1-V-A. ふたりで寄るところ
「みずきくん?」
「うん?」
自宅の最寄り駅である石瑠璃駅からの帰り道、ドラッグストアに寄りたいと言ったみずきくんについていくことにした。
帰りに寄るところがあると言われたところで「ついていく」と言おうとしていたけれど、先回りで誘わってもらえた。
切れかかっている日用品があるらしい。
ついでにあたしも何か買ってくるモノは無いかとお母さんに訊いてみたけれど、シャンプーに歯ブラシ、そういえば湿布薬が無いわねとかなんとか言われながら、最終的に積み重なった買い物リストは二桁になった。
乾いた笑い声を出すあたしを見てきたみずきくんにそのリストを見せれば、予想通り苦笑いを浮かべていた。
「とりあえず、荷物持ちは任せてよ」
「いいの?」
「さすがにその量見せられて、ほっとくヤツはいないでしょ。だいたい同じ帰り道なんだしさ」
「……ありがと」
力のある人が居てよかった。
これって、もしあたしがひとりだった場合でも、同じことを言われたんだろうか。
そもそも「重くて持って帰れない」なんて泣き言を言う気なんて――たぶん、無かったけれど。
どうする気だったのかはちょっと気になるところだった。
まだ暮れ残る夕陽が駅前に建つマンションの隙間に見える。
これから夏本番だけれど、もう既にちょっと暑い気がする。
学校祭の話が上がってくることも増えてきたけれど、そういえば去年の学校祭の準備でも、不意に暑くなって大変なことになっていた。
あの時を思えば、こんなこと思ってもみなかったけれど。
「……そういえば、珍しいね」
「何が?」
「みずきくんがウチの方で帰りにどこか行くって言うの、たぶん初めてな気がするんだけど」
「……そうかな」
みずきくんは少し考えながら、正面を向いたまま答えた。
その直後に一瞬口だけが『……あ』と動いたけれど、それだけだった。
「……あー、そっか。月雁のあたりとか中央の方だけか」
「そうそう。楽器屋さんか、工藤さんのお店とか」
「そう……か。ん、確かに」
何かを思い出そうとしているみずきくんは、それでも自分の答えには納得したらしい。
「スーパーとかそういうところで見つけられるのがイヤっていうか、苦手っていうかさ。何となく避けちゃうんだよ」
「あ、ちょっとわかるかも」
生活感出してるところを見られるのは、何となく気恥ずかしいモノがある。
月雁高校のすぐ近くにもスーパーや薬局はあるけれど、実際に入ってみたことはほとんどない。
たとえば飲み物が欲しいときなんか、購買よりは品揃えは良いしコンビニより値段も安く済む場合が多いけれど、結局使わなかったりする。
飲み物ひとつくらいなのに、夕方のお買い物で混み始めるレジに並ぶのが面倒とか、心のどこかで思っていたりするのかもしれない。
「あと、同じチェーンでも、品揃えが微妙に違ったりするよね」
「それそれ。ホントそれ。こっちの方が店大きいし棚の配置も見慣れてるし、買いやすい方が便利なんだよな」
「わかる!」
思わず声が大きくなってしまって、あたしの声に反応するみたいにみずきくんが目を大きくして、そして笑った。
「なーんか、思った以上に所帯染みたトークをしている気がする」
「ね。なんか、ね」
あたしはそういうの、嫌いじゃないけれど。男の子はあまり好きじゃなかったりするんだろうか。
そんなことを気にしている間に、目的のお店へと辿り着いた。
小さなスーパーと携帯電話のショップが隣り合わせになっているのもあって、駐車場にはまだ車の数は多い。
店内が広いからそう見えるのもあるけれど、幸いドラッグストアの店内にはそこまで多くの人は居なかった。
恐らくは隣のスーパーの方に集中しているのだろうけど。
「聖歌のお母さん、何て言ってたっけ? もっかい見せて」
「うん」
送られてきたメッセージを見せると、みずきくんは慣れた手つきでカートにカゴをふたつ載せていく。
あたしもその隣に並ぶ。
「まずはシャンプーかな」
そう言いながら入り口正面にあるシャンプーやコンディショナーの陳列棚の方へとふたりで向かう。
薬局にふたり。
……以前どこかで。




