了だ。

 やはりいろんな生徒が学校祭用の物資調達に来ているようで、店員さんは『領収書』の単語を聞くとすぐに「何年何組ですか?」と訊いてくれた。

 シゴトが出来る人で助かる。


 せっかくなのでついでに飲み物を買いつつ、学校へと戻ることにする。

 差し入れの飲み物とかあった方が良いのかな、なんて思うけれどそんなことが出来るだけのお金があるわけもなく断念。

 さすがにこれで領収書は切れない。

 ――それは、担任の中本(なかもと)先生に一任しておこうと思った。




 校舎が見えてきたところで、正面からランニング中の集団が見えてきた。

 声を出しながらというタイプではない。

 ウォーミングアップの一環という雰囲気の、運動強度はやや抑えめと言った感じだろうか。

 それでも先頭集団はかなりの早さで校門を通り抜けていく――。


「ん?」


 どうやら女子テニス部らしい。

 先頭を走っていた中に見慣れた顔――亜紀子(あきこ)とすみれを見た。

『見た気がした』ではなくて、しっかりとした確信があった。


 門の裏手あたりで荒れた息を整えていた一行は、主将の指示でそれぞれ軽く休憩に入るらしい。

 何人かは校舎へと向かい、また何人かはそのままテニスコートがある方へと向かっていく。

 亜紀子とすみれは何やら木陰で話をしているようだった。


「おふたりさん」


「え?」


「ん? あ、ミズキくん! やほー!」


 ボクの声に気づいたふたり。

 すみれはすぐさま両手をぶんぶんと振っている。

 一瞬だけ下方に動きそうになった視線を、何とか彼女たちの顔に向け直す。

 きっとこの距離ならわからないはずだ――と思うがどうだろう。

 自信は無いが、とりあえずそう思っておく。


「そっちは行燈?」


「そう。ちょっとしたおつかいをね」


 すみれに言いながら左手に持っている百円ショップの袋を見せる。


 ――が。


「じーっ」


「ん?」


「じーーーーっ!」


 すみれの視線からは音が鳴るらしい。


 いや、そんなわけはなく。


「……すみれさん?」


「…………はっ!?」


「すみれ、さすがにそれはわざとらしすぎてどうかと思う」


 亜紀子から冷静な指摘が入る。


 わかっている。

 すみれのまなざしは強烈なまでに、ボクの右手――飲み物とかが入った袋の、その中身に注がれていることくらい、いやというほどにわかっている。

 透明な袋からはスポーツドリンクの青いラベルが透けて見えている。


「すみれ、ひとつ訊いていい?」


「何でございましょう?」


 その姿、まさに慇懃無礼。


「今、キミのカバンの中身には、飲み物は」


「無いっ!」


 自信満々に胸を張らない欲しい。

 ――ちょっと、目のやり場には困る。

 意識して、むしろすみれの頭頂部あたりに視線を置くようにしながら、咳払いをひとつだけしてみた。


 まぁ、仕方ない。つくづく自分も人が良いと思う。


「じゃあ、これをふたりに進呈しよう」


「マジで!?」


「……え、私にも?」


 よもや願望が叶うと思っていなかったのだろう。

 すみれは無意識的に歓喜のガッツポーズを決める。

 亜紀子も目をまん丸にしていた。

 こんなこともあろうかと、家まで持って帰っても良いようにと数本買っておいて良かった。


「その代わり、次の大会でしっかり勝ち上がってくれるのが条件な」


「任された!」


 ドンと勢いよく自分の胸を叩くすみれ。

 現金なモノだが、それもまたきっと彼女のイイところだと思う。

 軽くスキップをするように近付いてきた彼女に、袋から取り出したペットボトルを渡した。


「ホントに良かったの?」


「誰かにあげてもいいかな、って思ってはいたから。気にしないで」


「そっか。……ありがとね、ミズキくん」


 いつだって遠慮がちな亜紀子には、笑顔を添えておくことにした。

「人が良い」と「いい人」は違いますね。

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