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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (3) / Melancholic Minuet〜  作者: 御子柴 流歌
第2曲: アフロディーテ

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2-XV-B. 凪ぐ心

「……向こうの作業の方がカンタンだったりとかって、する?」


「あんまり変わんない……かな」


「そっか」


 窓際でふたりになって数秒後。思い出したように口を開いた彼は、腰を浮かせて仲間が向かった方を見る。

 実際のところ、場所は別れていても作っているモノも作業内容も大差は無い。

 そしておそらくだけれど、どれもあまり好きなタイプの作業ではないと思う。


「ん? ココって……?」


「あ、そこはね」


 予想通り、作業に集中してまもなく助け船を求められる。

 絵での説明が少し見づらいところなので、これは仕方の無いところかもしれなかった。


「ありがと。動画とかで見せてくれればなー」


「たしかに、そうかも」


 そう答えて、また沈黙が訪れる。

 窓際なので雨と風の音がよく聞こえてくる。

 お昼くらいの突風はもう吹いていないけれど、それでも風はまだまだ強いまま。

 いつもは行燈制作を担当してくれている放送部員の二階堂(にかいどう)くんも今日は教室展示の手伝いをしてくれているけれど、彼は飾りパーツをひとつ作るごとに廊下へ行っている。

 行燈のテントが心配なのだろう。

 その都度みんなに「少しは落ち着け!」とツッコミを受けているが、そう言われることについては気にしていなさそうだった。


 細かい部分の調整が巧くいかないときにうんうん唸るようなことはあっても、それ以外に声を発することはない。

 雑談らしい雑談もなく、黙々と作業を続ける彼。

 あたしとしてもそれは助かった。


 教室の空気が大きく変わったのは、気がつけば残りの作業時間が十五分を切ったくらいのことだった。


「ぃよーっす! みんなおつかれー! そろそろ片付けの時間だぞー!」


「あ! ディー、オマエどこ行ってたんだよ」


「悪ぃな、今日は部活だ」


「差し入れとか無いのー?」


「そんなことをする余裕は、オレには無いっ!」


「そこは自慢するとこじゃねーだろ」


 小野塚(おのづか)くんだった。

 いつも元気な彼が教室に入ってくるなり、みんなも一斉に口を開いた。

 今日の彼は部活に出る日になっていたはずだが、どうやら休憩がてら様子を見に来たらしい。

 このクラスになってから呼ばれるようになった『ディー』というニックネームは、去年のクラスでのニックネームだった『おにょD』をさらに短縮したモノだった。


「お、居た居た」


 そんなことを思っていたら、彼と目が合った。

 気づく間もなく駆け寄ってくる小野塚くん。


「そっちの作業終わった?」


「あとこれ作り終わるだけだよ」


 もう少しでできあがる飾りを小野塚くんに見せる。

 彼は満足そうに頷いた。


「オレもこれを」


「あ、ユーキには訊いてない」


「おまえ、このヤロウ」


 今度は打って変わって適当にあしらう小野塚くん。

 羽交い締めにしようとした彼の動きを、するりと回避した。

 数秒ほど攻防を続けていたものの、まもなくして双方が飽きたようですんなりと元の調子に戻る。


「だって、ユーキはあと帰るんだろ? この雨だし」


「まー、そりゃぁな」


「オレらはまだ部活あるからさ」


 十七時まで教室での作業をした後と言えば、行燈作業に移るか、そうでなければ部活だ。

 合唱部は雨でも雪でも関係ない。


 最後の飾りパーツを先に作り終わったあたしは、すでに後片付けに入っているみんなに合流しようと席を立つ。

 彼の方はもう一分くらいはかかりそうなので、とりあえずそれを仕上げてもらうのを優先してもらおう。


「いやー。それにしても、悪いねユーキ」


「あ?」


 そんなことを思っていると、不意に小野塚くんはあたしのすぐ隣に立ちながら。


「カノジョ、いただいてくわ」


 なんだかワルい言い方をする小野塚くんに、当の彼は――


「……おう」


 ――あっさりとした反応を返した。


「怒るな、怒るな」


 あたしには聞こえた。

 今、小野塚くん、「つまんねえ反応しやがって」って言った。


 どんな反応を求めているのだろう。

 たとえ冗談やネタのようなものだったとしても、取り合いみたいなことをされるようなニンゲンでは、無い。


「怒ってはいない。っていうか、ココ作るのムズいんだ。さっさとどっか行ってくれ」


「あーあ、そういう言い方しちゃってぇ。聖歌(せいか)ちゃんったらかわいそうに」


「これは、オマエに、言ってんだよ」


 当然ながら作業を邪魔された彼は怒る。

 もちろん、小野塚くんに対して。

 小野塚くんは「うひゃー」なんて言いながらそのままの勢いで廊下へと向かい、だけれどすぐさまドア近くのホウキがけをしていた子たちに捕獲されていた。


 強引にホウキを持たされつつおとなしく掃除を始めた小野塚くんを見ながら、あたしは残り一時間での部活で何を気をつけて歌うかだけを考えていた。


第2部もそろそろ佳境。

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